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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第198話 皇居の要塞

 亀之助のお陰で濡れることなく、荒川を渡り切った俺たちは、皇居を目指して走った。


 そして目的の場所、皇居へと無事に辿り着いた。しかしそこにあったのは、【皇居ギルド】の跡地ではなく、立派に作り上げられた要塞だ。


「……江梨子、これは誰かの手に落ちたってことだよな」


「ああ。誰かは分からないが、冒険者をまとめた何者かが、要塞を作ったのだろう。敵か味方か……接触しない内は、分からない」


「……警戒はしてる」


 一番警戒心を強めているのは、麗華だろう。

 きっと一度攫われたことがトラウマになって、警戒を解くことができないのだろう。それが最適解なのか、間違った選択肢なのかは、結果がでるまで分からないだろうが、俺は麗華の行動を信じる。


「……ここはネームバリューがある麗華が接触するべきだろう」


「ダンジョン協会の総裁よりもか?」


「確かに名前だけに限って言えば、私のダンジョン協会“総裁”という役職は大きいだろう。しかし私は長らく表舞台に立っていなかったし、この見た目だ。まだ麗華の方が信頼度があるはずだ」


「……確かにな」


 慣れ過ぎて気付いていなかったが、江梨子の見た目は子供そのもので、社会的信頼度はないに等しいと言っても過言ではない見た目だ。そんな江梨子がダンジョン協会の“総裁”だと名乗っても、子供の戯言だと思われてしまうだろう。


 麗華に任せるのが最適だな。

 世界が変わっても、実力が大きく変わるわけではない。あの時は油断があったから攫われたが、今回の麗華は警戒度百パーセント。何かあるという心配はいらないな。


 麗華も頷いたため、俺たちはこの場に留まり、麗華が一人で要塞へと歩いて行った。


「こんな要塞を作るなんて、何人の冒険者を抱え込んでいるんだ?」


「分からないが、東京をメインに活動している冒険者の大半は呑み込んでいるだろうな。千葉を九十九組が纏めた影響で野良の冒険者が少なかったように、東京に入ってから野良の冒険者とは会わなかった。それが答えと言って良いだろう」


「なるほどな」


 東京都内をメインに活動している冒険者が何人居るのかは知らないが、数十数百で留まるわけないよな。数千、世界の変化後にスキルを得た人物もいれるとなると、数万規模に膨れ上がっていても可笑しくない。なんたって世界有数のメガシティ東京だからな。


 ――日差しが肌を照り付けているというのに、凍えるような冷気が肌を突き刺した。


 交渉は決裂したのだろう。理由は分からないが、麗華が武力行使に出た以上、穏便に事を進めることは不可能。戦って奪い取ることが最適解だ。


「待て、悟。私たちが行っても、相手を刺激するだけだ」


「いや、もう刺激とかの話じゃないだろ。現に麗華は武力を行使している。そんな状況で、刺激とか考えても無駄になるだけだ」


「確かに交渉は決裂したかもしれないが、今後を考えたら刺激はしない方が得策だと言っている」


 こんな言い合いは、何も生まないだろうから、するべきではない。

 それは分かっているが、麗華が一人で戦っているのに、自分たちは何もしないというのは、気持ち的に苦しいものがある。


「……」


「……」


 俺たちは黙ってしまった。相手が折れるのを待つ体制と言って良い。

 これが建設的な議論と言えるのかどうかと聞かれたら、建設的ではないと断定できる。しかし必ずしも建設的な議論が必要というわけではなく、たまには感情的に語り合うことも十分必要なことだと思っていた。


 ――ドンッ


 俺たちの間を何かが高速で通り過ぎ、地面に小さなクレーターを作った。当然、目線はそちらへと向く。煙がクレーターの作り主のことを覆い隠しているが、何となくそれの正体は分かっている。


 数秒の経過。自然と煙が晴れた。そこにあったのは、身体の至る所に霜と傷が付いている麗華の姿だ。


 麗華の敗北。それは俺たちの警戒度を一気に引き上げる要因となる。刺激とか甘いことは言っていられない、緊急事態。


「江梨子。未だに刺激とか言うか?」


「いいや。麗華が負けとまではいかずとも、吹き飛ばすことができる相手となると、手加減なんてしていられる余裕はない」


「あれ、“絶氷の薔薇姫”だけじゃないんだ」


 要塞の方から《《飛んできた》》男。

 そいつは宙に浮かびながら、新しいおもちゃを前にした、幼い無垢な子供のように笑っていた。


「君が【皇居ダンジョン】を制圧した人間か?」


「ずいぶん幼い見た目のようだけど、かなり強そうだね」


 奴は江梨子の見た目に騙されることなく、圧倒的な力を持っていることを見抜いた。麗華が吹き飛ばされた時点で分かっていたことだが、改めて油断できる相手ではないことが分かる。


「“絶氷の薔薇姫”にも提案したけど、俺の部下にならないかい? 君のように強くて、可愛らしい子は大歓迎だよ」


「ふっ、法を司る政府が倒れたからと言って、ロリコンは許されるわけではないぞ」


 ロリコン……自分で言っていて、悲しくないのか?


「悟、変なことは考えるな。私も自分で言っておいて、後悔している」


「悟……あんたが窪田悟か」


「――なんで俺の名前を知っているんだ」


 江梨子のことは知らずに、俺のことは知っている。幾つか理由は思いつくが、どれもポジティブな理由ではない。


「ウチの部下に、あんたを知る者がいて、色々聞いていたよ――消すべき存在だとね」


「――ッ!?」


 殴り飛ばされた。

 それを理解したのは、遥か遠くにあったビルにぶつかった時。それまではあまりに速いパンチに、殴られたことすら気付かず、どうして後ろへと進んでいるのだろうと思っていた。


「【シンクロ】」


 従魔たちとはかなり離れてしまったが、【シンクロ】を繋げることは容易なこと。視界を繋げたが、そこに男の姿はない。追ってきた!


 俺は咄嗟に剣を横に構え、防御の構えを取る。それは正解だったようで、再び姿を見せた男の拳を受け止めることができた。


「あれ? これを止めるんだ。でも意味はないよ」


 完璧に受け止めたというのに、腹部への衝撃と共に再び吹き飛ばされた。



皇居編のラスボス?がでてきました

一気にインフレが進んだ理由は、魔物が地上へと出てきたことによって、スキル保有者の母数が大きくなり、比例するように珍しくて強力なスキル持ちが増えたからです。


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