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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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205/295

第205話 睡眠

 目が覚める。

 眼前に広がるのは、満天の星空。空を股に掛ける天の川は、感動を齎してくれる。ビンタによって気絶させられ事を忘れる程度には、感動していた……こんなことを考えている時点で、忘れられていないのだが……。


 横で座りながら眠っている江梨子と麗華。名前を知らないアイツのことを探してみたが、寝転がっている状態で見える場所には居ないようだ。

 二人のことを起こさないように、静かに上半身を起こしたが、微かな空気の揺らぎで二人は起きてしまった。


「起きたのか」


「どのくらい経ったんだ?」


「半日も経っていないだろう。ただのビンタで気絶するとは、情けないぞ悟」


「仕方ないだろ。いいところに当てられて、脳を揺らされたんだ。それに敵を前にしたら、あんなに油断することはない」


 子供の言い訳のようになってしまったが、事実あの時の俺は戦場では絶対にすることのない油断をしていた。それがアイツの雰囲気のせいなのか、俺自身に問題があったせいなのかは分からない。だがどちらにしても今後同じことを繰り返すことはないはずだ。


 それにしても上半身を起こしても、気絶した原因であるアイツの姿を捉えることができないとは……何処に居るんだ?


「あの女は何処に居るんだ?」


「あそこ」


 麗華が指さしたのは、少し離れたところで纏まって寝ているたぬ吉たちの方だ。確かにそこはたぬ吉たちの身体で、死角が生まれていたが、ウチの従魔がアイツのことを囲っているとは思えず、初めから除外していた。


 信じられない、という気持ちを胸に抱いたまま、立ち上がってたぬ吉たちの下へと向かう。

 そこで眠っている従魔たちは、皆大きな寝息を立てていて、ここが安全地帯なのだと錯覚してしまう平和具合だ。


「マジかよ」


 ウチの従魔たちは、あの女を囲い、守るような体勢で眠っていた。

 そして中央に居る女は、口元から涎を垂らし、服がぺらりとめくり上げてお腹を露出させ、ポリポリと尻を掻いている。


 おっさん。初見の感想は、見た目麗しい女性へ抱いたものとは、全く思えない感想だった。


「……おい、起きろ」


 尻を軽く蹴とばす。

 なんだかデジャヴを感じ、咄嗟に防御の構えを取ったが、ビンタが飛んでくることはなく、怯えた様子で周囲を見回す女の姿があるだけだ。


 ビンタが飛んで来ないことに拍子抜けしたが、本来ビンタというのはそう簡単に飛んでくるものではないため、既にこの女に毒されてしまっているのかもしれない。


「良く寝ていられるな。その腹を仕舞え」


「せ、セクハラっ!?」


「ちげぇよ。お前みたいな奴にセクハラなんてするか。それに親切に伝えてやっただろ。勘違いで糾弾するな」


「……ごめんなさい」


「……はぁ、不満げに謝罪されても、って言いたくなったが、まあいいだろう」


 謝罪は口にしたものの、その表からに謝るという気持ちは感じられず、あるのは、どうして自分が謝らなきゃいけないんだ、という不満の感情だけだった。


 まあコイツが素直に謝ってくるとは、端から思っていなかったため、特段ムカついたりすることはなく、スルーすることができた。


「朝まで進むのは止めるから、おやすみ」


「……なんで起こしたのォ!!?」


 背後で叫ぶ女のことは無視して、江梨子と麗華の下へと向かう。

 二人は先ほどまでと同じように、座ったままだ。俺も元々寝転がっていた場所に座ると、三人で向かい合うような形になる。


「明日から、また皇居を目指すわけだが、あの女はどうする? 俺が仲間にしておいてなんだが、あれは絶対に問題を起こす。それも最も重要な場面で、取り返しのつかない大きな問題をな」


「そんなことは私も分かっているが、連れて行くと決めた以上、何もなく切り捨てるのは、悟の信条的に許されないのだろう?」


「……まあな」


 俺たちとあの女は、制裁があるタイプの契約を結んだわけでも、血の盟約を誓ったわけでもなく、切ろうと思えば簡単に切れる関係でしかない。

 だから不利益があるからと、切り捨てることは簡単にできる。しかしそんなことをすれば、俺たちのことを駒としてとしか見てこなかった、あのクソみたいな会社の奴らと同じ穴の狢となってしまう。


「あの要塞内でどんな生活が送られているのかは分からないが、一般人であるあの女は、俺たちを隠すカモフラージュになってくれる……はずだ」


「……イカレてるから、目立つかもしれないがな」


「仕方ない。私たちよりも目立つことはない……はず」


「はぁ、仲間に引き入れた以上、あの女を切り捨てるつもりはない。これが共通認識でいいよな?」


「ああ」


「うん」


 一瞬、たぬ吉たちに囲まれている女の方へと目を向けたが、とても表現のしにくい寝姿をしていたため、直ぐに目を逸らした。

 見た目は人の魅力における一要素でしかないというのが、あの女を見ているとよくわかるな。


「じゃあ、おやすみ」


「ああ、おやすみ」


「おやすみ」


 俺たちは横になる。

 テントなんて張っていない。フワフワとしたマットレスを地面に敷き、隣り合って眠るだけだ。



たぬ吉たちはどうして直ぐに心を許したのでしょうか?


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