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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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243/294

第243話 開始された作戦

 連なる屋台の先、要塞内ではひときわ大きな建物。

 そこで見せつけるように立っているレオンと、純白のドレスに身を包んだ麗華。割れんばかりの拍手が、並ぶ二人へと向けられていることは、誰の目からしても明らかだろう。


「……」


「悟、逸るなよ。チャンスは必ず来る……いや、私が引き寄せる」


「――ああ、そうだな」


 無意識の内に、強く踏み込んでいたようだ。

 目線を下げると、旧文明の遺産であろうコンクリの地面が、小さく抉れていた。こういった物を改めて作り直すには、適したスキル持ちを探さなければならないだろうから、あまり壊すのはよろしくないよな。


「悪かったな」


「どうせここら一帯は壊れるんだ。気にする必要はない」


「それもそうだな」


 江梨子へと向いていた目線を、レオンたちの方へと向ける。

 そこで気付いたが、レオンと麗華の後方には、気配を消して立つ、複数の人間を観測できた。背後に立つことを許しているってことは、あれが親衛隊のメンバーなのだろう。


 見ただけで実力が分かる目を持っているわけではないので、強敵になり得るかどうかは分からない。しかし気配の消し具合から、油断できる相手ではないということだけは確かだ。


「私はここに宣言しよう!」


「じゃあ悟、作戦開始と行くか」


「頼んだぞ」


 隣に立っていた江梨子が、一瞬にして姿を消した。

 周囲の人たちが不思議そうにしているが、あまりの速さに理解が追いついていないのだろう。その証拠に、人が消えるという超常現象が起きたにも拘らず、大きな騒ぎは起きていない。


「この私レオンと、日本で知らない者は居ない超有名冒険者、“絶氷の薔薇姫”西園寺麗華との婚約を発表する!!」


「「「うぉぉぉぉ!!」」」


 民衆の叫び。

 苛立つ気持ちに蓋をして、自分に課せられた役割を遂行するため、人混みの中へとその身を隠す。


「ちょっと待ったァ! っていうのは様式美だろう」


 レオンの前、そこには宙に浮かぶ江梨子の姿があった。

 しかし作戦を知っている者や襲撃してくることを予想しているレオンたちでなければ、彼女のことを江梨子と断定することはできないだろう。

 宙に浮かぶ江梨子は、真っ黒なコートで全身を隠し、祭りで手に入れた山羊(ヤギ)のお面を付けるという、用意周到ぶりだ。


「しかし俺は王道を行くつもりはないんでね。力で切り開く覇道を目指しているから、花嫁に選択を委ねるつもりはない」


 レオンのその声は、聴覚が強化されているから聞こえているが、周囲に居る一般市民たちには聞こえていないだろう。ただ突如現れた江梨子に対して、ざわざわしているだけだ。


「覇道は修羅の道……ってのは分かっているだろうに」


「修羅の道だろうと、切り開いて行けるのが王だ」


 レオンが動いた。

 瞬間移動したと錯覚してしまう高速移動で、江梨子に肉薄すると、掌を突き出していた。吹き飛んだ。野次馬と化していた群衆を巻き込んで、地面にクレーターを作り出す。


 楽しい祭りだった場所が、一気に阿鼻叫喚の地獄へと様変わりした。

 混乱が混乱を呼び、群衆はバラバラの方向へと逃げようとする。走る人と人がぶつかり、転んだ人を踏んづけると、足が縺れてさらに転ぶ。


 そんな負の連鎖が続く地獄に、俺はフードを被って存在感を消す。離れたところで江梨子が立ち上がったが、その顔は血だと思われるものが付着し、真っ赤に染まっていた。あの程度で江梨子が怪我するとは思えないため、あの血は巻き込まれた人のものだろう。


 何も思わない冷血漢ではないため、心は痛んでいる。だが覚悟は決めていたため、作戦を中断するつもりはない。


「……相変わらず異常な力だ」


 江梨子の呟きと共に、足元を突風が吹き抜けた。

 これは事前に用意していた合図だ。喫茶店で待機しているたぬ吉たちに、作戦開始を伝えるためのものであり、俺が動き出すための合図でもある。


「じゃあ行くとするか」


 俺は群衆の間をするりと抜けると、レオンたちが居る建物の正面玄関から侵入した。入口に警備の兵はいたが、上階に居る親衛隊たちに比べたら、一般人とそう変わりなかった。


 玄関を開くと、支配者の権力を誇示するような、豪華絢爛なホールが待っていた。俺みたいな一般市民からすると、趣味が悪いとしか思えないのだが、支配者階級からすると良い物なのだろう。でなければ、わざわざ豪華な内装にする意味がないからな。


「まあ簡単に上へと行けるとは思っていなかったが、いきなり親衛隊がお出ましとは」


「貴様程度に兵を消耗していては、今後の政権運用に支障をきたしてしまうからな」


「あの時に逃した償いだろ。お前が逃したせいで、監獄は陥落したんだからな」


 歩みを拒むように、目の前に現れたのは、純白の鎧に身を包み、腰には業物が差していある女――クソ医者の所を後にした時、直ぐに出会った親衛隊のペドロだ。


「……あの監獄が陥落したことに対して、私が償うことなど何一つない。私は己の正義に従い、貴様を殲滅するだけだ」



第215話に少しだけ登場したペドロとの戦いが始まります


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