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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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222/295

第222話 抜けた先

 厳重な扉。

 軽く押してみるが、鍵が掛かっているのか、単純に重たいのか、どちらでも構わないが、俺の膂力では開けられなさそうだった。


「無理矢理開けるしかないか」


 拳に火を灯し、扉に押し付ける。

 数秒ほど押し付けていると、扉の一部は赤くなっているため、柔らかくなっているだろうが、俺が熱を感じないのは自分で出した炎だけのため、形を変えることはできない。


「【シンクロ】」


 亀之助の水を生み出す力で、熱くなった扉に水をぶっかけた。

 それと同時に竜馬の風の力で、圧力を加える。熱せられていた金属に、水を掛けて急速に冷やすと、その過程で脆くなる――この性質を利用して、扉の一部分だけだが、破壊することに成功した。


 破壊の道筋が見えたわけだが、想像しているよりも扉は分厚く、想定以上の時間を要することが決まってしまった。その間も敵の襲撃が続くわけで、体力と時間を消耗することは必至。


 これで江梨子と合流できなかったら、だいぶ厳しい戦いになってしまうだろうな。ここで退いてしまえば、見える者も見えなくなってしまうため、退くという選択肢は残っていない。


「ふぅ……頑張るか」


 時間を掛け、少しずつ扉を削っていく。

 その間も背中側から襲ってくる敵は何人もいたが、最後の方は背中を向けたまま、【シンクロ】による“湧沸”で、的確に心臓を撃ち抜くことができるようになった。


 技術を磨くには最適の困難だったかもしれない。

 一番最初に扉を削った時よりも、自分由来の炎も、【シンクロ】由来の水も、かなり出力が上がっている。しかも想定していたよりも、体力の消耗も小さく、扉の破壊を諦めなくて良かったと思える。


 ――ビキッ


 強固で、俺の侵入を拒み続けていた扉が、遂に悲鳴を上げた。

 あと数秒もすれば、この扉は砕け散るだろう。気を引き締めておかないとならない。破壊した瞬間が、一番隙を晒す時。そこを狙われることを、初めから考えておかなければならない。


「“火拳”!」


 拳を振り抜く。

 その一撃がきっかけとなり、扉が弾けた。それと同時に内から放たれた弾丸が、頬を掠める。運が良かった。いくら肉体強度が上がっていようと、魔道具を使用した弾丸を耐えられるとは限らない。


「【シンクロ】」


 “赫猛”を使用して、一気に攻める。

 敵の数も、敵の強さも分からないが、ここに居ては弾丸によってハチの巣にされるだけだ。扉の崩壊によって発生した煙を抜け、目視できたのは三人。真横にも立たれていた場合は、もっと数が増えるだろうが、進むうえでの障害は三人だけだ。これなら何とかなる。


「どけっ!」


 拳を振り抜く。

 “赫猛”によって強化された膂力でのパンチは、大の大人を吹き飛ばす。一人が吹き飛んだ衝撃で、二人の照準がブレる。そんな好機を逃すほど、俺は甘い人間ではない。先刻までの苦行で磨かれた、“湧沸”で残った二人の心臓を貫く。


 研ぎ澄まされた感覚は、扉の真横に立っていた四人の存在にも気付いている。心臓を貫いた“湧沸”を、勢いそのままで真横の男たちへと向けた。


 貫く。立つ者が俺しか居なくなった頃には、透明だった“湧沸”の水は赤黒く染まっている。


「はぁはぁ……江梨子を探さなければ」


 水を支配下から外す。

 ただの自然物と化した赤黒い水は、重力に従って地面へと落ちる。

 その液体は地面に死を想起させるシミを作り出したはずだが、俺は目線を向けることもなく、前へと進む。江梨子の命が散る瞬間は、刻一刻と迫っているはずだからな。


 扉を潜ってから思ったことだが、外に比べてかなり暗い。そもそもこの監獄自体が密閉された空間のため、何処も外ではないというのが正しいのだが、それでも扉を潜る前までは、ある程度の明るさがあった。

 だがここはどうだ? 数メートル先が見えなくなる程度の明るさしかない。監獄と言われて、イメージするような場所になっている。


「……火は避けるべきか」


 ここまでの敵クラスであれば、よほどのことがない限り、撃退することが可能だ。だがブルーノとやらが何処に居るのかが分からない以上、警戒心はずっと強めておかなければならない。


「……」


 ――コツン……コツン……

 暗闇で足音が反響していると、なんだかホラー映画の導入のような雰囲気が漂うが、ホラーよりも数段緊張感のある場所だ。恐怖心はないけどな。


「――」


 人の声のようなものが、遠く、詳しく言えば下の方から聞こえて来た。暗くてあまり見えないが、前方に階段があるように思える。一歩踏み出す。階段だ。


 江梨子が居れば最高だが、もし居なかったとしても、レオン政権を倒すための仲間を手に入れられるのであれば、ここまで来た甲斐がある。


 コツコツと足音を鳴らしながら、階段を降りていく。

 階段は終わり、鼻が曲がるような刺激臭が襲ってきた。不衛生。そう表現するだけでは足りない。人が居るべきではない、最悪の環境と表現しても十分なほどの、悪環境だ。



なぜブルーノは出て来ないのか……


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