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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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204/294

第204話 デメリット

 名前の知らない人が仲間になったわけだが、空気は一気に好転した。彼女の天然さは、殺伐としていた俺たちに和やかな空気を齎し、何処か曇っていた気持ちが晴れたような気がする。


 しかし彼女の天然さはメリットだけでなく、大きなデメリットも齎していた。そのデメリットのせいで、俺たちは全力疾走するはめになっている。それも皇居方面ではなく、東北方面へと走っていた。


「はぁはぁ、なんで忠告されたのに、手を出すんだよ!」


「はぁはぁ、やるなよって言われたらやるでしょ!」


「はぁはぁ、冒険者のやるなよはフリじゃないんだよ! それでやるのは芸人だけで良いんだよ!!」


 俺や江梨子、麗華から再三忠告されたにも拘らず、この女は規格外の魔物の群れへと石をぶん投げやがった。全く意味が分からない。自分の命を賭けてまで、好奇心を満たそうとする人がいるなんて、全くの想定外だ。きっと大人より好奇心が旺盛であろう子供であっても、石を投げることなんてなかったはずなのに。


 しかし投げてしまった事実は変えられない。どこかで反転攻勢に出て、この追いかけられている状況を変えなければならないだろう。


「江梨子、どこで攻撃に移るんだ?」


「そうだな、あと十秒数えたところで止まろう」


「ああ、分かった」


「分かった」


「――」


 女は返事をすることすらできないほどに、体力を消耗している――やはり戦闘経験はないとみていいだろう。この疲労感が演技とは思えない。


「ゼロ」


 江梨子のカウントが終わるのと共に、俺たちは急停止し、振り返る。

 追いかけて来ていたのは、ブラックタイガーの群れだ。ブラックタイガーその名の通り、黒い虎の見た目をしている魔物であって、決してエビではない。


 鋭い爪と牙が脅威的であり、ダンジョンでも比較的に深い階層に生息している、らしい。これは江梨子から聞いた情報だ。俺が出会ったことのない魔物の情報を知っているわけがない。


「【シンクロ】」


「ポン!」


「カメ!」


 俺とたぬ吉、亀之助の三人で、巨大な水の塊を作り出した。

 シンプルな物量攻撃。そこまでのダメージにはならないだろうが、相手の動きを阻害するには十分な攻撃だろう。その証拠に、急には止まれなかった三体のブラックタイガーが、巨大な水の塊に身体を絡め捕られている。


 しかし数が多すぎて、数体の動きを停止させたところで、焼け石に水を掛けたに過ぎない。やるべきことは一気に数を減らすこと。それは俺の仕事ではなく、江梨子と麗華の仕事だ。


「“――”」


「“零冷”」


 数十体のブラックタイガーはコマ切れとなり、数十体のブラックタイガーは氷漬けになる。規格外の力は、何度見ても迫力があるな。

 ふと厄介な女が静かであることが気になり、隣へと目をやる。


「――」


 気絶してやがる。

 コイツのことが全く分からない。変なところで肝が据わっているのに、味方の攻撃には簡単に気絶する……コイツのことは一生理解できないかもしれないな。まあそれでも全然構わないが。


「残りは俺がやるか【シンクロ】」


 悟空の“赫猛”を借りた状態で地面を蹴り、跳躍する。

 宙から見下ろしてみた感じ、残っているブラックタイガーは大体二十体程度だろう。その程度の数であれば、俺の攻撃でも倒し切れるはずだ。


「“火拳”」


 拳に炎を纏う。

 そのまま落下と共に、地面へと振り下ろした。クレーターができあがる。押し付けられた炎は、抉れた地面を伝い、円状に広がっていく。その炎は、江梨子と麗華の攻撃から逃れ、生き残ることができていたブラックタイガーの身体を燃やし、その生に終わり(ピリオド)を打った


「失敗したな。起こしてからやるべきだった」


 あの女は俺のことを舐めている。

 ここで実力を見せつけておけば、ある程度は見直してくれたんだろうが、気絶したままで当然俺の攻撃は見ていない。


「はぁ、起きろ。戦いは終わったぞ」


「――っは」


「うぉっ、急に立ち上がるなよ」


 少しビックリしてしまった。

 言葉通り目の前に女の顔があるが、白い肌にクリッとした目、庇護欲を湧かせる可愛らしい顔は、あのイカレた先入観がなければ惚れていたのかもしれない。

 惚れていた、は言い過ぎかもしれないが、かなりモテたであろう顔をしているのに間違いはない。


「きゃぁぁ!!」


 一瞬分からなかった。

 悲鳴をあげた女は、俺の頬へと思いっ切りビンタをしてきて、一般人では絶対に到達できない衝撃が襲い、俺の身体は宙を舞っていた。


 脳が思いっきり揺らされたことで、意識が遠のいていく。ブラックアウトする視界には、江梨子と麗華によって制圧されている女の姿が映っていた。


 どうして俺は強くなっても、気絶する運命なんだ? そんな嘆きを頭に、俺の意識は完全に落とされた……。



本日はネタチックな話でした。


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