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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第245話 “発勁”

「【シンクロ】」


 借りた力は“赫猛”と竜馬の風を纏う力。

 竜馬の力は、騎乗時に風圧を抑制するためのものだが、走り回る上で風圧を抑制できるのは、かなりありがたいことのはずだ。


「行くぞ」


「来い、侵入者よ」


 再び駆け、拳を突き出す。

 炎は纏っていない。“赫猛”で強化された膂力を存分に活かす、シンプルなパンチだ。目に映るのは剣の腹。このまま突き出せば、これまでのように防がれてしまうのは、目に見えている。

 

 しかしタイミングをずらそうとしても、ペドロであれば反応して来るだろう。であれば、膂力のみで押し切り、第二撃目を当てることに力を入れるのが最適解のはずだ。


「――」


 大気が割れるような爆音が鳴ったが、ペドロの剣には傷一つ付けられていない。足が滑るように後退することもなく、ただその場に仁王立ちしたままだ。


「――っ」


 腹部に掌を添えられた。

 これが攻撃の準備であることは明確だったが、あまりに自然な動きだったため、反応が遅れてしまった。


「“発勁(はっけい)”」


 その言葉が耳へ届くのと同時に、俺の身体は壁に激突していた。

 激突の際に負った痛みだけではなく、攻撃されたと思われる腹部の違和感が、立ち上がることを拒んでいた。


 身体が言うことを聞かない。これは痛みが原因ではなく、腹部にある違和感が原因なのだろう。でなければ、根性でどうにもできない理由に説明がつかない。


「これは効いただろう。これはスキル由来の“発勁”だからな」


「スキル由来の“発勁”だと?」


 なんとしても情報を抜き取らなければ。

 腹部に感じている違和感は、段々解消されてきているが、そのカラクリが分からない限りは、何度も喰らってしまうだろう。


「この“発勁”は【勁力】によるものだ」


「【勁力】だと?」


「このスキルは、力の源である丹田に作用し、一時的に機能を停止させる力を有している」


 想像の百倍簡単に吐いてくれた。

 しかし【勁力】……これはかなり厄介なスキルだな。丹田に直接作用して、身体を動かすエネルギーを出させないようにするなんて、どう対抗したものか……。


「速く立て、窪田悟よ。もう動けるはずだ」


「バレていたか」


 ゆっくりと立ち上がり、ペドロの顔を見る。

 とても真剣なものだ。だいぶ優位に立っているだろうに、その表情に油断は感じられない。強い正義が故の、驕らなさ。敵にするととても厄介な相手になるな。


「本気を出すなら、早くしろ。確かに私は時間を稼げば、戦いにおいては勝利に違いないが、あまり好みではないのだ。やるのであれば、正面から叩き潰す。それが私の正義なのだからな」


「本気を出す? 俺は最初から今この時まで、ずっと本気を出しているぞ」


「……なぜそこまでして隠そうとするのか、私には全く理解できない。だが本気を出すつもりがないのであれば、その状態で散るがよい」


 ペドロの剣が輝いた。

 業物だということは、一目見た時から分かっていたが、凜々花の【長谷部】と同じように、能力を有している武器だったとは……かなり苦しいぞ。


「――」


 神速に等しき詰め。

 俺は反応するのがやっとだった。発勁を警戒して片腕で腹部を守り、首から顔にかけては右腕で守る。全ての攻撃をカバーできるわけではないが、手痛いダメージを負うであろう攻撃は、カバーできているはずだ。


「甘いな」


 腹部を守っている左腕に、ペドロの掌が添えられた。

 嫌な予感がする。嫌な想像が頭をよぎった瞬間に、後方へと跳び退こうとしたが、ペドロの攻撃が炸裂する方が速かった。


「“発勁”」


 再び吹き飛んだ。

 先刻と同じように、壁に激突して、丹田の異常で立ち上がれない。だが先刻とは違い、ペドロは詰めて来ていた。


「これ以上、己が正義を守れば、仕事を全うできない。卑怯とは言うなよ、窪田悟」


「端から卑怯なんて言うつもりはねえよ」


 壁に寄りかかる俺に対し、ペドロは輝く剣先を突き立てて来た。

 頬から血が垂れる。しかし剣先が頬から離れると、血を垂らしている頬の傷は、一秒にも満たない一瞬の時で塞がった。


「ではさらばだ」


「そうだな、サヨナラだ」


 俺は目を瞑る。

 暗い瞼の裏に映るのは、今となっては繋がりすらなくなってしまったゴン太の姿だ。


『コン』


 聞こえて来るのその鳴き声が、幻聴であるということは俺が一番分かっている。なんたって繋がりがないのだから。


「賭けは勝ったみたいだ」


「……何を言っている?」


「丹田の異常で、スキルは使えないみたいだが、ゴン太の力は変わらず使えるみたいだ」


 掌に炎が灯る。

 

「――ッ!?」


 ペドロの涼しい表情が、焦りへと変わる。

 だが遅い。俺は全身から炎を噴き出す。大火は近くに立っていたペドロのことを巻き込み、火達磨へと変えた。体内の炎が自分に対してダメージを与えることはないが、シンプルに体力を酷く消耗してしまった。


 火達磨の状態で暴れるペドロを横目に、俺の意識はブラックアウトした……。



敵地での気絶、悟の安否は!?


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