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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第247話 攻撃を透かす

 駆ける。最初から【シンクロ】で“赫猛”を借り、拳には全力の炎を纏う。これでこの攻撃は物理、特殊の両面をカバーすることができる。前回の襲撃で、信綱とロジャースの攻撃を透過したことに対する対策として、この攻撃を選んだが、効くかどうかは分からない。


「“火拳”!」


「残念だけど、その攻撃は効かないよ」


 突き出した拳は、魔人の肉体を捉えることなく、そのまますり抜けてしまった。身体を捉えられると思って拳を突き出したため、バランスを崩してしまう。


「――ッ」


 裏拳の要領で、掌が向けられた。

 これはロジャースから意識を奪った攻撃かもしれない。もし違うにしても、触れられることは絶対に避けなければならないだろう。


 殴る体勢のまま、魔人の身体をすり抜けたことで、一番近い位置に残ってしまっているのは左腕。これをどうにかして退かさなければならない。

 即座に足を踏み込み、身体を回転させる。左手を引くのと共に、右手で裏拳を放つ。透過しているカラクリは分からないが、向こうがこちらに触れる時は、こちらも向こうの身体に触れられると予想しての攻撃だ。

 もしこの攻撃も透過して来るとなると、この透過の力は無法過ぎて、突破方法が全く思いつかなくなってしまう。


「やっぱり避けるか」


 魔人は裏拳を避けるために、後ろへと跳び退いた。

 これがブラフの可能性も捨てきれない以上は、大きな隙を晒して、攻撃を誘うのも最適解とは言えないか。


「じゃあこっちから行くよ」


 魔人の姿が消える。

 高速移動を認識できていないという訳ではないと思う。単純に姿が消えている。転移系の力か、透明化系の力なのか、どちらにしても俺の力では観測できないという事実に変わりはない。


「……」


 この間に呼吸を整える。

 焦ったところで、できることは増えない。対応に乱れが生まれるだけで、メリットは何一つない。そんな精神で、ただ呼吸を整えることに集中する。当然、五感は鋭く機能させている。


「――っ!」


 反射的に拳を突き出した。

 そこに魔人の姿はない。だが何かを肌で感じ取ったのは確かで、この感覚に間違いはないと思っている。


「……」


 空気の流れに変化はなかった。ただ肌がピリピリとしたのものを感じ取っただけだ。第六感とでも言うのだろうか。

 しかし地下に広がるダンジョンで、ダンジョン異常(イレギュラー)のワイトキングを倒した際に手に入れたスキルは違ったはずだ……ワイトキング……もしかしてそうなのか?


「お前の元はワイトキングか?」


「……」


 肌を刺激する空気が変わった。

 そして眼前に魔人が現れる。先刻までと表情の変化はない。


「バレたなら、名を名乗っておくよ。私の名はシュペン、君たちが予想しているように、【魔十二槍】が一人だよ」


「どうして姿を現したんだ? あのまま行けば一方的に攻撃できたはずだ」


 姿を見せていて絶好のチャンスのように見えるが、ここで攻めに行ったところで、透過で攻撃を透かされるだけだ。ならば喋りで情報を引き出して、今後の戦いを優位に攻められるようにする方が効果的だろう。


「私の元々の姿を見抜くなら、この提案をしてもいいかなと思って」


「提案だと?」


「そう、提案。私たちと一緒に豊臣様の下に付かないって話」


「……どうしてそれを求める」


「君は私たち魔人と近しい存在だから」


 魔人と近しい存在……何となく思ってはいた。

 スキルを介さずに、炎を出せるようになったし、膂力や五感だって人の域を脱している。これを人ならざる者と呼ばなければ、なんと呼ぶのか、魔物と人の間を魔人と指すのであれば、これは俺にも適応される可能性は大いにある。


「無理だな。豊臣は世界の王になることを望んでいる。そんな野望を持つ者が、世界の頂点に立った場合、人々への悪影響は想像がつかない」


「残念だね」


 魔人――シュペンの姿が消える。

 俺は再び集中力を高める。今のところシュペンの存在を観測するには、肌で微かな違和感を感じ取るしかない。


 極限まで高められた集中力。その状態で瞼を開けた。なんだか世界がとても輝いて見える。そして薄っすらと世界の違和感が見えた。


「――」


 歩く。その違和感に狙いを定め、ゆっくりと歩みを進める。

 その違和感は移動しない。だが俺が一歩一歩近付くたびに、その違和感から焦りが感じ取れた。拳には炎を纏い、“赫猛”は使用済みだ。


 そして思いっきり振りかぶり、違和感の中心部分を狙って、勢いよく突き出した。手応え。拳でなんらかの存在を捉えたような、重たい感覚があった。


「――ッ!?」


 遅れて壁が大きく抉れる。

 パンチと同時に違和感は壁へと移動し、違和感はシュペンの姿へと変わった。壁にもたれかかるシュペンの表情は、驚きにも、怯えにも見える。だがその表情がどんな感情を表していたとしても、俺はトドメを刺して腹を掻っ捌かなければならない。拳の火力を最大まで上げる。


「――」


 シュペンの表情から、怯えの感情が分かりやすくなった。

 俺は一度目を瞑り、炎を纏った拳を突き出した。



シュペンの能力は、透過、全霊化、霊魂操作、玉化など様々です。

しかし力の同時使用はできないため、すんなり殴られてしまいました。


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