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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第111話 アリとゾウ

 十二階層は柳生の神速に至る抜刀術によって、魔石が落ちるだけの階層へと様変わりした。まあ時間が経てば元のエレファントブルだらけの平原に戻るため、気にする必要なんて一切ないんだがな。


 魔物のいないダンジョンなど、だだっ広い空間でしかないため、簡単に十三階層へと繋がる階段まで辿り着くことができた。


「麗華、次の階層は何が出て来るんだ?」


「ブルエレファント」


「……エレファントブルじゃなくて?」


「そうブルエレファント」


 ブルエレファントか……この階層のエレファントブルが、ゾウに匹敵する体格を得た牛だったことから考えるに、牛の体格になったゾウってことか……それって弱体化していないか?

 そんな俺の考えを読み取ったのか、麗華はさらに言葉を続ける。


「悟が思っている通り、ブルエレファントは牛のサイズをしたゾウ。でも内に秘めたエネルギーは、エレファントブルの比ではないよ」


「なるほどな。小さくなった分、エネルギーが凝縮されているというわけか」


 そんなことを考えている内に、十三階層へと繋がる階段を抜ける。今までと変わらず目が光にやられ、慣れるのに数秒を要したが、その間に魔物が襲ってくることはなく、無事十三階層の光景を目にすることができた。


 十二階層とは違い、生息している魔物はそこまで大きくないため、広がる平原だけが目に入って来る。

 目を凝らしてよく見てみれば、俺の視力でも牛ほどのサイズをしたゾウの姿を認識することができたため、柳生を除いた【先駆者】たちも気付いているだろう。


「……そろそろ私も動いて良いか?」


 階段を降りて早々、そんな言葉を口にしたのは、これまで戦闘に参加して来なかった3メートル近い大剣を引き摺っているツノの生えた女だ。

 確認するような口調ではあるものの、有無を言わさない覇気がそこにはあった。ただエリザベスには通用していないようで、これまで通りの雰囲気を保ちながらも、彼女の行動を容認するようだ。


「では行くとするか」


 ツノの生えた女は、これまで引き摺り続けていた大剣を振り上げる。2メートル超の身体で、3メートル近い大剣を振り上げると、大きな影が出来上がっていた。


 しかし解せない。彼女は一歩前に出ただけで、未だにブルエレファントとの距離は大きく離れている。


「ふっ――」


 そのまま彼女は何もない空間へと、大剣を振り下ろした。

 空気が割れる。目で見えるはずがない空気が割れる瞬間を視認できる……それほど研ぎ澄まされた一撃が、何もない空間へと振り下ろされた。


 空気を割ったことで、風の流れに大きな変化が生まれる。

 不安定な空気の流れは、乱気流となってダンジョンをかき乱す。乱気流は人為的なハリケーンとなり、エリザベスが攻撃魔法として使っていたハリケーンと同規模の物が、ブルエレファントのことを呑み込みながら発生した。


「剣を一振りしただけで、ハリケーンを起こすのか……」


鬼道(きどう)さんは世界でもトップクラスの膂力を持っているから」


 麗華は彼女――鬼道のことを世界トップクラスの膂力の持ち主と言ったが、世界には同レベルの膂力を持っている人がいるのか。

 世界は広いということを思いつつも、世界クラスに足を踏み入れている日本人が居るということに、一種の誇らしさも感じていた。


 そんなことを考えている内に、異次元の膂力によって生み出されたハリケーンの勢いは萎んで行き、大量の魔石を地面に落として完全に無風となった。


「全くつまらない」


「三十二階層までは続くだろうな」


「はぁ」


 エリザベスの言葉に、鬼道はため息をつく。

 そこから数秒間に渡る無音の時間が続き、何か思いついたような明るい表情を浮かべた鬼道が口を開いた。


「三十二階層まで穴を開ければ良いんだ!」


「無理だろ。雪村のテンションが戻らない限り、ダンジョンに穴を開けられるだけの火力は出せない」


 二階層から十階層までのショートカットを可能にした“天翔雷轟(てんしょうらいごう)”。あれはダンジョンに入ったばかりで、テンションが高い状態だった雪村だから放つことができた大技のようで、ゴブリン軍隊との戦いで燃え尽きた状態では使うことができないようだ。


 テンションに左右されるのは、戦場においてよろしくないんだろうが、雪村ほどの圧倒的な力があればそこまで気にする必要はないんだろうな。


「開けずとも、江梨子の力があれば可能なはずだ」


「“転移”を使わせるつもりなのか」


 柳生が凄む。

 これまで出会ってきた魔物も重たい空気感を作り上げていた。しかし柳生が放つ空気は、比ではない。アリとゾウと表現しても大げさではないほど、重たい空気に包まれていた。


「あのことを忘れたとは言わせないぞ」


 柳生が出すのは重たい空気だけではなく、刀身すらも出さんとしている。抜刀が意味するのは、明確な殺意。歴戦の猛者である柳生の抜刀とは、そういうことだ。


 当然、俺や凜々花、まいちゃんが割って入ることはできない。これまでの戦いを見てきたことで、驚きは少なく済んだが、麗華ですら動けずにいた。


「私とやるつもりか」


「それはこちらのセリフだ、鬼道」


 鬼道から溢れる殺気も、柳生と同等……それ以上かもしれない。天井過ぎて、俺では比較のしようがない。



力持つ者は、我が強くなりがち……勝手に思っているだけなので、気にしないでください



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