第62話
俺たちはギルドのクエストボードの前でCランク用のクエストを探す。
「昨日調べたゴブリンの巣駆除があるな。せっかくだから俺はこのクエストを見届けたいな」
「となると森ですか。まあ森以外に効率的に実績積み重ねられる場所ないですからね」
それから俺たちはクエストボードに貼られていた確実に道中にいるであろうスライム五匹の討伐といつも貼り出されているハイポーションの材料の採取、ゴブリンの巣の駆除のクエストを受ける。
「フフフやっと新しい武器を試せる」
そんな俺のつぶやきにイスカとラキさんは呆れた顔をしていた。
それから街を出て森へ到着する、俺たちはそのまま昨日調べたゴブリンの巣へ向かった。ちなみにスライム五匹の討伐は既に終わらせてある。
「武器の調子は上々」
「今回は巣の駆除だからな、真正面から行って敵の全てを討伐だ。二人とも頼んだぞ」
「ヴィ!」
ゴブリンの巣入口、早速見張りのゴブリン達を倒す。
「どりゃ!」
「やぁ!」
ゴブリン自体のレベルは高くなく俺とイスカならすぐに討伐できる、けど問題は数だ。
見張りのゴブリンは笛を吹いて巣の中に俺たちの侵入を知らせる。おかげで巣からどんどんゴブリンが出てくる。
「このレベルの敵なら俺でも!」
俺たち三人は順調にゴブリンの数を減らしていった。
そして入口で戦い続けて数十分後――。
「ふう、終わったかな」
「楽勝!」
「いや俺は結構ギリギリだった……」
ゴブリンの増援はもう来ない、俺たちは松明を手にして巣の中に足を踏み入れた。
ゴブリンの巣の中は薄暗く色んな生物の骨が転がっていた。
昨日来た時はゴブリンの大雑把な数を数えるだけだったけど今度は全て討伐だ。途中で分かれている道まで隈なく探索する。
「昨日来たのはこの辺りまででしたね」
「ホブゴブリンがいたから引き返したんだよな。さてこの奥はどんな上級ゴブリンがいるんだ?」
それから奥にいたホブゴブリンも倒してついに最後の部屋へたどり着く。
「これが最後の部屋だ、これ見よがしに扉までついて……」
最奥の部屋にはラキさんの言う通り、黒く大きな扉があった。
「ボスって感じですね、じゃあ開けますよ」
盾を持ってる俺が先行して扉を開ける。中には玉座に座るゴブリンジェネラルとそれを取り囲むホブゴブリン、ゴブリンがいた。
「キタナ、ニンゲン!」
喋るゴブリン。この巣のボスは間違いなくこのゴブリンジェネラルだ。
「オマエタチ!ニンゲンヲコロセ!」
周囲のゴブリンが襲い掛かって来た、俺たちは武器を構え反撃する。
それから数分後――玉座に立って武器を掲げるイスカの姿があった。
「勝った!」
ラキさんは疲れて座り込んでいた。
「あー戦ったなぁ……」
「おかげでだいぶレベルが上がりました」
俺とイスカのレベルは既に40近い、けどラキさんのレベルの上り方は遅く33だった。
「やっぱり俺のレベルの上がりは遅いな。分かってたけど俺は戦闘に向いてない。このままじゃ足を引っ張ることになる、どうしたもんか……」
「後方からナイフ投げてくれて俺は助かってますけど」
「けど貢献度ってものがなぁ、うーん」
ラキさんはそのまま腕を組み考え込んでしまう。挑発のスキルも相まって力にはなってるんだけどなぁ。
それからハイポーションの材料を採取してそのまま街へ戻る、するとまたフラグが立ったのか街の人たちの会話が変わっていた。けど今度は魔王ではなく街の怪事件の話。
「話の内容が変わってるね」
「たぶんギルドで詳しいこと聞けるよ、行こ」
話の内容を気にしつつ俺たちはギルドに向かった。
「確認しました、こちらが今回の報酬です」
受付にクエストの完了を報告して報酬を貰う。けど前とは違い緊急クエストは解放されなかった。
その代わり街で起きている怪事件の話を聞く。
「なんでも街では今自分と全く同じ顔の人物が現れて襲われるっていう事件が多数起きてます、あなた達も気を付けて」
「それクエストにしないんですか?」
「何分詳細が一切分かってないので……どうすれば解決できるかも分からない状態ではクエストは出せませんし」
「そうですか」
俺たちはそのままクエストも受けず外に出た。
「緊急クエストは出ないけどフラグ?は立ってるんですよね。これからどうします?」
「事件は街で起こってる、街を歩いてみるか?」
「賛成!」
こうして俺たちは街の中を調べることになった。けどただ街中を歩いただけじゃ当然何も見つからない。
「何もありませんねぇ」
噴水のある街中央、気づけば日は沈み夕方になっていた。ゲームを始めてから陽が沈むほど時間が経っていないはずなので現実と時間の経過は違うんだろう。
街を探索するけど全く事件の手がかりがないので俺たちはベンチで休憩をしている所だった。
「自分と同じ顔の人間が現れて襲われるって事しか分からないもんなぁ」
街はどんどん暗くなっていき徐々に人が少なくなっていく。
「……見られているな」
突然ラキさんはそうつぶやく。俺には何も感じられなかった。
「誰にですか?」
「分からん、ただ強いことは確かだ。もしかしたらこの怪事件の犯人かもな」
「私達が見られてるなら囮になろうよ」
そうイスカは提案する。確かにこれが攻略に関することで俺たちが狙われてるなら都合がいい。
「だったら向こうから動いてもらうために人気のない場所に行くか」
俺たちは人気のない路地に移動する、するとすぐに俺にも分かる程の強い視線を感じた。
「これって釣れたって事ですかね」
「もしくは罠でも俺たちを倒す自信があるってことだな、少なくとも俺はこの視線の主に勝つ自信はない!」
自信満々に言われても……そんな会話をしてると突然辺りに衝撃が走る。
「なんだ!?」
目の前を見るとイスカが二人になっていた。
「イスカ!?」
「これが同じ人物が現れるという怪事件!」
「手に入れたぞ!勇者の力!」
そう叫んだ一人のイスカは剣を抜きもう一人のイスカに斬りかかる。もう一人のイスカもとっさに剣を抜き、二人のイスカは勇者の剣で鍔ぜり合う形になった。
「お前は誰だ!」
俺は襲い掛かって来た方のイスカに向かい剣を振る、けどいとも簡単に避けられてしまう。
「俺は四天王ドッペルゲンガー、勇者の力は手に入れた!食らえ!勇者の雷!」
ドッペルゲンガーは広範囲に雷を放った。
俺は咄嗟にイスカを守りながら盾で防御する。
「くっ、奴らの狙いは勇者であるイスカちゃんの力だったのか!」
「イスカの力は強力だ、真似されたら手に負えないかもしれない……とにかく戦いやすい場所へ!」
俺たちは狭い路地から大通りへ移動する。ドッペルゲンガーはそんな俺たちを逃がすまいと追って来た。
夕暮れ時の大通りは人影も疎らだったけどそれでも大通り、二人のイスカがいることは大勢が目撃することになる。
周囲の人たちは同じ顔の少女が戦ってることで今まさに怪事件が起きていることを理解したようだ。
徐々に人々は広場から逃げ始め戦う場が整っていく。
「よかった、みんな逃げて行く……」
「四天王なら倒すぞ」
ラキさんはナイフを構えて言う。
「けど……今の状態じゃどっちが本物のイスカなのか分かりません!」
剣で鍔ぜり合ってるイスカ二人は姿も声も全く一緒。それに派手に動くから俺は本物のイスカを見失っていた。
「姿も力もイスカそのもの、これじゃ迂闊には近づけませんよ!」
「大丈夫だよ!私達はパーティなんだから、鼓舞!」
本物であるイスカから声がした後パワーが送られてくる感じがする。
これはバフだ。能力が上がると同時にどこからバフが送られてくるのかが分かる。
「うおぉぉぉ」
「偽物はお前だ!ドッペルゲンガー!」
ラキさんはナイフを投げた後、俺はドッペルゲンガーと切り結ぶ。
「せい!やぁ!」
「くっ!こいつも強い!」
「わたしもいるんだから!」
俺の攻撃にイスカも参加して二人で剣を振るう。
「クソッ勇者の力は手に入れた!ここは一旦引く……勇者の雷!」
「うあっ」
至近距離から雷が放たれる。その瞬間ドッペルゲンガーは飛び上がった。
「逃がすか!」
だけどラキさんのナイフは空中のドッペルゲンガーを捉える。
「しまった!だが――!」
ナイフを食らったドッペルゲンガーは落ちてきたけど俺たちを近づかせまいと雷を放った。
それと同時にイスカも雷を放つ。
「勇者の……」
「雷ぃ!」
勇者の力が拮抗し互いの稲光がほとばしる。
「これ以上ダンジョンは上らせんぞ!冒険者共!」
ダンジョン?こいつも現実のことを言う、どういうことだ?
「お前たちはなんで俺たちのことを知っている!?」
「俺たちはこのゲームでお前たちを止めるために封じられたモンスターだ。お前たちを倒せば現実に復活できる!」
「なんだって……現実って、まさかダンジョン!?」
「俺たちは死に物狂いでお前達に食らいつくぞ!」
ドッペルゲンガーはさらに雷の威力を上げてイスカが押され出す。
「くっ!」
「イスカ!」
俺は雷を盾で防ぎながらドッペルゲンガーへ近づいた。
「くらえ!ホーリースラッシュ!」
俺の剣はドッペルゲンガーの持つ勇者の剣で防がれる。
「まだだ!この力と魔王様の力があれば俺たちは……!」
次の瞬間、俺の盾の陰から飛びだしたイスカが、ドッペルゲンガーの背後に回り込み剣を振った。
「聖光斬り!」
その剣がドッペルゲンガーの身体を一閃する。
「ぐふっ!すみません魔王様!」
そう言い残したドッペルゲンガーの体は魔石を残し霧散した。
「ダンジョンの攻略を阻むモンスターか……」
ドッペルゲンガーを倒したことで大通りには人が戻ってくる。俺たちは駆けつけたギルドの職員に状況を説明することになる。
事件の犯人が魔王の四天王だと判明し、事態は一気に大事になってしまった。
そうして俺たちは街のギルドに呼び出されることになった。
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