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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第270話 落下と跳躍

 頭から落下すると、流石に危ないと思うため、何が何でも足を下へと向けなければならない。

 だが落下のエネルギーのせいで、思うように身体を動かせなかった。


「うーん……無理だな。頭を上へと向けるのは、地面までの距離的に無理そうだ。【シンクロ】」


 頭を上へと向けるのは諦め、できるだけ衝撃を減らす方向へとシフトした。

 【シンクロ】で借りたのは、竜馬の風の力と、亀之助の水を生み出す力だ。前者は落下速度を下げて、落下時に襲ってくるであろう衝撃の緩和、後者は落下の際に地面へと噴射して、これまた落下速度を落とすのが狙いだ。炎に比べると、そこまでの影響はないかもしれないが、今の俺にできるのはこれが限界だろう。


「……」


 目を瞑り、頭に感じる圧の感じから、地面までの距離を測る。

 そして適切なタイミングで、水を噴射する……できなければ確実に死ぬ。そんな思いで、感覚を研ぎ澄ませた。


 ……今だ! 噴射した水が、地面に到達した、そんな感覚があった。

 風と水の力は、地面への激突をやわらげた。地面は軽く抉れているが、骨は折れていないと思う。痛いのは痛いため、直ぐに立ち上がることはできなかったが、今後の戦いに尾を引くものではないはずだ。


「いってぇ」


 ある程度痛みが引いてきたので、立ち上がってみたが、酷く首が痛かった。まあ骨折とか神経を痛めたのではなく、打撲的な痛みだから、直ぐに治るはずだ。


「悟、大丈夫だった?」


「ああ、ちょっと地面とぶつかっただけで、怪我した訳じゃない」


「なら良かった」


 地面と激突してから一分程度が経過した頃、ようやく氷球は空から降りて来た。

 その氷球は、焔鷹と俺が張った水の壁が引き起こした水蒸気爆発のせいで、所々ボロボロと崩れ落ちている。だが球としては維持できているため、氷球の内側には水蒸気爆発による影響はなかったのだろう。


「麗華の方は大丈夫そうか?」


「うん。体力も、魔力も特に削れてないよ」


「じゃあ再開頼めるか」


「分かった」


 俺が氷塊へと乗り込むと、再び空を目指して上昇した。

 未だに東京を出れていない。休むことなく出発したのは、京都まではまだまだ距離があるため、こんなところで休んではいられないからだ。


「それにしても、あんな鳥が出て来るダンジョンもあるのか……飛行能力を持たない冒険者は、どうやって対処していたんだろうな」


「……普通に弓だったり、遠距離攻撃で落としていたよ。私だって、氷で捕まえて、倒していたし」


「まあそんなもんか」


 地上から焔鷹との一対一を始めた際の戦い方を想像していると、近くに居たたぬ吉が頭を擦りつけて来た。反射的に撫でる。


「あっ」


 気付く。たぬ吉のことを撫でてしまえば、他の子たちからも撫でを求められる。意識が外へと戻ると、タマたちが目を輝かせながらこちらを見ていた。


「みんなも撫でたいから、こっちおいで」


 一斉に駆け寄っては来ない。

 この氷塊を操っている麗華への配慮の気持ちだろう。それぞれがゆっくりと近付いて来る。そして頭を突き出し、撫でを求めて来た。


「順番な」


 タマから古参順に撫でていく。

 モフモフにツルツル、それぞれ頭の性質は違うが、心が和むことに変わりはない。このまま京都に着くまで撫で続けていたいが、魔物が地上に存在しているという環境が許してくれない。


「また魔物」


「今度はどんな魔物なんだ?」


「ちなみに、もう山梨県には入ってる」


「……【富士山ダンジョン】の魔物か」


「そう。飛竜」


「飛竜……強そうな魔物だが、どんな魔物なんだ?」


 飛竜の名だけを聞くと、これまで戦ってきた北海道の氷龍(アイスドラゴン)や群馬の幻覚龍イリュージョンドラゴンの方が強いように思えるが、魔物の強さは名前と比例しているわけではないからな。


「空飛ぶ竜。ただそれだけ。見れば分かる」


「じゃあ天井を開けてくれ」


「分かった」


 天井に開いた穴から、顔を出す。

 十数メートル先にそいつは居た。ゴツゴツとした鱗に、蝙蝠のような腕が翼になっているその姿は、二足二翼の魔物だと表現できる。


「なるほど、空飛ぶ竜……見て思ったが、頭痛が痛いみたいになっていないか?」


「空を飛ばない竜も居るから、間違ってないと思うよ」


「なるほどな……まあ最初は様子見で行くか。【シンクロ】」


 掌の上に水を生み出す。

 ゴン太を失ってから、遠距離方面での火力不足は否めない。この水球では、あの飛竜に対して大したダメージは与えられないだろう。

 だから色々考えて来た。これはその対策の内の一つだ。


「【シンクロ】」


 亀之助の力だけではなく、竜馬の風の力を借りた。

 水球の内部に、風を送り込んで、不規則な回転を加える。


「【シンクロ】」


 最後に借りるのは、悟空の“赫猛”だ。

 全身から赤いオーラが溢れ出る。【六道】の代償で一時的に失っている膂力を“赫猛”で補填した。


 この右手に回転している水弾、“赫猛”で全身から赤いオーラを溢れさせているこの状態で行うのは――


「行くぞ」


 全力の跳躍。

 飛竜の背中に狙いを定め、全力で氷球から跳んだ。



ここから連戦が続きます。


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