表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
216/294

第216話 コーヒー

「ふぅ」


 敵幹部の一人であろうペドロの追跡を撒いた俺は、新築の匂いを香らせる喫茶店にて、コーヒーをチビチビと飲んでいた。

 苦みの中にある深い味わいを楽しみながら、今後の動きについて、一人考えていた。


 数で圧倒的に勝っているレオン側に勝つためには、江梨子と麗華と合流することは必至。当然、たぬ吉たちとの合流が最優先事項だが、何度で言えば江梨子たちの方が難しいだろう。

 たぬ吉は魔物。それもヒト型ではないから、このような人しかいない場所では、かなり目立つ存在だ。


「マスター、美味いコーヒーだな」


「……」


 カウンター内でコップを磨いているマスターは、言葉ではなく首を振ることで応えて来た。それは何かを指す動きだったと思う。

 そんな思考をしたからだろう。自然と目線が、マスターが指したであろう方向へと向く。


 何かのビンがある。商品名が書かれているであろう物が巻かれているが、成分表らしき物がこちらを向いているため、それが何なのかは分からない。


 中身が見えている下部へと目線を移動する。黒い。天井から入る光が反射して、詳しくは見えないが、粉っぽくて黒いことだけは分かる。


「あっ」


 分かってしまった。

 あのビンに入っているのは、コーヒーの粉。つまり俺がカッコつけて美味いと言ったコーヒーは、インスタントコーヒーだ。


「――」


 恥ずかしい。あまりの恥ずかしさに、顔が茹蛸の如く赤くなっているのが、鏡を見なくても分かる。

 店長は気を使ってなのか、一切こちらを見なくなった。隠れている身からすれば、とてもありがたいことなんだが……何だろう、恥ずかしさで死んでしまいそうだ。


「……」


 落ち着いてきた。

 変わらず顔は朱に染まっているのだろうが、一般的な変化の範疇まで引いただろう。


 じゃあ今後の動きについて考えるとするか。残っていたコーヒーを一気に飲み干し、冷めてしまったであろうパンケーキに手を付ける。


 フワフワの生地をコーティングするようにかけられたメープルシロップは、程よい甘さで、口の中に残っているコーヒーの苦みを流してくれた。消耗し切った頭に糖分が染みわたり、冴えていくのが分かる。


「美味しかったよ」


 結局、何も思いつかなかったが、十分な収穫はあった。

 席から立ち上がり、店を後にしようとする。


「……小僧、勘定を忘れているぞ」


「悪いが、この要塞内においては無一文でね」


「なら別の対価を貰うぞ」


「支払えるものであれば、支払うよ」


「……お前が支払える価値のあるものは、その命だけだ」


 衝撃が髪をふわっと持ち上げる。

 それの発生元は、店長の刀と俺の拳がぶつかったことだ。最初から分かっていた。この店に入ったのは気まぐれだったが、入った瞬間からジロジロと観察されている感覚と、気を引き締めなければならないレベルの圧を感じていた。

 

 だから最初から今この時まで、一度も気を抜かずに食事を楽しんだ。そう食事は楽しめたし、インスタントコーヒーの件は本当に恥ずかしかった。


 そんなことを考えながら、一度飛び退いた。

 刀にぶつけた拳を確認するが、痣はあれど血は流れていない。最低限戦えることは判明した。あとは技量と所有スキルで勝敗が決まってくる。


「【シンクロ】」


 従魔たちとは、はぐれてしまったが、ゴン太と違って繋がりが切れたわけではない。そのため変わらず【シンクロ】を使うことができる。

 あっ――視界を借りれば、たぬ吉たちの位置が分かるかもしれない。まあここを切り抜けられなければ、関係のない話になってしまうし、頑張らないとな。


 【シンクロ】で借りたのは、毎度の如く悟空の“赫猛”。

 床が抜けるレベルの脚力で、地面を蹴る。そんな勢いで放つのは、シンプルなパンチ。火を纏って、“火拳”を放つ方が火力は高くなるが、後々のことを考えると、シンプルなパンチが最適解のはずだ。

 炸裂。かなりの速度で移動したはずだが、人の身体を殴った手応えはない。事実、殴れたのは刀のようだった。


「せっかくの店を、壊しやがって」


「うぐっ――」


 身体が宙に浮く。

 腹部へと蹴りが入ってしまう。


「ぶへっ――」


 顔に拳がめり込み、吹き飛んだ。

 壁を突き破ることはなかったが、大きな凹みが生まれている。


 口元に流れる血を拭い、立ち上がるが、一瞬ふらついてしまう。頭が揺らされたからであって、一過性のものだとは思うが、早めに終わらせるべきだな。


「『老いぼれは生き残りと思え』誰が言ったのかは覚えていないが、的確な表現だったな


「……最近の若者は、スキルに傾倒して、技術を磨く術を知らないようだ」


「生憎、俺は若者って歳じゃねぇよ!」


 再び店長の下へと駆ける。

 先刻と同じ轍は踏まない。そもそも拳と刀とでは、圧倒的に拳の方が不利だ。こちらが卑怯な手を使っても、非難を浴びることはないだろう。まあ、殺し合いをしている奴が何言ってんだ、と言われるかもしれないが、これは気分の問題だ。


 先刻と全く同じフォームで、全力で拳を振り抜いた。



某蝦夷金塊物語は、ほとんど知らず、複数人の囚人の皮に渡って、隠し場所が記されているということしか知りません。

なので、セリフの解釈違いがあっても、許してください。

これを機に読みます。


ブックマークと★★★★★をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ