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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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242/297

第242話 祭り

 祭り当日を迎えた俺たちは――


「やはり祭りの飯は美味い」


「江梨子、食いすぎるなよ。腹いっぱいで動けなくなったら、最悪だぞ」


「大丈夫だ。人よりも消化が速いからな」


 普通に祭りを練り歩いていた。

 これまで缶詰などの、非常食ばかりを食べて来た俺たちにとって、祭りの屋台飯は久方ぶりのまともな飯と言っても過言ではない。それを楽しまなければ、一生楽しめる日はやって来ないかもしれないと思うと、食べざるを得ないだろう。


「どうして祭りの焼きそばは、こんなにも美味しいんだろうな」


「祭りの雰囲気がスパイスになっているからだろ。同じ味付け、同じ環境で作ったとしても、平時と祭りとでは味の感じ方に差はあるはずだ。そこに関しては、キャンプ飯も同じだ」


「確かにそうかもしれないな。以前食べた悟のキャンプ飯は、見た目や味付けは普通だったが、異常に美味しく感じた」


 キャンプ飯は雰囲気のお陰で美味しく感じるけど、これといった特別なことはしていないからな……バーベキューとかも同じだろうな。


「江梨子、こういうのは難しく考えたらダメなんだよ。頭空っぽで楽しまないと、十分に楽しめなくなるぞ」


「……それもそうだな」


 俺たちは二人で人混みの中を進んで行く。

 甲斐や信綱、たぬ吉たちは、作戦を始めるまでは喫茶店で待機だ。甲斐や信綱であれば、特段目立つことはないため、別に着いて来ても良かったんだが、たぬ吉たちは目立ちすぎる。


 そのため作戦に必要な俺たちだけが祭りへと繰り出し、甲斐たちは喫茶店での待機になった、という訳だ。


「……江梨子」


「ごうじた」


 食べてる途中に話しかけた俺も悪いが、呑み込んでから返事をしてくれ。俺が見る分には構わないが、周囲の人からの目線が痛いから。


「何人の人が死ぬんだろうな」


「……分からん。ただかなりの数が命を落とすことになるだろうな。しかし私たちはそれでも戦う。そう決めただろう?」


「……そうだな」


 覚悟はしていたが、改めて人々の笑顔を見ていると、その覚悟が揺らぎそうになって仕方がない。俺も分かってはいる。豊臣陣営と対等に戦うためには、【皇居ダンジョン】を手中に収めておくのは必須事項。


 世界の崩壊と世界の王になることを望む豊臣を、俺たちは許すわけにはいかない。その戦いまでの道中に、どれだけの屍を積み上げようと、俺たちは戦い続ける。そんな覚悟を俺たちの共通認識にしたはずだ。


「……人は適応してしまう」


「どうしたんだ急に」


「特に日本人はそうだ。明治維新に始まり、戦後の高度経済成長期とその後に訪れた長期間の不景気、ダンジョン発生後、ダンジョン協会によって齎されたダンジョン特需、そして世界の変革後の現在(いま)、人々は置かれた環境に適応し、その環境下での最大の幸福で満足してしまう。不況が訪れなければ、ダンジョンが発生しなければ、もっと大きな幸福を享受できたのかもしれないのに、それを知ろうとする人は少なく、その環境下での最大の幸福に到達したら、維持するのに必死で、それ以上を求めようとはしない」


「……まあそうかもな」


「これは大きな話だが、小さいところに焦点を当てると、段ボールの家しか知らない子は、ピカピカの段ボールで満足するが、外から見ると満足してるはずがないと思われてしまう」


「まあだろうな」


 江梨子の話したいことは何となく分かる。

 だがこの話が、先刻の人が死ぬことを許容しなければならない話と、どう繋がってくるのかが、俺には分からなかった。


「私はお節介だと思われようと、子に自分が持てる最大の幸福を教えてあげたい。それでも段ボールで満足できるのであれば、その子はそういう子なのだろう。しかし段ボールで満足できなくなるのであれば、段ボールしか知らないのは、環境がそうさせたということになる。そこから這い上がれるのか、満足できないまま仕方なく段ボールに留まるのかは、その子の運と実力次第になるが、上を知るというチャンスは与えた。そうしたら、全てを環境のせいすることはできなくなる」


「つまり?」


「世界が変わっても、人の庇護下で生きようとするこの群衆は、環境が良かっただけだ。外の世界では努力が足りずに死にそうになっている者も、運悪く死んでしまった者も、運と実力のお陰で這い上がれた者もいる。それが今の世界であり、人類の大多数に架された苦難だ。であれば、ここに居る群衆に、外の世界の環境を教えてあげるのは、段ボールで満足できる子に、それ以上の幸福を教えてあげることと同じということだ」


「……こういう話で、マイナス面の平等を図るってのは珍しいな」


「世界は不条理だからな――」


 悲しげな声色をしていたため、今の江梨子はどんな顔をしているのだろうか。そう思って江梨子の顔を見ようとしたが、割れんばかりの拍手の音で、その行動を止めてしまった。


「麗華……」



作戦実行まであと少し……


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