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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第203話 イカレた女性

「……」


「……」


 俺とちょっとおかしな女が黙ってから、数十秒の時が経過しただろう。こんな気まずい空間が形成されているにも拘らず、後ろに居る江梨子と麗華が介入して来る気配は、一向に見られない。


 俺が決めろってことなんだろうが、その場合は殺さない選択を採ることが濃厚だと、二人も分かっているはずだ。それでも介入して来ないってことは、二人もそれで納得してるのだろう。


「……戦力差が分かっていないようだから、教えておくが、俺の後ろに居る二人は、旧ダンジョン協会のトップと冒険者のトップだ。数週間前まではパンピーだったお前に、太刀打ちできるような相手ではない」


 虎の威を借りる狐のような発言になってしまったが、俺の知名度は限りなく低いから、仕方ないだろう。そもそも俺の実力は二人に劣っているから、あながち間違いでもないからな。


「……」


 黙っている。理解はしているんだろうが、生きるためには退くことはできない。そんな思考が頭を廻っているのだろう。こちらから手を差し出さなければ、彼女は俺たちに襲い掛かってくるか、他の実力者に殺されるか、餓死する。他にも未来は存在しているだろうが、どれも明るい未来とは言い難い。


「これは提案だが、俺たちと一緒に来るか?」


 この提案をする上で、俺たちにメリットはほぼない。

 彼女のスキルが持ちかどうかすら、分かっていない以上、メリットがある可能性もデメリットがある可能性も、どちらもあり得るが、そこを求めてこの提案をしたわけではないのだから、スキルの有無はそこまで関係ないだろう。あれば嬉しいってくらいだ。

 

 この提案をしてしまったのは、俺が、俺たちが彼女の庇護欲に敗北したのが原因であり、敗北者が不利益を被ってしまうのは当たり前のことだ。


「……」


 この女は何を考えているのだろうか。

 表情からは全く読み取れない。見つめ合っていると、なんだか笑えて来る。これはゲシュタルト崩壊を起こしているのか、変顔と思われないレベルの微量な変顔を行っているからなのか、どちらにしてもここで笑う訳にはいかない。


「……笑わないんですね」


「はっ?」


 こいつが何を言っているのか、俺には理解できなかった。

 いや、何となく言いたいことは分かるのだが、現実的にあり得なさ過ぎて、頭が理解しようとしていない。


「せっかく変顔をしたのに」


「……イカレてんのか」


 思っていたことが口から出てしまった。

 こいつはヤバい。イカレてる。あの掛かり付けの医者レベルでイカレてる。人を脅して、それが格上だと分かったにも拘らず、笑わせに掛かった。全く理解の及ばないイカレた人間だ。


「何か言いましたか?」


「いや、何も言っていないぞ」


 圧倒的に不利な立場に立っているはずなのに、会話の主導権を奪われてしまった。押しの強さは、出会ったばかりの頃の凜々花に勝るとも劣らない、といったところか。


「……なら良いですけど」


 完敗だ。

 いつの間にか形成が逆転してしまった。武力を行使すれば、簡単に引っくり返すことができる関係だが、それをしてしまえばただでさえ失いつつある倫理観が、完全に消え去ってしまうだろう。だからそのような野蛮な真似はできない。


 俺にできることは敗北を認め、ある程度の譲歩を行い、この女を納得させること。今後の展開を考えると、秩序は必要になってくる。


「それで、お前はどうするんだ」


「何がですか?」


「はぁ、俺たちと一緒に来るか、ここに残るかだ。本来であれば、包丁を向けて脅してきたお前を許すつもりはなかったが、特別に見逃してやる。で、どうするんだ?」


「当然、一緒に行きますよ。だってさっき自慢していたでしょ、後ろの二人はダンジョン協会と冒険者のトップだ、って」


「自慢じゃなくて、事実なんだが……まあいい。その実力者である俺たちに付いて来るってことは、それ相応の危険に晒される可能性もあるってことは分かっているのか?」


 イカレ具合と同時に、バカっぽさも感じていたから、ここはきちんと聞いておかないといけない。分かっていなかった時に、あとから色々と文句を言われても面倒だ。


「……分かってなかったけど、大丈夫。弱いけど、運だけはあるから」


「そ、そうか」


 運、か……こんな世の中になっても、運を信じるのか。

 確かにスキルの獲得は運に左右される……とは言い切れないにしても、運ではない可能性も切り捨てられない。だからこんな世の中になっても、運を信じる人は一定数いるだろう。


 しかし俺たちは信じていない。スキルを新たに手に入れられることを願っていては、勝てる戦いも勝てないため、必要なのは自分の手札で勝てる道筋を練ること。どちらかというと運には頼らない、と表現する方が正しいな。


「まあいい。江梨子、麗華もいいよな」


「私は構わないぞ」


「いいよ」


 新たな仲間が加わった。名前はまだ知らない。


 ――なんだか凜々花の時みたいだな。



新キャラでした! 名無しさんは悟たちにどのような影響を齎すのか!!?


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