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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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213/303

第213話 潜入! 皇居要塞

 “湧沸”に囚われ、地面に押し倒されているゴブリン暗殺者(アサシン)

 その瞳に理性は感じられず、「自分は野生の魔物である」ということを伝えているように思えた。しかしそれが、どうにも怪しく、疑わざるを得ない。


 暴れる。ジタバタと拘束から逃れようとしているが、背中に乗った悟空が、四肢以外を動かすことは許さない。短剣を取り上げ、嫌だったが身体を弄ったため、武器がないことは分かっている。魔法のような力を有しているのであれば別だが、この個体は有していないだろう。そう断言してもいい。


「どうしたものか……」


 殺すのは簡単だ。

 剣で首を刎ねれば良いだけのこと。しかし殺してしまった場合、得られたはずの情報が得られなくなってしまう。そもそも情報なんて存在していない可能性や、放置したことが災いして、俺たちに不利益をもたらす可能性だってあるため、どちらを選んでも損がある可能性が捨てきれないという、賭けに出なければならない。


 生かすという選択。俺は今後訪れる災いよりも、敵を知ることができる可能性に賭けた。これでこのゴブリン暗殺者が、天文学的確率を超えて、奇跡を引き起こした野生の魔物だった場合、全ての葛藤は無駄に終わってしまうが、そちらの方が良いのかもしれないな。


 普通のロープでゴブリン暗殺者の身体を縛り、お目付け役として悟空を付けた。近接戦闘に秀でている悟空であれば、もしもの時も安全だと考えてのことだ。


「要塞の監視に戻らないと――」


 ゴブリン暗殺者の方に向けていた目線を、再び要塞の方へと戻した。 

 変わっていた。何が変わったのかは分からない。しかしその光景に、酷く違和感を抱いてしまった。

 一度違和感を抱いてしまった以上、意識は違和感を探る方へと持っていかれてしまう。こうなっては、監視をすることもままならない。


「悟」


「江梨子、戻って来たか」


「ただいま」


 二人に異常を伝えようかと思っていたら、丁度いいところで江梨子が帰って来た。それに遅れて麗華も帰って来たため、非常時のために持たされている魔道具の一つである、使い捨てトランシーバーを使わずに済んだ。


 違和感のことは一度忘れよう。今考えるべきことは、江梨子と麗華が得て来た情報を基に、これからの潜入に向けての作戦を立てることだ。


「それで、監視の目が甘いところはあったのか?」


「いや、ないな。どこも同じ程度の監視が立っていた。とはいっても、実力者である雰囲気はなかったから、突破しようと思えばできるだろうな」


「こっちも同じ」


「そうか……」


 二人の情報から分かったことは、何処を攻めたとしても、攻略難易度にそこまでの違いはないということか。


「それで、悟の方は何かあったみたいだが?」


 江梨子が指さす先には、ロープによって縛られているゴブリン暗殺者が居る。暴れ疲れたのか、とても大人しく、俺たちの裁断を待っている様子だ。


「こいつは、ウチの従魔たちの警戒を掻い潜って、女のことを殺すわけではなく、人質に取ったんだ。そこが引っ掛かって、念のため捕えたって訳だ」


「なるほどな……これが敵による攻撃なのか、単なる野生の魔物なのかを、私たちが知る術は今のところ存在していないし、始末して良いんじゃないか?」


「……それもそうだな」


 抜剣。一度剣先を向けてみたが、一切抵抗がない。野生の魔物では考えられない行動で、さらなる疑念を深めることになったが、情報を得る術を持ち合わせていない事実は変わらないため、剣を振り抜いた。


 刎ねられた首が落ちる。命を刈り取られたというのに、その瞳には希望が見えた。穏やかな瞳は閉じられ、司令塔を失った身体はその場に崩れ落ちる。


「……」


 何とも言い難い空気が流れる。

 この気まずい沈黙は居心地が悪く、いい意味で空気の読めない人材を欲す。この場には最適の人物がいるはずだが、人質に取られてからは、殆ど口を開かなくなってしまったため、希望は薄いだろう。


 そんな気まずい沈黙を破ったのは、女の空気を読まない一言でも、魔物の襲撃による物でもなかった。


「なっ――」


 鼓膜を割らんばかりに響く爆発音。

 それの発生源は分かりやすいように、自己主張をしていた。皇居要塞内からモクモクと出ている黒煙。それは鍛冶による物でも、生活によって吐き出されている物でもないのは、誰が見ても明らかだ。


「……今がチャンスだと思うが」


「……同感」


「じゃあ行くか。悟空は、その女を頼む!」


「ゴリ!」


 一か八かの賭けに出た。

 得られる報酬は、潜入成功という大きな戦果。代わりに失敗した際の代償は、相手の警戒心を上げさせ、潜入難易度を酷く難しくしてしまうことだろう。


 門が見えて来た。人の気配はない。爆発の対処に、応援として駆り出されているのだろう。


 あと一歩。要塞内へと足を踏み入れた。

 刹那、鼻に火薬の臭いが香った。鼓膜が破れたのだろう。世界から音が消え、視界は真っ白に包まれた。



ようやく皇居編が始まったと言っても良いでしょう。


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