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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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231/294

第231話 弔う

 握った拳。

 それを全力で振り抜く。これまでの経験で硬く育った拳は、スケルトンのカルシウムボディを容易く破壊した。弾け飛んだ骨片が、壁へと突き刺さる。

 この程度でダンジョンが損傷するわけがないので、ここはまだダンジョン内ではないのだろう。つまり魔物がダンジョンの外へと出てきている――ここも豊臣によって変革が行われたダンジョンというわけだ。


「先を急ぐぞ。いつ敵が降りて来るかも分からないからな」


「ああ、急ごう」


 先陣を切って進む。

 スケルトンレベルの魔物であれば、俺であっても一撃で屠れるため、レオン政権の人間と接敵する可能性がある背中側を、江梨子に任せている。


「それにしても、ここは何のために作られたんだろうな?」


「下水道……ではないだろう。水が流れる水路的なものがないからな。理由は分からないが、現在は利用されていない可能性が高い、謎の地下空間に、ダンジョンが発生した。今私たちが考察できるのは、こんなものしかない」


「それはそうだな」


 こんな意味があるのかないのか、よく分からない会話をしている間も、襲い掛かってくるスケルトンを殴り続けていた。一撃。様々な種のスケルトンと接敵したのだが、みな一撃で木っ端みじんになってしまうため、十体ほどを屠った頃には飽きてしまった。


 たぬ吉たちを救い出すという目的があることで、この苦行とも言える反復作業をこなすことができていたが、そろそろ精神的にきついものがある。


「江梨子、飽きて来たんだが」


「辛抱しろ、悟。あと少しで別種の魔物と接敵する」


「そういうことじゃないんだが……まあ敵の種が変われば、飽きも解消されるか」


 そんな江梨子の言葉通り、次に接敵した魔物は、スケルトンではなかった。人型であることに変わりはないが、その身体は骨だけでなく、ちゃんと肉が付いている。しかしただの肉ではなく、腐臭漂う腐った肉だがな。


 その魔物の名は、グール。死してなお生へと縋り付く怨念が作り出した化け物――と学者は呼んでいたが、ダンジョンの魔物である以上、ダンジョンのシステムによって創り出された、人と似て非なる存在に過ぎない。


「人でないなら、特に思うことはないが、もし人だったのであれば、これは弔いの火だ」


 握った拳に炎を纏う。

 振りかぶり、突き出す。接近に伴い、纏っていた悪臭が鼻を突き抜けるが、監獄の臭いに慣れてしまったおかげ、もしくはせいなのか、その悪臭に嫌悪感を抱くことはなかった。


 グールの身体に拳が触れる。一瞬だけだったが、その感触は人と大して変わらない。それが本物の人なのか、本物の人を模して作られた偽物の存在なのか、どちらだろうと関係ない。弔いの気持ちを籠めた拳で、屠ってやる。


「――」


 一瞬で焼け焦げる。だがそれも一瞬のことで、高い火力に燃やし尽くされた肉体は、灰となって地面へと舞い落ちる。


「……ふぅ」


 サラリーマン時代の俺であれば、心が揺れ動くかもしれなかったが、ダンジョン関連のことで様々な経験を積んだことで、全く心は揺れ動かなかった。


「江梨子、この先、どれくらいの道がある?」


「最低でも、私の観測できる範囲内は、全て地下道だ。まあ地下道と完全に同化していて、似た材質でダンジョンが作られているのであれば、その限りではないが」


「まあいいか。まだウチの従魔の姿は捉えられていないんだよな?」


「それらしき存在は居ないな」


「ならとにかく進むだけだ」


 面倒くささや、飽き、そんな探索を進めたくなくなる理由よりも、たぬ吉たちを探し出すという目的の方が、俺にとって優先される事項だ。そもそもたぬ吉たちを従魔は、俺の中にある存在の中でも、最上位に位置する存在。どんなものを切り捨ててでも、助け出す。そんな覚悟がある。


 グールとの接敵から五分。結構な距離を進んだはずだが、未だダンジョンには侵入できていない。その証拠に――


「急に壁を殴って、どうしたんだ」


「いや、ダンジョンでないことを確かめたくてな」


 軽く殴っただけだが、壁はポロポロと崩れ落ちている。いくら俺の膂力が上がっていようと、ダンジョンの壁はここまで脆くはないため、ここは未だダンジョン外であるということが分かる。


「従魔の視界は、ダンジョンのようであったのだろう? ならばダンジョン内は分かりやすくなっているのでは? まあ気長に行こうではないか。ここに出現する魔物程度では、悟の従魔に傷一つ付けることは叶わないのだからな」


「ふっ、確かにそうだな」


 家族である俺よりも、江梨子の方が信頼していたとは、自分が情けなくなる。確かにそうだ。ウチの従魔たちは、並大抵の魔物にやられるほど、弱い子たちではないよな。



とにかく進むしかない。


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