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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第250話 王の裁き

 揺れる脳で周囲を見渡す。

 俺の激突が原因と思われるクレーターが広がり、その衝撃で致命的な怪我を負ったであろう人々の姿が視覚情報として入って来た。


 グロいと表現できる光景だが、胃酸が上ってくる来ることはない。慣れと覚悟のお陰だ。

 脳の揺れが収まって来たので、その場で立ち上がる。追撃が来なかったのは、たぬ吉たちが止めてくれたのだろう。


 完全に揺れが収まるのを待ち、大気を割っているのかとも思う破裂音が鳴り続けている場所へと、跳ぶ。超人的な脚力で、思いっきり地面を蹴る。


 エネルギーを生む行動は、その一歩だけだったが、速度が衰えることなく、たぬ吉たちの下へと到着することができた。


「帰って来たか」


「くっ」


 到着と同時に、信綱が吹き飛んだ。

 しかし何もできなかったという訳でもなさそうだ。宙に浮かぶレオンの頬からは、一筋の血が流れている。レオンの力も、万能というではないってことだ。


「血を流すとは、思っても居なかったな」


 レオンは血の流れる右頬を、左手で覆った。

 時間にしても一秒も経っていないだろう。それだというのに、右頬に刻まれていた斬撃の跡は、傷跡一つ残すことなく消えていた。


「再生能力もあるのか」


「王がこの程度の傷で、怪我していたら頼りがいがないだろう?」


 頬から離れた左手を、強く握った。浮き出ている血管が、その力強さを物語っている。

 ――バリバリ

 そしてかなりの距離が空いているというのに、明瞭に聞こえて来た静電気のような音。しかしそれが静電気の音ではないことは、ここに居る誰もが分かっているだろう。


「来るぞ!」


 叫んでいた。

 麗華やロジャース、たぬ吉たちであれば、今までの経験から攻撃が来るということは分かっていたはずだ。しかし最近スキルを得たばかりの甲斐は違う。そんな予想通り、目線の先に居る甲斐は、俺の声を聞いてから動き出していた。


「“王の裁きキング・フェアダンメン”」


「――ッ!?」


 咄嗟に腕をクロスにした。

 全身に感じるエネルギー。皮膚が焼かれるというよりも、内側が、筋肉……よりも内側の何かが壊されるような感覚だ。これを数分も喰らっていれば、俺は動けなくなってしまう。


「炎」


 全身から炎を放出する。

 気休めにしかならないが、やらないよりかはマシだ。だが燃費が悪くて、あまりもたないだろうな。炎を出し続けられる間に、止めさせなければならない。


 地面を蹴り、レオンの下へと一気に跳躍する。

 この攻撃は、こちらへと向けられている右手が発生源のはずだ。そう読んで、右手を狙って攻撃を仕掛ける。


「片手を使えずとも、貴様程度であればどうとでもなる」


 レオンは左手を握った。

 あの左手に触れられたば、俺は吹き飛ばされ、そこから再起することは不可能に近い。攻撃は絶対に避けなければならないが、そうするとこちらの攻撃を当てられずに、そのまま“王の裁き”の力で再起不能になる。どちらも再起不能になってしまうだろう。


「――っ」


 空中で身体を捻る。

 鳥のような空中機動。目の先を拳が通り過ぎた。無理を可能にすることができたが、その代償は筋肉へと痛みとなって降りかかる。炎の放出で体力を消耗しているのも相まって、全身に走る激痛は言葉で表現するのが難しいレベルだ。


 それでも拳を握り続ける。そして大量の炎の放出と共に、レオンの顔へと突き出す。拳に確かな感触を得た。そのままレオンのことを殴り飛ばす。


 遠くで煙が舞った。

 しかし俺が見えたのはそこまで。跳躍のエネルギーを使い切ったことで、待っているのは重力による自由落下だ。足で着地すれば、特に怪我を負うことはなかっただろうが、先刻の無理が身体の自由を縛る。


 どんどん地面が近付いて来る。今のところ頭が下だ。地面との激突で、大きなダメージを負うことは避けられない既定路線に入ってしまった。炎の放出を頭部に絞って、落下スピードを低下させることが頭に浮かぶが、先刻の“王の裁き”が尾を引いて、炎の火力が安定しなくなったため、難しいだろうな。


「――っ」


 大量の砂埃だと思われるものに包まれる。

 身体の痛みは、先刻と同じ無理をしたせいの激痛のみ。地面に激突したことによる痛みは、一切感じられなかった。


 閉じていた瞼を開ける。地面が少し抉れているが、地面に激突した際にできた抉れではないように思えた。

 そして顔から地面まで、少し距離が離れている。頭から落下したのに、これだけの距離が空いているというのは、本来あり得ない。


「何とか間に合ったな」


 聞きなれた声に、喜びの感情を溢れさせて目線を向ける。


「――ッ」


 目線の先には、声の主――江梨子が五体満足で立っていた。しかし四肢が無事というだけで、全身から血が噴き出ていて、立っているのが奇跡と言って良いレベルの重傷を負っていた。


「大丈夫なのか!?」


「この程度の傷、今までに潜って来た修羅場に比べれば、何ともない」


 それがやせ我慢なのか、本音なのか、俺には分からなかった。



ヒーラーが居ない戦場は、かなり厳しいです。


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