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迷子の塔  作者: banbe
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第63話

 四天王を倒した俺たちは再びギルドで表彰される。そして功績も認められて冒険者ランクも上がった。

 ギルド内は二体目の四天王が倒されたことで大いに賑わっている。


「これでCランクか、順調に進んでるな」

「さらにランクを上げるにはどうすればいいですか?」


 俺はギルドの受付に尋ねる。


「街でも月に一回審査してますが……すぐにとなると王都のギルド本部に行くのが早いですね」

「王都か……」

「じゃあさっそく向かおう」


 話を聞いていたイスカが提案する。


「早速ってもう夜だぞ?」

「でもいくら待っても朝にはならないと思うよ?たぶんこういうステージ」

「そ、そうなのか……?」

「だったらさっさと王都に向かってしまおう」


 ラキさんは受付から王都までの地図を貰って俺たちは夜の街を出る。

 それから道中、モンスターを倒しながら王都に向かった。

 夜のモンスターは昼のモンスターより強くなっていて、それを倒した俺たちのレベルもガンガン上がっていく。


「ふぅ、手ごたえがある敵ばっかりだ」

「俺は……もう結構限界……」


 街を出てから一時間程経った。ついに王都に到着する。

 守衛に冒険者の証を見せて門の中に入ると夜だというのに人通りは多く、通りには人々が活動できるよう明かりが灯っていた。


「ここが王都……都会って感じですね」

「とにかくギルドで休もうか……」


 疲れ果てているラキさんのためにまず最初にギルドを探す。

 ギルドはとても目立っていたのですぐ見つけることができた。さすが王都だ。

 俺たちはさっそく中に入って休憩することにする。

 ギルドの中はこれまでのギルドとは違い、クエストボードに貼りきれないクエスト、手配書や行方不明者の貼り紙などが壁一面に張られていた。


「はぁHPが回復した。さて、ここで実績を積めばランクが上がるって話だよな」

「王都のクエストはかなり多いですね。早速どんなのがあるか見てみますか」


 俺たちがクエストボードに向かおうとすると一人のギルド職員が近づいてくる。


「あなた達が四天王を倒したパーティですか?」

「そうですけど……」

「この王都に住んでいる伯爵様があなた達を呼んでます、至急伯爵の邸宅に向かってください」

「えぇ、俺たち来たばっかりなのに……」


 とはいえこれはストーリーなのだろう。俺たちは伯爵の屋敷の場所を聞いてそこに向かう。

 邸宅前、話が通ってたのか俺たちはすんなり屋敷の中へ入れて貰えた。

 そして客間に通された俺たちは既に部屋に座っていたマント姿の男、当主のヴラド伯爵と話すことになった。


「俺たちに用ってのはあんたか」


 相手が貴族だというのに、ラキさんは敬語も使わずタメ口で話す。


「相手は貴族ですよ……」

「ダンクよ、これはゲームだ。で、俺たちを呼んだ理由は?」

「はは、楽な喋り方でいい。率直に言う、私は四天王の一人ヴァンパイアのヴラドだ」

「なっ!?」


 突然のカミングアウトに俺たちは驚いて武器に手をかける。


「だが君達と戦う気はない。私はこのゲームの中を気に入ってるのだ。他の四天王とは違い君たちをここで倒して現実に復活するなんて野望も無い」

「それで?正体を明かして命乞いってところか?」


 その言葉を聞いて俺たちは警戒しながらも武器から手を放してヴラド伯爵の話を聞く。


「そう取ってもらっても構わない。君たちの目的はエンディングを見る事だろ?だったら私を無視して魔王を倒しに行くといい」

「魔王を売るのか?だったら魔王の居場所くらいは教えてもらえるんだろうな?」

「魔王はこの国の東に建っている魔王城にいる。残りの四天王はヴァンパイアの私と毒竜のヴェノムだけ。ヴェノムはどう動くかは知らんが魔王を倒してエンディングを見るまではもう一歩だ」

「……」


 ヴラド伯爵はあっさりと俺たちが知りたいことを教えてくれる。

 確かに俺たちはエンディングさえ見られればいいから、こいつとは無理に戦わなくてもいいのか?

 俺は安堵しそうになるけど、イスカもラキさんも武器に手をかけたままだった。


「そんなに睨まないでくれ、私はこのゲームの中が気に入っているんだ」

「現実に戻れなくてもいいのか?」

「ここでも現実と変わらず過ごせるからね」


 ヴラド伯爵はお茶を一服しながら答えた。


「だが、あんたを倒さなきゃその魔王にも辿り着けないんじゃないか?」

「……」


 ラキさんの問いにヴラド伯爵は答えず部屋は静寂に包まれた。

 その静寂を破ったのはヴラド伯爵の笑い声。


「ふふふ、私がこのゲームの中で満足してるのは確かだよ。それでも戦うというのなら……お前たち!」


 客間にヴァンパイア化した使用人たちが入り込んできて襲い掛かってくる。


「こいつらは任せろ!二人は四天王を!」


 ラキさんは使用人たちを一手に引き受けてくれた。


「俺たちを騙そうとしたな!」

「言ったことはすべて真実さ!」


 俺はヴラド伯爵に剣を振るう、しかし伯爵の体は蝙蝠となり四方に飛び散ってしまう。


「勇者の雷!」


 その蝙蝠たちを逃がすまいとイスカは魔法を放った。全ての蝙蝠を巻き込んだ魔法によって伯爵はダメージを受けたようで再び元のヴァンパイアの形に戻る。


「くそっいきなり範囲魔法を放つとは……」

「せい!」


 俺は再び伯爵に剣を振るう。今度は蝙蝠になる事はなく影から出した先端の尖った細い剣で受け止める。


「どうやらここで決着をつけねばならないようだな、勇者一行!」


 伯爵はマントをはためかせて俺たちに剣を向けた。


「ホーリーガード!」


 伯爵の剣を弾いて俺とイスカは剣を振るう。


「ホーリースラッシュ!」

「聖光斬り!」


 けど俺たちの攻撃は再び蝙蝠になって躱された。


「無駄だよ!勇者の雷!」

「ぎゃあ!」


 この蝙蝠の中に本体がいるんだろうけど、俺には見分けがつかない。


「ど、どれだ……」

「ダンク!右!」


 魔力を見極められるイスカが方向を指示してくれた。

 そして右側に一匹、明らかに動きの違う蝙蝠が飛んでいた。


「本体はお前か!ホーリースラッシュ!」

「しまっ――」


 動きの良い蝙蝠を一刀両断する。すると他の蝙蝠たちは疎らになって窓から逃げ出した。


「クソ……こうなれば、ヴェノムをこの王都に呼んでやる。そうなれば王都は地獄と化すだろう……」


 伯爵は大きな魔法陣を展開させた後魔石となって消える。

 その瞬間ラキさんが相手にしていたヴァンパイアたちも灰となった。

 けど魔法陣は何かを知らせるように眩く光り出す。


「伯爵は倒したけど……これどうしましょう!」


 俺は光り続ける魔法陣に狼狽える。


「こうなったら……ギルドに行こう。なにかストーリーが進んでると思う」


 王都に毒竜が来るというのにイスカは冷静にゲームを進めようとする、王都が巻き込まれそうなのにそれでいいのか勇者。

 けど四天王の一人を倒したし、どっちみちこれから毒竜がくることを知らせなきゃならない。ギルドの支援は必要か。

 俺たちはイスカに賛成してすぐにギルドに戻る事にした。

 するとイスカの言う通りストーリーが進んだのか、既にギルドの人間が王都に毒竜が近づいていることを確認、緊急クエストを受け付けているところだった。


「ほらね、言った通り!」

「これ、貴族が四天王だったってこと伝えたらどうなるんだろう。貴族殺しの罪に問われないかな?」

「ゲームなんだしそのうちきっといい感じに伝わると思うよ」

「だといいけど……」


 イスカの言葉を信じ俺たちは緊急クエストを受ける。

 クエスト内容は東からやってくる四天王の空飛ぶ毒竜、ヴェノムの撃退か討伐だ。

 作戦はまず飛んでくるであろうヴェノムを王都を囲う城壁の上に設置してあるバリスタや大砲で弾幕を張る。

 その後、近づいてくるであろうヴェノムにバリスタで銛を撃ち込んで地面に引っ張り降ろしたところで冒険者たちがとどめをさすというもの。

 王都ということで、かなりの数の冒険者が集まった。

 その中には当然上位ランクの冒険者も多くいる。戦力はざっとライオネル戦の時の三倍はあるだろう。


「こんなに冒険者がいるなら余裕そうだ」

「どうかなぁ」


 イスカは俺の返事にいい反応はしなかった。経験者だからあんまり先が不安になるようなことは言わないで欲しいなぁ。

 それから集まった冒険者たちは王都東の出入り口に向かった。

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