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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第267話 悟と王

 凜々花の父親である広忠のお陰で、凜々花の居場所は分かった。

 だが直ぐに行けるわけでもない。これが平時であれば、京都くらいであれば直ぐに迎えたが、今は大量の魔物がその道を拒んでくる。過剰なまでの戦力を使わなければ、安心して向かうことはできないだろう。


「ふぅ……これからどうしたものか」


 建物の最奥。

 この建物において最も安全地帯だと言える自室のベッドで、俺は天井を見上げながら今後の動きについてじっくりと考えていた。


「王としての責務……凜々花の仲間である窪田悟個人として……俺としては後者を優先したいが、今の俺はエゴで動いちゃいけないよな」


 消失した左腕をイメージする。

 切断面から炎が噴き出した。腕のような形をしているが、質量を持たない炎である以上、戦闘では役に立つかもしれないが、日常では役に立つどころか足を引っ張るだろうな。


「左腕を治すことを理由にすれば、国民も納得してくれるだろうが、騙したみたいで、できれば本当のことを伝えたいが……」


 もし私用で国を離れたということが知れ渡ったら、大人しくしていた反王勢力の声が大きくなる可能性が、ゼロとは言い切れない。戦力を残すと言っても、この国全土に目を光らせるなんて、今の俺たちでは不可能だ。


「だが行かないって選択肢はない。戦力をどうやって分けるか……江梨子か麗華のどちらかは、最低でもこの国に残すべきだよな。で、治安維持を担当するペドロや信綱もこの国に残すとして、問題はロジャースか」


 戦力的に考えると、ロジャースは欲しい。

 だがアイツはアメリカの人間で、世界でも有数の回復系の力を持つまいちゃんに合わせるのは、少々心配が残る。しかし俺と従魔たち、麗華だけで無事に京都まで行けるのかと考えてみると、これもまた少々心配が残るだろう。


 旧レオン政権の親衛隊クラスを牢屋から出すことも考えたが、ペドロとは違って従っている理由が、レオンそのものを崇拝していたり、己が利益のためだったりと、簡単に裏切りそうだったため、その選択肢は直ぐに切り捨てた。


「一人で考えていても、答えは出ないか」


 ベッドから起き上がり、部屋の扉に手を掛ける。

 ――コンコンコン

 開けようとした瞬間、扉が叩かれた。その音に一瞬だけ警戒度が一気に上昇したが、直ぐに警戒度は落ち着く。ここは建物の最奥。入口からもっと遠いところに位置しているわけで、誰の目にも留まることなく、ここまで来れるはずがないからな。


「誰だ?」


 俺は扉を開きながら聞く。

 そこに立っていたのは麗華だった。


「終わったよ」


「そうか、それで優秀そうな人は居たか?」


 部屋の中に麗華を招きながら、聞いてみた。

 麗華は一直線にベッドへと向かい、腰を下ろしてから口を開いた。


「まあまあ……って江梨子は言ってた。戦闘面では、あまり良さそうな人は居なかったと思う」


「まあ職員の募集だからな。戦力に自信がある人は、ペドロたちの方へと行ったはずだ」


 ダンジョン協会及びギルドの職員は、この建物内に呼んで面接をしたが、ペドロの【治安維持隊】は外にある訓練所にて集まってもらった。武に自信がある人がここに集まると、セキュリティー上の問題があるから、仕方のないことだ。


「確かに……それで、あの人とはどんなこと話したの?」


「……凜々花の居場所が分かるらしい」


「それは良かった。直ぐに助けに行くの?」


「そこなんだ。俺はそこに悩んでいた。俺個人の気持ちとしては、今直ぐにでも助けに行きたい気持ちでいっぱいだ。しかし今の俺は、一人の意志で動けるような身軽な存在ではない」


「……でも王様なんだから、自分の意志で動いて良いと思うよ。なんたって、弱肉強食の世なんだから、強い者は自由に動いて良いんだからさ」


 ……弱肉強食ってのは分かっているが、一度預かった人の命を投げ捨ててでも、自分のエゴを通そうとは思えない。ヒトから脱しようと、根本に存在している性格というものは、そう簡単には変わらないようだ。


「悟は江梨子のことを信頼してないの?」


 不思議そうに首を傾げる麗華。

 確かに今の俺の行動は、江梨子を信頼していないと考えられない言動だろう。だがそういうわけではないのだ。当然、江梨子の力は信頼している。そもそも彼女の力は、俺の力を優に超えるはずだ。


 しかしこの国土と数万の民を統制するには、少々足りないはずだ。


「しているが、全てを統制できるだけの、精密性はないと思っている」


「統制? 悟は独裁者になりたいの?」


「いいや、そんなつもりはないぞ」


「なら統制する必要なんてないよ。行き過ぎた行動をした人だけを捉えて、それ以外は放置すればいい。以前の日本政府レベルの法を求めている人なんて、この国にはいないよ」


「……確かにそうだな」


 麗華の言葉で、俺は覚悟を決められた。

 京都に行って、まいちゃんに腕を治してもらい、凜々花を救出する。これは王としての判断ではなく、俺個人のエゴだ。



悟たちは次回から京都を目指します。


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