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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第197話 泉の女神

 固い。殴って最初に感じたことは、そんな普通なことだ。

 しかし倒せないほどの強度でもないな。とそんなことも思っていた。


「はぁぁ!!」


 そのまま拳を振り抜いた。

 魔物の巨体は後ろへと吹き飛び、川を干上がらさんばかりの水飛沫を発生させた。俺は舞った水飛沫と共に、川底へと落下する。


「【シンクロ】」


 川底へは、巨大なプールを引っくり返したのかと思うレベルの水が降り注ぐが、俺は一切濡れることなく川底に立ち続けた。


「……江梨子も大丈夫だったみたいだな」


 江梨子の姿も声も、情報として得ていないが、無事であることが分かる。凜々花のような【気配察知】スキルは所持していないが、江梨子が麗華たちと合流した気配がした。


 俺も合流するため、地面を蹴る。川が揺れた。そして俺が立っていた場所も、水中という元の状態へと戻る。


「大丈夫だったか、江梨子」


「ああ、距離を稼がれただけ、だ?」


 麗華と話している江梨子に話しかけたが、こちらを見た瞬間に言葉に詰まっていた。しかし言葉に詰まる理由が分からない。


 もしかして顔が汚れているとかか? 


 そう思って手で顔を拭ってみるが、これといって汚れているわけでもなかった。


「どうした江梨子、俺の顔に何かついているのか?」


「付いているというよりも、かなり変だぞ」


「変って……イケメンではない自覚はあるが、面と向かって顔が変って言われるのは傷つくぞ」


「そう言う変ではなく……ほら、鏡を見てみろ」


 江梨子が取り出した鏡。

 そこに映るのは、俺。位置関係的に俺のはずなのだが。


「……魔道具だったりしないのか?」


「正真正銘普通の鏡で、ここに映っているのは悟の顔だ」


 確かに顔立ちは似ている。

 しかし俺は生まれてこのかた、髪を染めたこともなければ、カラコンを付けたこともない。だというのに鏡に映っている俺であろう存在は、黒髪の中にゴン太の毛色のようなオレンジ色のメッシュが入っていて、左目もゴン太の毛色のようなオレンジ色に鳴っている。

 俺があまりにゴン太を好きすぎるあまり、身体がゴン太に近付いてしまったのか?


「……確かに変だ」


「そうだろう。ここに聖女が居れば、その様変わりの原因が分かるかもしれないが、私たちでは難しいだろうな」


「別にいいだろ。身体に不調があるどころか、過去一のコンディションだからな」


「……悟がそう言うのであれば、私から言うことはない。何か言いたそうだな、麗華」


「……悟はイケメンだよ」


「ああ、ありがとな」


 あまり空気が読めない麗華に気を遣われてしまった。あまりにも恥ずかし過ぎる。穴があれば入りたい。いや、穴を掘ってでも閉じこもりたい。


「なんだ。私も悟のことはイケメンだと思っているぞ」


「止めてくれ。同情されると、余計に辛くなる」


 江梨子にも気を遣わせてしまった。

 穴に入りたいどころか、埋まりたい。土に埋まって、そのまま自然へと還りたい気分だ。


「……俺の外見については、もういいだろ。俺たちの目標は、皇居の奪還だからな」


 無理矢理話を変えた。これ以上、顔について言及されると、俺のメンタルが爆散してしまいかねない。


「そうだな。私たちはこんなところで止まっているわけにはいかない。悟の顔がイケメンかどうかは、全て片付いてから話し合うとしよう」


「いや、もうしなくていいだろ」


「分かった」


「やめてね。麗華も返事しないでくれ」


 そんなツッコミをする俺を無視して、二人は進んで行ってしまう。橋が落ちているため、二人は亀之助を連れて行ってしまった。


 ここに残っているのは、俺と悟空だけだ。肩に悟空の巨腕が乗せられる。


「ゴリ」


「……」


 慰められた。従魔に慰められてしまった。

 

「大丈夫だ、悟空」


 心は痛いが、止まっているわけにもいかない。

 俺は悟空を連れて、川を渡る。海を割ったモーセの如く、俺が進む道に水は存在していない。


「それにしても、あんな魔物が居るダンジョンがこの辺りにあるのか? 東京のダンジョンは色々と調べたけど、あんな魔物は見たことがないな」


 江梨子に聞けば、何処の魔物か分かるのだろうが、少し離れているため、声は届かないだろう。


 それに全てのダンジョンでスタンピードが起きてから、そこそこの時間が経ったわけで、東京都内のダンジョンではない可能性だってあるだろうし、そこまで深く考える必要もないだろう。


「やはり亀之助の力は偉大だな」


「カメェ」


 対岸で待っていた江梨子は、亀之助のことを褒めながら、撫でまわしていた。微笑ましい光景。傷ついたメンタルが、少しだけ修復されたような気がする。


「そうだろ。ウチの亀之助はすごいからな」


「カメェ」


 俺は亀之助のことを抱き上げ、頭と甲羅を撫でる。

 何時ものように、他の従魔たちも頭を差し出してくるため、満遍なく撫でまわしてあげた。かなり時間を費やしてしまったが、後悔はしていない。



今は誰も気付いていませんが、悟の変化は筋肉などにも起きています。


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