第5話
「俺の名前は……ドラ子と呼べ、ここに残るって事はあんたがダンクか?」
カウンター越し、厨房に立つ俺にドラ子さん?が話しかけてくる。
あんな凄いことをやったのにどこからどう見ても子供だ、だけどその佇まいは妙に堂々として落ち着いている。
「そしてあれがイスカか」
ドラ子さんは客が出て行った店の中、皿の回収に奔走しているイスカを眺める。
「あの、話って一体……」
先程の光景を見た俺はつい目の前の少女に敬語を使ってしまう。
「ああ、簡単な話だ。イスカを迎えに来たんだ」
「えっ」
てっきりギルドから報告があると思っていたので、いきなりの言葉に驚いた。
「そっか、家族見つかったんだ……じゃああなたはギルドの方?」
「そうだ、ただ今回は大っぴらに動けなくてな。俺個人で動いてるんだ」
ん?ギルドを介してないってそんなことありえるのか。
「色々事情があってこういう形になったが、依頼は完了だ」
んん?なんだか怪しいな、ギルドの人間とは言ってるけど名前しか教えてもらってないしその名前もなんか変だ。
俺は疑いの目で少女を見ながら質問する。
「あの、この後イスカはどうなるんですか?」
「俺が責任持ってちゃんと家族の下に帰すぞ」
「……」
名前はドラ子。ギルドの人。それ以外に情報はない。逆に言えばこの程度、誰でも名乗れるって事だ。そう、例えばその辺の子供でも。
金貨で店を貸し切った理由は分からないが、この子今のところ非常に怪しい。
「あの、今の所、非常に怪しいんですが……どこかの貴族の子供の遊びかな?」
「だよなぁ……」
ドラ子さん自身も自分が怪しいのは分かっていたようで、頭を掻きながら同意する。
店長も今まで口は出してなかったけど、怪しく思ってたのか頷いている。
「いいか、あんまり大事にしたくないが、実は俺はウニルコットのギルドマスターだ」
「えっ、こんな子供が!?」
俺も店長も驚くが少女――ドラ子さんは真剣に話す。
「イスカは特殊な子でな、俺が自ら動くことになった。俺の正体に関しては後で一緒にギルドに行って確かめるといい。けどこの子のことは、本当に機密だ」
「うーん」
俺は判断に困り、店長を見る。けど店長も同じように困った顔で俺を見ていた。
「ギルドマスターねぇ……」
「それは後でちゃんと確認しよう、イスカ」
俺はイスカを呼び、ドラ子さんの前に立たせる。
「この子が家族の元まで連れて行ってくれるそうだよ、どうする?」
イスカはジトっとした目をさらに細めドラ子さんを見る。
けどやはり俺たちと同じく言葉だけでは判断ができないようだ。
「\:$%"#=~&^」
すると、いきなりドラ子さんはイスカも喋っていた謎言語でイスカに話しかける。
「!'"#><*;'」
イスカはドラ子さんの言葉に反応して、二人は謎言語で会話し始めた。
店長も俺も言葉の分からない会話に入れず、二人の会話を見てるしかなかった。
当然俺には聞き取れない、だけど緊張気味だったイスカの表情はだんだん和らいでいくのが分かった。
それからしばらく二人の会話は続いた。イスカも最初はおそるおそるだったが。今や笑顔で会話している。結構長い時間話しているけどまあ、イスカも初めて言葉が通じる人に会ったんだ、しばらく待ってみるか。
そして十数分後やっとドラ子さんがこっちに意識を向けてくれた。
「という訳だから俺たち行くわ」
「いや全く分からんのですけど……」
反射的に言葉が出てしまった。
いきなりの申し出に驚く暇もなく返す。会話の内容が全く分からないから訳もへったくれもない。
「今の内容を翻訳するのはめんどいな……まあこの子の事は極秘事項だしその辺も秘密って事で。さあギルドに確認と依頼完了の報告に行くぞ」
「はぁ……」
ギルドの機密と言われ渋々納得する。
一介の元初心者冒険者の俺がどう頑張ってもギルドの機密に触れられる訳ない。もし知ったからと言ってイスカに何ができるわけでもないし。ここは素直にギルドマスターに任せよう。
それからすぐに冒険者ギルドがあるダンジョンのロビーに行く。
受付も最初はドラ子さんを見て子供に対する反応をした。
けどドラ子さんが持つペンダントを受付嬢に見せた瞬間ペンダントが、眩い光をはなった。
ペンダントの機能なのか、ドラ子さん自身の力かは分からないが、その光はギルドマスターの証らしい。
それを見た瞬間ギルドの人たちの態度は豹変した。同時にギルド内の空気が一気に緊張に包まれる。
「ギギギ、ギルドマスターの証!初めて見ました……こんなダンジョンしかない街にどのようなご用件ですしょうか!?」
「こいつが受けてる迷子預かりの依頼、完了させて欲しいんだ。俺が責任を持って、家族の元へ送り届ける」
「はい!分かりました!ではダンクさんの依頼は完了、こちらが依頼完了の報酬になります」
俺は渡された報酬を受け取る、はて、迷子預かりの報酬にしては多いような。疑問に思ってると受付嬢が説明してくれる。
「一週間も預かってくれてましたからね、さすがに色々プラスされています。ありがとうございました」
思わぬ収入でちょっと得した気分だ。
「さて、これであの子の責任者は俺になったわけだが……あの子はかなりあの店に馴染んでたらしいな」
「イスカから聞いたんですか?もうすっかり大人気の看板娘なんですよ」
「そうか……そんなに馴染んでるならいきなり連れ帰るのも悪いな。よし、これでイスカにお別れパーティーをやってくれ。金は余ったら依頼料って事でお前さんにやるよ」
ドラ子さんは金貨一枚を俺に渡し言った。
「分かりました、ドラ子さん。何時くらいが都合がいいですか?」
一瞬ドラ子さんが驚いた顔をして答える。
「えっ、俺は行かないぞ?」
あれ、来ない?主催が?
「残念ながら俺はこれからイスカが帰るための準備とギルドの仕事で忙しい。主催は君って事にしておけ」
「わ、分かりました……」
仕事じゃ仕方ないか。
でも俺もイスカに情が湧いてたしな、正直お別れの機会をもらえたのはありがたい。
「イスカの家族の居場所はちょっと遠いからな、今夜にでも向かうつもりだ。だから夜、店が終わるころに迎えに行く」
「ええ!じゃあ早く伝えなきゃ」
「ああ、行け。あの子のこと頼んだぞ」
「はい!」
そうして俺はダッシュでbeautyに戻る事にした。
ご覧いただきありがとうございます。
本作は週三回くらいを目標に投稿していこうと思ってます。
曜日は金・土の他に一日不定期、時間は夜の投稿なります




