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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第249話 広がる血

 喫茶店までの道は、広場ほどの地獄絵図ではなかった。

 それでも人の死体や大量の血痕と肉片は見受けられたが、確実に数は少なくなっていた。


「あと少しだから、気を引き締めておいてくれ」


「分かった」


 後ろを走る麗華に声を掛けた。

 すると背中から冷気を感じたため、スキルを使えないという訳ではないのだろう。となると、麗華が捕らえられたのは、シュペンの初見殺し性能の高い力による物の可能性が高いな。


 先刻までは江梨子たちの戦闘音が聴覚という機能を独占していたが、喫茶店に近付くにつれて、別の音が割り込んできていた。それもまた戦闘音であり、発生源が喫茶店であることは分かり切っている。だがその音も、十数秒前から聞こえなくなっている。


「ここだ……」


 座標は合っているはずだが、そこに喫茶店はなかった。

 あるのは開けた土地。周囲にあったはずの住居や建物は瓦礫すら残さず消え、やはり平地となっている。


「遅かったな」


 威厳ある声を発するのは、なくなった喫茶店のマスターである信綱だ。信綱は地面ではないものに腰を下ろしている。瓦礫ではない。人だ。ここから見るだけでは生死の有無は分からないが、それが親衛隊のメンバーであることは確かな事実だろう。


「親衛隊を一人でやったのか?」


「一人ではない。小僧の子らと、甲斐の力を借りた」


 信綱のインパクトが強くて気付かなかったが、人の山に座る信綱の後ろにはたぬ吉たちが立っていた。そして悟空の腕の中には、未だに眠り続けるロジャースの姿があった……あっ。


「あっ」


「どうした小僧」


「ロジャースのことを、完全に忘れてた」


「そう思っていたよ」


「――ッ!?」


 目を見開く。

 背後から聞こえて来た声に驚いたわけではない。甲斐が発した覇気と殺気に、背中に冷や汗が流れたからだ。


「ここでやるつもりはないから」


 その声にようやく振り返る。

 そこに居たのは、先刻握手を交わして別れたばかりのシュペンだ。額からは冷や汗を流し、両手を挙げて戦意はないことを伝えている。彼女も甲斐の変化に驚いているのだろう。


「そこの男の魂をどうしようと思ってね。力は強いし、取り込めばかなりの強化になるだろうけど、ここで不義理を働くのは、今後の関係にひびを入れちゃうと思ったから」


「聞いてもないのにベラベラと……今後の関係も何も、俺たちと豊臣陣営が敵対関係なのは、今も変わっていないだろ」


「まあそれはそうなんだけど」


 シュペンの掌の上には、麗華の時のようなビー玉のようなものがあった。違う点を挙げるとすれば、麗華の時に比べると濁った色をしている。麗華が美しい水色だとすれば、ロジャースの玉は茶色く濁っていた。


「じゃあ起こすから」


 ロジャースの腹部へと、シュペンの掌が添えられた。

 輝く。腹部なのか、ビー玉なのか、どちらが光を放っているのかは分からないが、ロジャースの腹部辺りが光り輝いた。


「……」


 せっかく意識を取り戻したというのに、ロジャースは何時ものように無口を貫いていた。こういうときくらいは声を上げてもいいのに、と思ってしまうのは、俺がロジャースのことを分かっていないからなのだろうか。


「じゃあ、次に会うときは負けないから」


 シュペンは煙のように消えた。

 前回喫茶店に現れた時とは違い、既に俺たちの意識からは消えている。今の俺たちが考えているのは、残っている最後の敵であるレオンのことだけだ。


「ではレオンの下へと行くとするか」


 先頭を行く信綱の背中を追う。

 歩き始めてから思ったが、ロジャースは意識を失っていたはずなのに、説明なしに作戦を理解しているんだ? 


 もしかして作戦を理解せずに、ただ周囲の流れに合わせて、動いているだけなのか……まあこの作戦におけるロジャースは、戦力外として考えていたから、特に気にする必要はないはずだ……アメリカのナンバー(ツー)が足を引っ張るとも思えないしな。


「――ッ!?」


 何かが高速で飛んできた。

 俺たちの間を器用にすり抜け、信綱によって積み重ねられていた人の山へと、その何かは突っ込んで行った。あの速度の物体をノーガードで受ければ、いくらスキルによって超人的な力を得た親衛隊であろうと、ひとたまりもないだろう。


 その証拠に、その場所へと目線を移すと、大量の血が砂埃と混ざって霧となって宙を漂っている。


「麗華がそこに居るということは、ペドロもシュペンも負けたのか」


「レオン」


「そう睨むな、窪田悟。お前も知っているだろう、この世界は弱肉強食と化し、強者だけが正義なんだ。力で手に入れた戦利品を、俺がどうしようと文句を言われる筋合いはない」


「文句を言うつもりはないが、睨むのも俺の勝手だろ」


「確かにそうだ。その勝手を止めさせるためには、俺の力を見せないとな!」


「――ッ!?」


 見えなかった。

 ほんの一秒前までは、数十メートルは離れたところに居たというのに、一瞬で目の前へと移動してきた。目に映ったのは強く握られた拳。


 そして次に脳が理解したのは、殴り飛ばされたという事実だ。



レオンとの最終決戦が始まりまる。


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