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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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253/294

第253話 足止め

 レオンから王位を奪い取るための作戦が開始された。

 江梨子は風のドームの維持を破棄し、浮かんで壁の下へと向かう。


 再び空に現れたレオン。この行動が、俺たちの作戦が正しいということを教えてくれる……ブラフである可能性も捨てきれないが、この作戦が失敗で終わった時点で、俺たちの敗北は決まったようなものだ。


「あとは江梨子が壁を破壊するまでの間、あの怪物の足止めをすることか」


「王の軍勢の妨害を受けながらな」


「そうだな――」


 動けない甲斐とロジャースはたぬ吉たちに任せた。

 殺傷能力の低い水を操れるたぬ吉と亀之助が居るから、王の軍勢の足止めは俺たち以上にできるだろう。だから甲斐たちのことは一度忘れて、あの化け物の足止めだけを考えればいい。


 油断をしなければ、王の軍勢の攻撃が致命傷になることはない。レオンとの戦いで足を引っ張られる可能性は否定できないが、空を主戦場とするレオン相手であれば、そこまで影響はないはずだ。


「じゃあ行くぞ、信綱」


「生意気な小僧だ」


 揃って跳躍。

 一瞬にしてレオンの眼前へと移動した。目が合う。その瞳は焦りで揺れている。王位に関する予想が、確信へと変わった。


「江梨子の下へは、絶対に行かせねぇよ」


 拳を握る。

 【シンクロ】で悟空から“赫猛”を借り、拳には炎を纏う。今の俺ができる全力のパンチ。それをレオンの頬へと、全力で振り抜いた。

 左腕によってガードされてしまう。硬い。人の身体とは思えないほど硬い感触だった。今の膂力では砕き切れない……それは最初から分かっていたことだ。だからこの攻撃は足止めでしかない。


 レオンのことを、江梨子とは正反対の方向へと殴り飛ばした。

 一度着地し、煙が上がっている場所を目指す。王の軍勢が道を塞いできた。全力で拳を振り抜けば、風圧だけで道を開くことができるだろう。しかしいくら直接的なダメージを与えていなかろうが、攻撃したという印象は残ってしまう。


「チッ」


 舌打ちをしつつ、拳を振るうことなく、そのまままっすぐ進む。

 当然、王の軍勢による妨害が入る。パンチやキックが全身を襲う。痛みは少ないが、反撃ができない以上は足止めを喰らう。

 

 それでも一歩一歩踏みしめて進み、レオンの下へと急ぐ。

 今になって気付いたが、跳躍を終えるまで隣に居た信綱の姿がない。首を振って辺りを見回すが、あるのは王の軍勢の虚ろな顔ばかり。信綱も該当する感情を見れる顔は何処にも見当たらない。


「小僧、先へ行くぞ」


「はっ?」


 思わず声が出てしまった。信綱の声が聞こえて来た場所が、頭上だったからだ。

 驚きで頭の振りを止めてしまったが、直ぐに声のした方へと目線を移す。真上。そこに居たのは空を飛ぶ信綱――と表現してしまえば語弊があるかもしれない。詳しく表現するとなると、空を駆けている。


 何もないところを蹴り、俺を囲っている王の軍勢の頭上を走り抜けていった。あれはホモ・サピエンスという種では、どれだけ超人であろうと不可能な行為――つまりスキル由来の動きだろう。


「これで足止めは続けられるはずだ。だが早めに合流しないとな」


 また一歩進める。

 痛みは少ないんだが、全身から血が流れ出ているせいで、段々と身体がふらつき始めている。まだ体内での血液生成量と出血量が釣り合っているから良いが、このままだとジリ貧で追いつかなくなるな。


「【シンクロ】」


 竜馬の風の力を借りた。

 張り付いてた王の軍勢を剥がすことには成功したが、これは応急措置にしかならないだろう。江梨子の風のドームが突破されるのと同じで、これも所詮は風の膜だ。一般人でも時間を掛ければ、突破できるものでしかない。


「今の内に走るか」


 風の膜で王の軍勢を押し退け、そして駆け抜ける。

 あと百人程度のところで、風の膜を超えて身体に触れて来る者が現れた。そして腕を握られ、足を止めざるを得なくなる。


「クソッ、あと少しだってのに」


 殴られるよりも、腕を掴まれる方が厄介だ。

 殴られるのは、こっちが我慢していれば進むことはできるが、腕を掴まれてしまえば、振り払わなければ進むことはできない。逆に振り払おうと思えば、簡単に振り払うことはできる。階級が違い過ぎるからな。


 しかし無理に振り払おうとすると、一般人相手では死なせかねない。冒険者になったばかりの頃であれば、膂力も少し上がった程度だったため、一般人相手に腕を振り払っても怪我させる程度で済んでいたが、今は違う。無理に腕を振り払えば、一般人の身体は悲鳴を上げ、簡単に壊れてしまうだろう。


「……」


 敵を気遣い、動けなくなってしまった。

 古典的な表現かもしれないが、頭の中で天使と悪魔が言い合いをしているようだ。



一度残り百人のところまで駆け抜けた悟だが、王の軍勢は再び悟を中心に据え、円状に数万の肉壁となって、悟の歩みを拒む。


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