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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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240/294

第240話 先手

「詳細は、マスターから頼むよ」


「ああ。一週間後、レオン政権の樹立一か月を記念して、大規模な祭りが開かれる。そこには要塞内各地に展開されていた親衛隊や、部下が勢ぞろいする」


「そこを狙う訳だな」


「そして祭りには、一つの目玉情報があるらしい」


「それは俺も聞いた」


 祭りについて、とある噂がまことしやかに囁かれている。

 ただ弾圧的な政権を持っているレオンが、嘘の噂を許すとは思えないので、基本的に事実ベースの噂なのだろう。


「レオンが婚約する、それも相手は冒険者であれば知らない者は居ない、かなりの有名人である、だろ」


「分かっているとは思うが、その相手は……西園寺麗華の可能性が高いだろうな」


 麗華の容姿はかなり整っている。

 そして日本でもトップクラスの実力とスキルを有している……レオン政権の箔を裏付けするには、うってつけの人材って訳だ。


「奪還するには、絶好のチャンスって訳だ」


「逆に言えば、このチャンスを逃せば、麗華を救い出すチャンスがなくなってしまうってことだ」


「分かっている。このチャンスを逃すつもりはない」


 拳を強く握り過ぎるあまり、掌から血が垂れて来る。

 腕を下へと向けているため、流れ出る血は握った拳を伝って、地面へと落下した。

 ――ポチャン

 下に水たまりがあるわけでも、大量の液体が落ちたわけでもないので、そんな音が鳴るはずはなかったが、確かに俺の耳はそんな音を聞き取った。


「「「――ッ!?」」」


 足元が揺れる。

 最初は地震かと思ったが、この場に居る全員が――甲斐を除いた全員が感じ取った殺気が、その可能性を完全に否定した。


「堂々と騒ぎを起こしながら潜入しておいて、なんの対策も練っていないと思っていたの?」


 床から飛び出してきた存在に対し、殺気と武力を返そうとした。

 だがその手の上にある物が目に入り、その行動が叶うことはなかった。


「君らの仲間である西園寺麗華は、言葉通り私の手中にある。変に手を出したりして、この玉が壊れたら、助け出せないよ」


 ブラフかもしれない。だがブラフと断定できない以上は、手出しすることはできない。


「……」


 だが麗華に対して思い入れがあるのは、俺や江梨子たちだけだ。

 喫茶店のマスターである信綱や、アメリカ人であるロジャースにとって麗華は、人質になる価値はない。


 つまり攻撃をやめる理由が、二人には存在していないということだ。


「酷いねぇ。殺気は出したかもしれないけど、手は出してないのにさぁ」


 侵入者の頬から血が噴き出す。

 攻撃されたというのに、侵入者は一切動揺していない。それどころか余裕すらも感じさせる振る舞いに、信綱もロジャースも警戒度を一段階上げていた。


「それで、レオン側の人間が何の用だ」


「人間? ああ、今はそうだった」


 今はそう……つまりこいつは魔人であり、豊臣の部下だということだ。最初のレオンによる迎撃の時から思っていたことだが、この皇居の囲い込みは、豊臣の意志の下、行われたということだろう。


「私たちの目的は、以前の君たちがやっていたような、【皇居ダンジョン】の私有化。その過程で人を抱えているだけ。無害な人を手に掛けるつもりはないから、だいぶ親切でしょ?」


「……あの監獄は?」


「ああ、あれは私たちに逆らった人間どもだから、害虫でしかないよ。そもそも人を守ってやる筋合いだってないんだから、文句は言わないでよね」


「やはり許せんな。一人を犠牲に、諸悪の根源を絶てるのであれば、文句は言わせまい」


 信綱は俺に向けて言った。

 これは俺が監獄で行った切り捨てを知ったうえで、その言葉を吐いたのだろう。そして俺は、信綱の思惑通り、その動きを止めることはできない。


 抜刀。神速の如き居合は、身体の変化で超人的な動体視力を得た現在でも、捉えきることはできなかった。


「だから今は戦うつもりないのに」


 刀は振り抜かれたはずだった。刃の軌道上に、侵入者の首があり、防がなければ死を逃れる道はなかったはずだ。

 しかし侵入者は防ぐどころか、身じろぎ一つしていなかった。そして斬撃による傷は見られず、振り抜かれた刃にも体液は付いていない。つまり一瞬で再生したわけではなく、刃が空振ったということだろう。


「忠告してあげる。もし祭りで手を出して来たら、ここの住民がどうなるか分からない……まあ人間がどうなろうと、私には関係ないから、別に手を出しても構わないんだけどね。ちなみに先日、住民が五万人を突破したよ」


 俺の瞳には映っていた。

 ペラペラと喋る侵入者の背後、そこに気配を消して立つロジャースの姿が。振り上げた拳が、無音のまま降ろされる。風を切る音すら鳴らさない拳は、侵入者の頭部を捉えた……はずだった。


「はぁ、面倒だなぁ」


 拳がすり抜ける。

 侵入者が立っている座標へと振り下ろされた拳は、身体をすり抜けて、地面に大きな凹みを作った。


 攻撃を透かした侵入者は、ゆっくりと振り返り、ロジャースの腹部へと、掌を添えた。


「じゃあね」


 その言葉と共に、ロジャースは魂を抜かれたかのように、力なく倒れた。そんなロジャースに気を取られていると、侵入者の姿が消えている。


「元になった魔物はなんだ……」


 それが分からなければ、倒せないだろう。

 そんなことを思わせてきたアイツは、かなりの強敵になのだろう。



今回の魔人は、どんな魔物が進化した姿でしょうか。


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