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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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182/303

第182話 きっかけ

 意識が引き戻される。

 身体を蝕んでいた毒が消えたことは、起きて直ぐに分かった。その要因も何となく分かる。江梨子によって、無理矢理ポーションを流し込まれたのだろう。


 意識がブラックアウトする瞬間に感じた暖かさは、きっと江梨子の唇の熱。口移しで無理矢理飲まされなければ、震える身体は液体を受け付けなかったはずだ。


「……ありがとな、江梨子」


「気にするな。しかしこの霧は何とも厄介なものだ。私の風をものともせず、変わらず滞留している」


 俺と江梨子は風という繋がりがあるため、まともに話し合うことができているが、従魔たちの鳴き声は霧に遮られて、音としてしか伝わってこない。


 つまり物理的な繋がりを得なければ、この霧に包まれている状況では、話し合うことすらまともに出来ないということだ。


 そもそもこの状況すらも、俺が幻覚を見ているだけかもしれない。砂漠における蜃気楼は、人に希望を見せるのがテンプレみたいなものだからな。


 だが、俺は信じることしかできない。ここで疑い出したら、相手の思う壺でしかないからだ。


「……江梨子、たぬ吉たちの居場所は探れないか?」


「できないことはないが、敵の数が分からない以上、見分けるのに時間が掛かってしまうだろう。それに私の消耗も激しい」


「そうか……頼めるか?」


「ふっ、当たり前だろう。私は【先駆者】筆頭だからな」


 身体を包み込んでいた風が、地を這うように広がっていくのが分かる。俺が風を操っているわけではないのだが、風が何かに触れたということが、肌を伝って振動として伝わって来ていた。


 揺らぎ。形を確かめるように、触れた物体を包みに行っている。抵抗は見られない。それが動くはずがない瓦礫なのか、風に気付いていない無能な敵なのか、抵抗する必要のない味方なのか……まだ分かるはずがなかった。


 しかし俺の中には表現しようのない確信があった。今、風が触れているのは、ウチの従魔の一人である亀之助だと。


「江梨子、亀之助だ」


「了解だ」


 風が亀之助のことを完全に包み込む。そして宙へと持ち上げると、こちらへと引き寄せた。段々と近付いて来る。それが亀之助で合っているのか、敵なのか、ただの瓦礫なのか……近付いて来るにつれて不安が湧き上がって来る。


 霧の中でも視認できる距離まで、残り数メートル。

 霧を裂き、風に包まれたものが姿を見せる。それは強固な甲羅に身を守られていながら、その勇ましさに関しては誰にも負けないカメの魔物、亀之助だ。


「亀之助、大丈夫だったか?」


「カメェ」


 亀之助はこれといったダメージを負っていないようだ。

 これは朗報と言って良いだろう。しかし疑念を生み出すことでもあった。このヴェーヌによって生み出された霧は、何を最終目標としているのかという点だ。


 今のところ、敵の攻撃を受けたのは俺だけ。それも暗器による毒を与えるという、とても回りくどいものだ。

 あの状態の俺であれば、簡単に致命傷を与えられていたはずなのに、毒という回りくどい物を選んだせいで、生き残ったどころか、合流されてしまった。その選択をした理由が全く読めない。


 俺たちを全滅させることが目的ではないのか? しかしその場合は、何が目的となるんだ?


「はっ?」


 理解できない事態が起こった。

 霧が晴れて行く。亀之助を除いた従魔たちの姿も明らかになるが、全員が無事であるように見えた。詳しく聞き取りをしなければ、詳しいことは分からないだろうが、何となくダメージを負っていないと思える。根拠を挙げるとすれば、少し離れているところで慌てている九十九の姿だろうか。


「おい! どういうつもりだ、ヴェーヌ!! 霧が掛かっている間に、始末するんじゃないのか!!」


「ふっ、私がヒトの手助けなんてするわけないでしょう」


 九十九組は利用されたってことか。

 結局、ヴェーヌの目的は分からないままだな。


「ねぇ、窪田悟くん」


「――ッ!?」


 耳元で囁かれた。

 反射的に、剣を振り抜く。しかしそれは幻覚であり、そこにヴェーヌの姿はない。


「いきなり斬りかかってくるなんて、とっても残念ね」


 声は聞こえて来るが、これまで通り姿は見せていない。

 江梨子がしらみつぶしで風を広げれば、いつかはその姿を捉えることができるかもしれないが、体力の消耗を考えると、得策だとは思えない。


 ここは相手が退くのを待つことが、俺たちにとって最善の策なのかもしれない。


「直接君と会える日を、楽しみにしているよ」


 敵だというのに、その声は何処か優しいものだった。


「何が目的なんだ?」


 ヴェーヌの目的、ひいては豊臣の目的が分からなくなってしまった。



次回、九十九組との抗争が決着!?


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