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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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224/294

第224話 ブルーノ

 鼻に香る火薬の臭い。そして肉が焼けたであろう焦げ臭さ。それは俺たちの、俺の判断が齎した結果を表す臭いであり、鼻を摘まむわけにはいかない。


「行くか。これだけの爆発だ。バレていないはずがない」


「その通り」


 何処からともなく聞こえて来た声。

 合わせて足元が揺れる。地震かと思ったが、声とのタイミングが良すぎるため、声の主が引き起こした揺れなのだろう。


「最初から見ていたが、よくも我が監獄を引っ掻き回してくれたなぁ」


「最初から? なら手を出さなかったお前の方が悪いだろ」


「……悟、それは犯罪者の言い訳だよ」


「法があればな」


「まあね」


 そう、法があれば、俺の方が悪い。圧倒的に悪い。

 だが法も政府も亡くなった以上、弱肉強食でなければならない。それはある程度の力を持つ者であれば、同じ考えに至るはずだ。力を持たない者が、以前の法や秩序に縋ることを悪いとは思わないが、現実問題、世界は変わってしまったのだから、適応しなければならない。


「ふっ、我は法に厳格でな。この要塞内における法では、要所侵入だけでは命を奪えないのだよ。でも殺人と脱獄の手助けのダブルパンチだと、死刑に値する……つまり君は死刑。そして殺人と脱獄しようとした罪で、君らも死刑なのだよ!」


 ふわっとした浮遊感に包まれる。

 しかし身体が浮いたわけではなく、足元ごと宙へと浮かんでいた。ただ浮かんでいるのではなく、掌の形で持ち上げられている。


「なるほど、これは脅威的なスキルだ」


 眼前いっぱいに広がる巨大な土塊。

 それが人型で纏まり、こちらを睨みつけている……ような気がする。


「このまま握りつぶしてもいいが、逃げ惑え!」


 放り投げられた。

 高さにしてビル四階分くらいか? 直ぐに体勢を立て直して、小さなクレーターを作りながら着地する。脚へのダメージはゼロに等しい。


 脱兎の如く駆ける。目標は巨大な土塊の頭部。そこに本体が居るという確証はないが、頭を吹っ飛ばして損はないだろう、という考えの下、目標を定めた。


「【シンクロ】」


 “赫猛”。

 滾り出る赤いオーラが、己が力を強化してくれる。

 握った拳に全神経を注ぎ、一撃で吹き飛ばすつもりで拳を振り抜く。


「近付けると思うな」


 巨大な拳が迫ってくる。

 土であろうと、その質量は脅威的だ。無抵抗に攻撃を受ければ、脚への負担がかなりのものとなるだろう。


「【シンクロ】」


 “赫猛”を維持したまま、“湧沸”を使用する。

 目線は頭部に向けたままだが、“湧沸”は的確に拳――詳しく言えば手首を迎撃した。だが“湧沸”程度では、巨大な拳を破壊することは叶わない。


 しかし濡らすことに意義がある。再び行使した【シンクロ】で借りたのは、亀之助の“水弾”。そこそこのスピードで手首に着弾した“水弾”は、“湧沸”によって湿った部分に命中し、大きく抉り取った。

 手首という支えを失った拳は、その重量に引っ張られて、地面へと落ちる。落下スピードよりも、俺の移動スピードの方が速かったようで、巨大な土塊の下敷きになることは避けられた。


 好機。左腕は未だに健在だが、俺の迎撃には間に合わないだろう。そんな証拠のない確信を基に、思いっきり地面を踏み切った。ある程度の空中機動はできても、あのサイズの拳を避けることはできない。つまり迎撃が間に合えば、なすすべなく落とされる……賭けというわけだ。


「――ッ」


 左の拳が迫ってくる。

 タイミング的に五分五分だ。もし頭部を破壊できたとしても、拳の動きが止まらなければ、大きなダメージを喰らってしまう。それでも割のいい賭けだと思う――思いたい。


 土塊の重みが拳を襲う。手首よりもかなり固い。あまりに強く握り過ぎて、掌から血が垂れているにも拘らず、頭部は中々砕けない。


「はぁぁぁ!!」


 それでも突き出した拳を引くつもりはない。

 ヒビが入ったのが分かる。迫り来る土塊の拳が、天井に付けられた明かりを遮り、俺は影に覆われた。


「爆ぜろ!」


 仕方なく、内側でメラメラと燃えていたエネルギーを、少しめり込んでいる拳から、一気に放出した。内部で爆発を引き起こすと、想像通り、人型土塊の頭部が爆ぜた。しかし拳は変わらずに動いていた。


「チッ――」


 地面へと叩き落された。

 脳が酷く揺れ、思考が定まらない。復帰できるようになるまで、ブルーノとの戦いを、江梨子とロジャースに任せることになるが、身体は鈍っていないよな……。


 そんな希望的観測を胸に、江梨子とロジャースが立っていた場所を見上げる。


「ロジャース、お前が後衛でいいだろ?」


「……」


 つまり江梨子が前衛ってことか? 

 ただでさえ頭が働いていないのに、変な発言は止めてくれ。脳が処理できずに、オーバーヒートしてしまう……。



アメリカナンバー(ツー)の実力が明らかに!?


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