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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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223/294

第223話 覚悟と行動

 鼻が曲がるレベルの激臭が漂う地下にて、それはあった。

 真正面にある鉄格子の先、他の牢屋とは一線を画す頑丈度合い、確実に強者を封しているであろうそこには、一組の男女が目を瞑りながら座っていた。

 

 男の方は世界でも有数のボディービルダーと言われても違和感のない、鋼の筋肉を纏った巨漢。

 女の方は正反対。低い背に童顔、子供にしか見えない少女――江梨子。そんな正反対の二人が、隣り合って座っている光景は、とても異様な雰囲気を醸し出していた。


「遅かったな、悟」


「済まない、思ったよりも頑丈でな。それで、隣の人は?」


「……コイツはアメリカのナンバー(ツー)。アメリカにおけるダンジョン関連の海外部門を一手に引き受け、世界が変わった時に偶々日本に来ていた、ロジャースだ」


「……」


 ロジャースという男は、一切口を開かない。それどころか瞼すらも閉じたままだ。人見知りかと疑ってしまうが、海外部門を受け持っているということは、外向的な人のはず。目も口も開かないのは、何かしらの理由があるのだろう。


「それで、なぜそんな人と江梨子が捕まっているんだ?」


「ロジャースの理由は知らないが、私は周囲に人が多すぎて、抵抗できなかった。この枷のせいで、スキルも使えなくなったしな」


「これが原因か」


 言われて気づいたが、江梨子とロジャースの首には、どう足掻いても外せなさそうにない、頑丈そうな首輪が付けられている。話を聞くに、スキルを封印するか、無効化する力があるらしい。

 軽く触れてみる。


「【シンクロ】」


 確かにスキルが発動しない。だが【テイム】由来の従魔との繋がりが切れた感覚はないため、全てのスキルを使用不可にするわけではないのだろう。そして俺の身体にある、内なる火は変わらず燃え続けている。


 試しに、右手で首輪を握ったまま、左手に火を灯す。掌から炎が燃え出る。やはり俺のこの力は、スキル由来ではないのだな。


「――」


 俺が火を出した瞬間、ロジャースが目を見開いた。

 その目は、アルビノのような美しい瞳だった。だが肌の色や髪色的に、アルビノではないと思う。汚れてしまっているため、アルビノなのかもしれないが、その瞳からは不思議な力を感じる。


「……その力、魔物由来の物だな」


「確かに、ウチの従魔と同じ力だ。詳しい由来については、分からないけどな」


「それは魔物の魔力によって、生み出されている炎だ」


「……なぜそんなこと分かる?」


「この瞳は特別なんだ。スキルや魔物、魔道具などのダンジョン由来のものを全て見通すことができる」


 全てを見通す……首輪が付いた状態でも使えるということは、【テイム】と同じ類のスキルなのか、俺の炎と同じでスキル由来ではない力なのか……どちらにしても、敵にしたら厄介な力だ。


「……江梨子、早く抜け出すぞ。麗華やたぬ吉たちのことも探さなければならないからな」


「そこまでバラバラになってしまったのか……だが、そう簡単には抜け出せないだろう。この首輪を破壊するのは容易いことだが、壊した瞬間に、この地下の空間が吹き飛ぶ。他の囚人たちは勿論のこと、私たちだって危ういだろうな」


 爆弾か。スキルで人の域を超えても、死ぬときは簡単に死ぬ。明智が良い例だろう。いくら強いスキルを得ても、それで強靭な身体を得ても、人である以上は、死というのは簡単に訪れる。

 だから爆弾であろうと、甘く見ていては死んでしまう。それにダンジョン由来の物を見通せるロジャースが居て、その判断をしたということは、爆発イコール死。ということに違いないはずだ。


「どうするべきか……何か考えはあるんだろ? 江梨子ほどの奴が、この虚無に近い空間で、何も考えないわけがない」


「ある……が、私とロジャースだけが助かって、他の囚人たちは死ぬだろう」


「じゃあその作戦で行こう」


「……良いのか悟。ここで囚人たちを見殺しにするのは、必要のない犠牲かもしれない。何か最適解があって、死者を出すことなく、切り抜けられるかもしれない。ここでの選択は、きっと悟の心に残り続ける。それでも、見殺しという判断でいいのか?」


 江梨子の真剣な表情に、していた覚悟が揺らぐ。

 これれまでも人を切り捨てて来た。だが助けなかっただけで、直接無関係の人を殺したことはなかったかもしれない。直接殺すわけではないのかもしれないが、俺の判断で間接的に死ぬのであれば、俺が殺したも同然のことだ。


 他人の多数か、身内の少数……両方を救えるのが最善なのだろうが、今の俺たちにそんな余裕も、実力もない。救えるのはどちらかだけ……それも救えるとは限らない。


「ああ、覚悟は決めた」


「そうか……なら行うとするか」


 俺たちは破壊した扉を目指すため、階段を上っていく。

 ブルーノの部下を殺し切ったのか、理由は分からないが、敵の襲撃を受けることなく、階段を上り切ることができた。


「じゃあ同時に破壊すればいいんだな」


「……」


「頼むぞ、悟」


 江梨子とロジャースの首輪を軽く握る。

 【シンクロ】が使えなくなったが、身体の変化と共に強化された膂力は、変わらず残ったままだ。ゆっくりと力を籠めていく。

 ――ミシミシ

 もう少しで壊れる。そして地下に残っている囚人たちは、強力な爆弾によって、その命を散らすだろう。覚悟はできているが、かなり精神的に来るものがあるな。


「はっ!」


 握りつぶした。下から突き上げるような揺れと共に、爆弾の者と思われる熱が、俺たちの身体を襲った。



未だに動きを見せないブルーノ。その理由とは


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