表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
239/296

第239話 帰還までの道

 ダンジョンの入口へと戻って来た俺たちだが、そこからが長かった。

 行きと違って、どれほどの距離が残っているのかが分かっているため、そこまで気が滅入ることはなかったが、魔物のいない長距離は精神的に来るものがある。


「戦える力を得たからには、甲斐にも戦ってもらうからな」


「分かってる、今までの私は足手まといでしかなかったんだから、最低限の働きはするわよ」


「……なんだ? 人が変わったようだな」


「ここに来て、本当に日常は壊れてしまったことに気付いたのよ。だから私も変わらないといけない……この子たちが教えてくれたわ」


 甲斐はたぬ吉の顎を撫でながら言った。

 撫でられているたぬ吉の顔は、俺が撫でた時には届かないレベルでだが、蕩けているように見えた。胸に靄が掛かる。これはジェラシーを感じているわけではない……はずだ。


「たぬ吉」


「ポン?」


 たぬ吉は甲斐の撫でよりも、俺の問いかけを優先して反応した。

 今の問いかけに、これといった意味は存在していない。ただ反応が見たいがために話し掛けただけだが、バレるのは少々恥ずかしいだろう。


「ちょっとこっちに来てくれ」


「ポン!」


 たぬ吉が小走りで駆け寄ってくる。

 甲斐がやったのと同じように、顎辺りを撫でる。まだ汚れを流せていないから、フワフワだった毛はかなりゴワゴワしているが、これはこれで独特な触り心地で、ちょっと癖になりそうだ。


「ナーン」


 鳴き声と共に背中を引っ張られた。声から誰なのか分かっているが、身体ごと後ろを向けて確認する。

 そこに居たのはタマだ。撫でられているたぬ吉のことを、目を輝かせながら見ている。なにが言いたいのかは分かっているが、今は自分一人の時間ではない。逸らしたくない気持ちに蓋をし、目線を江梨子へと向けた。


「……はぁ、良いんじゃないか? 悟の従魔たちは、対レオン政権における重要な戦力だ。こんなところで気を落とさせていては、勝てる戦いも勝てなくなってしまうだろう」


「――」


 そこからはとにかく撫でまわし続けた。

 どれほどの時間が経ったのかは分からない。だが江梨子たちの呆れ具合から、相当な時間を撫でに使っていたのだろう。だが後悔はない。


「帰りながら、作戦を考えるとするか」


「そうだな」


 地下道を進む間、対レオン政権との戦争を優位に進めるための作戦を、何個か提案し合った。勿論、甲斐からも話を聞いた。以前までの彼女であれば、話を聞くことはなかっただろうが、今の甲斐は立派な戦力だからな。


 そんな風に時間を潰していると、随分と前に思えるマンホールの前へとやって来た。ようやくこの暗い地下から抜け出せると思うと、心が躍るな。まあ先のことを考えていると、躍ってなんか居られないんだが。


「私が風を流す。合図を出したら、一気に登って来い」


「ああ、分かった」


 行きに比べて、だいぶ大所帯になった。入ってくる時以上の警戒と、気配の希薄化が重要になってくるはずだ。


「今だ!」


 江梨子がマンホールを開けるのと同時に、梯子を駆け上がる。

 後ろには器用に手足を使って登って来ているたぬ吉やタマの姿、江梨子の力によって宙を浮かんでいる亀之助と竜馬の姿、そして普通に登っている甲斐と悟空の姿があった。


「走るぞ!」


 地上に出た俺たちだが、一息ついている暇はない。

 俺や江梨子、甲斐の姿は見られても、そこまでの問題にはならない。しかしたぬ吉たち魔物の姿を見られてしまえば、騒ぎになることは避けられないだろう。そうなれば、考えていた作戦も全て意味を成さなくなってしまう。


 世界が変わっても、変わらず天に存在している月明かりを頼りに、喫茶店を目指して一直線に進んで行った。


「はぁはぁ」


 騒ぎを起こすことなく、無事に喫茶店へと辿り着いたわけだが、甲斐の呼吸が死ぬんじゃないかと思うほど乱れていた。まあ仕方ないだろう。いくらスキルを得たからと言っても、その身体は一般人となんら変わらない。


「無事に連れ帰って来たようだな」


 待っていたのは、真剣な表情でコーヒーを飲んでいるロジャースだ。

 その姿は、いつかの俺の姿と重なって見える。


「……マスター、いいコーヒーだ」


 無口なはずのロジャースが口を開いたかと思えば、俺が踏んだ轍を同じように踏んだ。


「……」


 マスターは顎でインスタントのビンを伝えた。

 そこまで同じだと、アメリカのトップ(ツー)であっても、普通の人間と変わらないんだなぁ、という親近感が湧いて来る。


「……」


「じゃあ作戦会議と行こうか。今回の作戦を仕切らせてもらうエリザベスだ」


 江梨子の顔が真剣な物へと変わる。

 ロジャースも信綱も、従魔たち、俺だって真剣な表情へと変えた。


 唯一、江梨子のコンプレックスを知らない甲斐だけが、不思議そうな顔をしているが、誰もツッコむことはなかった。



戦いに向けての準備が始まります。


ブックマークと★★★★★をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ