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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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207/301

第207話 絡みの一幕

 目の前が真っ暗になった。

 瓦礫に呑まれたからではない。この女が関節技を解いて、俺の目を塞いできたから、真っ暗になっただけだ。


 関節技を決めて来なくなった以上、俺が身動きを取らない理由はない。目を覆う女の手を掴む。俺や江梨子、麗華のような戦闘によって固くなった皮膚とは違い、とてもモッチリとしている手だ。キモイ表現だというのは分かっているが、思ってしまったことは仕方ないだろう。


 しかしいい感触だからと言って、ずっと掴み続けるわけにもいかない。意識がないとは思えない抵抗感を覚えるが、無理矢理目元から退かす。開けた視界には、倒壊したビルの残骸が転がっていた。


 そこに残骸が広がっているということは、無事に抜け出すことができたということ。安堵で身体から力が抜ける。悟空に抱えられているから、身体から力が抜けても、これといった問題が起こることはないが、あまりよろしいことではないだろう。


「ありがとな、悟空」


「ゴリ!」


 俺たちを抱える屈強な腕を撫でる。

 比べ物にならない太さ。そんな腕だからこそ、感じられる安心感。子の感想に他意はない。シンプルな感想に過ぎず、変な意味は一切含まれていない。


 倒壊したビルから脱出した俺たちは、江梨子や麗華の下へと向かう。

 起床してから少なくない時間が経過したはずだが、二人は起きているのだろうか。無理に起こすつもりはないが、そろそろ起きて来てもいい時間のはずだ。


 そんな予想をして帰って来てみたが、二人はまだ夢の中にいるようだ。これが半日ほど続けば、敵の状態異常を疑う必要があるが、まだ今の時間だと常識の範疇だろう。


「メシでも作るか」


「ゴリ!」


 俺の声が聞こえたのか、少し離れたところに居たタマたちも一斉に駆け寄ってくる。この一面だけを切り取ると、以前の日常が帰って来たのではないかと錯覚してしまうが、未だに俺の身体に張り付いている女が、それが仮初の日常であることを主張して来ていた。


 そして俺と女は、悟空にお姫様抱っこをされたままだ。これは俺が怠惰だからという訳では、断じてない。


「……悟空、この女ごと、俺のことを放り投げてくれ」


「ゴリ?」


「ああ、気にせず投げてくれ」


 願いは聞き入れられたようで、女と俺は絡み合ったまま、宙へと放り投げられた。自由落下。関節技を決められていなくても、身体を絡め捕られている以上、受け身を取るのは難しいだろう。


 流石に下敷きにするのは、良心が痛むため、下側に回る。

 叩きつけられた、と言っても重力によるものなので、そこまでのダメージはない。しかし女が受けた衝撃は、確かなものだったようで、驚いた様子で目を見開いていた。


「ここは何処、私は誰?」


「知らん。元からお前の名前なんか知らねぇ」


「……」


「……」


 女は急に黙った。

 自然と至近距離で見つめ合う形になった訳だが、こいつ相手に恋が芽生えることはない。確かに端正な顔立ちをしているが、中身が残念過ぎる。いくら容姿が良かろうと、中身がダメなら、宝の持ち腐れでしかない。


 これは俺の持論でしかなく、見た目一点で仲を深めた人のことに、とやかく言うつもりはない。そもそも他人の色恋沙汰なんて、一切興味を持てないだろ。


「……そろそろ解放してくれないか?」


「――っセクハラ!」


 今度は避けられた。

 何を避けられたのか説明せずとも、誰もが分かるはずだ。この女の得意武器……かどうかは知らないが、俺を一度KOへと追い込んだ、強烈なビンタ。それが空振った。肌を撫でた空気が、その威力を物語っている。


 しかしビンタを振り抜いたということは、俺を絡め捕っていた内の片手が空いたということだ。逃れるチャンスだと、身体を動かす。


 簡単に抜け出せたわけだが、女の顔はとても不満げだ。意味が分からない。こちらは関節技を掛けられて、囚われ続けた被害者だというのに、こちらが不満げになれど、そっちが不満げになるのは違うだろ。


「なんで不満げなんだよ」


「ビンタ避けないでよ」


「いや、避けるだろ。一回気絶している攻撃を避けない理由なんて、何処にも存在していないだろ」


「それでも……」


「これからメシを作るんだ。これ以上絡んでくるなよ。大人しくしていたら、お前の分も作ってやるから」


 返って来たのは感謝の言葉ではなく、疑惑の視線だ。

 言葉にはなっていないが、何となくそれが意味していることは分かる。お前みたいなのが料理なんてできるのか、という疑念だろう。

 確かに手の込んだ料理はできない。しかしこういった場面でこそ、輝きを放つキャンプ料理に関しては、そこら辺の人以上にできる自信はある。


「見てれば分かる」


 焚火を作る。自分で火を操れるようになったことで、簡単に焚き火を作れるようになった。スキルをこういう風に使うやつは、少数派だろうな。俺の場合はスキルによる力ではないが。



物語的には全く進んでいませんが、着実に要塞へと近付いてはいます。


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