第64話
王都、東の門にて待機していた俺たちはついにヴェノムを目視する。
「あれがヴェノムか。結構デカいな」
遠目から見て五メートル程ってところか。
フォルムは結構でたらめで、大きな体に対して翼が小さい、あれで何で飛べているのか正直疑問だ。……ゲームでももうちょっと見た目どうにかならなかったのか?
ヴェノムが目視できる距離に来たことで城壁の上からバリスタと大砲が次々と発射される。
けれど飛び道具じゃその分厚い鱗にあまり効果はないようだ。
そしてついにヴェノムは城壁の近くまで来る、バリスタの弾は長いロープ付きの銛に変えられヴェノムに向けて発射された。
何本かは弾かれるがその内三本は皮膜など薄い部分に突き刺さり、ロープが俺たちが待機している所に垂れてくる。
「引っ張れぇ!」
誰かがそう叫ぶと、冒険者たちは皆ロープを掴んでヴェノムを引き落とそうとする。
大勢の冒険者の力もあってヴェノムは王都に入ることはなくそのまま顔面から城壁に衝突した。
「ぐおぉぉ!」
衝撃でヴェノムは叫ぶ。その後落ちたヴェノムに冒険者たちが群がって武器を突き立てる。
この戦力ならすぐに倒せると思った。けど冒険者たちがつけた傷から毒液が漏れ出した。
ヴェノムのそばにいる冒険者たちは一気に毒に冒されていく。
「ぐははは!俺は毒竜!お前たちが俺を傷つける程その毒は飛び散るぞ!」
そう言いながらヴェノムは大きな爪や尾で冒険者たちを薙ぎ払っていく。
毒とその巨体による攻撃に冒険者たちは次々と戦闘不能に陥ってしまう。
「あんなのどうやって倒すっていうんだ」
「触れないなら!勇者の雷!」
イスカは魔法を使う、ヴェノムは一瞬ひるむけどそこまでダメージがあるようには見えなかった。
「お前がヴラドをやった勇者だな」
四天王ヴェノムの口から貴族ヴラドの名前が出て、冒険者たちは動揺する。
「これ大丈夫ですかね……」
「今は目の前の出来事に集中しよう」
イスカはヴェノムに目をつけられたようだ。
その光景を見たラキさんはイスカが戦いやすいように誘導しようと提案する。
「奴がイスカちゃんに注目してる隙に俺たちで準備を整えよう。なるべく毒を出さず倒すにはあの細長い首を狙うのが一番だろう。あの銛についてるロープが使えそうだ」
「わかりました、そうイスカに伝えます」
俺は冒険者に混ざりさりげなくイスカの横に立って作戦を伝える。
「俺たちが何とか頭を下げさせる、その隙にあいつの首を狙ってくれ」
イスカは何も言わず頷いた。
俺とラキさんは早速準備を始める。
毒を食らった他の冒険者たちは後方でヒーラーたちが毒の影響を押さえてくれている。そのおかげで他の冒険者たちは毒を受けながらも何とか戦えてる状態だ。
でもヴェノムを傷つけても毒が撒かれるだけ、冒険者の攻撃は効いていないのか?
「有象無象め邪魔だ!」
ヴェノムはイスカしか目に入ってないようだ。俺とラキさんは冒険者に混ざってロープの位置に着く。
「勇者め!」
離れた所にいるイスカを攻撃しようとヴェノムは大きく体を伸ばす。
「今だ!」
俺とラキさんは近くにあったロープを互いに投げ渡し、それを力いっぱい引っ張る。
すると伸びた体が固定されてヴェノムの動きが鈍くなった。
「ぐっ……だがこれくらいなんだ!」
けど俺たち二人の力だけじゃ足りず体ごと引きずられてしまう。
「勇者!覚悟ぉ!」
その時、俺たちの行動を見ていた周りの冒険者たちがロープを引っ張るのを手伝ってくれた。
「野郎ども、引っ張れ!」
そしてヴェノムの身体は伸びた状態で完全に止まる。
「な、なんだ!離せ雑魚ども!」
「今だ!イスカ!」
イスカはヴェノムの目と鼻の先に立っていた、ロープで固定されたヴェノムは動くことができない。
イスカは剣を構えてヴェノムの首に狙いを定める。
「聖光斬り!」
「ぐおぉぉぉ!」
ヴェノムの首は切断され、大きな魔石を残し霧散して消えて行った。冒険者たちは勝利に湧き上がる。
そしてヴェノムを一刀で倒したイスカは本当に勇者だということが認知される。
まだ毒状態の冒険者たちも含め、周囲は勇者コールで盛り上がった。
それから俺たちは王都のギルドに呼ばれることになる。
「ヴラド伯爵の邸宅を調べると魔王に国の情報を送っていたことが判明しました。あなたたちの話では彼は四天王だと名乗ったとか」
俺たちがヴェノムを倒している間にギルドはヴラド伯爵のことを調べたのか。そこはゲームのおかげか仕事が早い。
「あなたたちは魔王四天王を全て倒した冒険者ということになります。まさに勇者と呼ばれるにふさわしい功績。という訳であなた達には最高の冒険者であるAランクの称号を与えます」
ランクが一気に二つも上がった。
「魔王の四天王はすべて倒されました、その上勇者の力を持つ者も現れて今が攻勢の時。我々ギルドは魔王を倒すため勇者であるあなたを全力でサポートします!」
ギルドの職員はイスカの手を掴んで興奮気味に言った。
「わたし達の目的も魔王討伐だし頼りにさせてもらいます」
こうしてギルドの本格的な支援も受けられるようになってついに魔王と戦うことになる。
ギルドがやってくれることは俺たちを魔王城まで送ってくれること、これでいつでも魔王城に乗り込める。
「じゃ、早速行ってみよう」
「えっこれから!?」
「大丈夫大丈夫、みんな強いし魔王城でもレベル上げくらいはできるよ」
俺には判断できる材料はない。経験者のイスカがそう言うならすぐに向かってもいいけど……ラキさんも少し迷ったように考えた後、頷いた。
「じゃあ行こう」
イスカの判断で俺たちはさっそく魔王城に向かうことになった。
それから、ギルドが用意した馬車に乗ったのだけれど五分もしない内に馬車の歩みは遅くなる。
何かあったのかと思い俺は馬車の窓から顔を出してみる。するとそこは見た事のない街が広がっていた。
「そんなに時間たってないのにもう違う街に。いったいどういう原理なんだ……」
「移動イベントなんてこんなものだよ。それよりここはたぶん最後の街、準備するなら最後のチャンスかも」
イスカは興味なさげに教えてくれる。まあイスカの武器は勇者の剣だから装備を整える必要ないしな。
「俺は武器を更新できないか見に行きたいですね」
「俺もポーションの補充したいな」
「じゃあ街でいったん止まりましょう」
馬を引くギルドの職員は気を利かせてこの街で一旦止まってくれることになった。
「ラキさんポーション使ってたんですね」
「君たちに付いて行くのに必須の物だよ」
そうだったのか、全然気づかなかった。ラキさんは見えない所で工夫してたんだな。
「けど、さすがにそろそろついて行くのがきつくなってる。ダンク君、邪魔なら俺は――」
「そんな訳!あっ……」
そう言いかけた瞬間、過去の自分の発言が蘇る。
『俺、このパーティを抜けるよ』そう言って俺は自ら一度冒険を止めている。
今のラキさんは過去の俺と同じ気持ちなんだ。あの時の俺はこんな顔をしていたんだなぁ。
「ダンク君?どうかしたか?」
「い、いえ……ただちょっと前俺も同じことを仲間に言っちゃったのを思い出して」
あの時みんなは引き留めてくれた、でも俺は自分のことだけで手いっぱいだった。
「これ、言われてる側も……きついですね」
「その話少し聞いても?」
「はい……」
俺は少しだけ自分がパーティを抜けた時のことを話す。
「……それで、俺は自分のパーティを抜けたのにこんな所にいるんですよ……」
「それであんな反応を……言われた側に立ってどうだ?」
即答は出来なかった。それと同時にドラ子さんの言葉が頭をよぎる。
「……仲間は絶対見捨てないって言葉が染みますね、仲間もよく言ってた言葉だし、俺だって同じ気持ちだったはずなんですけど……」
それでも仲間たちの助けを断って――。
「……だから、ラキさんは決して邪魔なんかじゃありませんよ」
「そうか……」
ラキさんは安心したように微笑んだ。
たぶんイグレたちも俺が抜ける時今の俺と同じ気持ちだったんだろうなぁ。
まさか引き留める側に回るなんて思ってもみなかった。
「俺としたことがちょっと詰まったからって弱気になってたようだ。それから、君の仲間たちも君を引き留めたという事はちゃんとパーティの力になってたんじゃないかな」
「ですね、他にやりたい事ができたって言ってパーティから抜けたけど、この件が終わったら俺仲間たちとまた話し合ってみようと思います」
「それがいい」
今はbeautyでお世話になっている、これからどうするかはまだ決められてないけど、俺は戻ったら仲間たちともう少し話し合おうと決めた。
それから俺たちは街での目的を果たすため必要な店に二人で向かった。
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