第65話
それから互いの用が終わって馬車に戻る。
イスカは俺とラキさんの雰囲気が変わったと何やら訝しんでいた。
「俺はポーションの補充完了だ」
「武器や防具は特に目ぼしいものがなかったよ」
馬車の中で待っていたイスカに成果を報告した後、また魔王城に向けて出発する。
また少し馬車に揺れるとついに到着したらしい。馬車を降りて俺たちが見たのは崖の先に見える魔王城。
馬車が止まった所はまだ少し魔王城と距離がある。
「ギルドが近づけるのはここまでです。後は皆さまにお任せしますね、では!」
そう言ってギルド職員は馬車に乗って早々に帰ってしまった。
「ありゃりゃ、帰っちゃったよ」
「これで後には引けなくなったって事ですかね」
「じゃあ行こうか」
相変わらずイスカを先頭に崖に建つ魔王城へ向かった。
「なんでこんな所に建ってるんだか、危ないじゃないか……」
俺は崖の縁に立って下を覗きながら呟く。
「雰囲気だと思うよ?」
するとイスカから返答が返って来た、そして内容はロクでもない理由だ。
そんなこんなで魔王城の入口まで到着する。
「じゃあ開けるよ」
イスカは巨大な扉に手をかける、しかし開いたのは人一人分の範囲だった。これしか開かないなら巨大な扉いらなかったのでは?
そう思いながらも中に入る、すると入口付近には多数のモンスターうごめいていた。
中には喋るモンスターも何体かいたけど、その言動はなんていうかはっちゃけている。
「ヒャッハー人間が入って来た!殺せ!」
俺たちは武器を構えてそれぞれ応戦する。
言動はアレだけどこいつらの力は本物、油断すればすぐやられてしまいそうだ。
それでも何とか入口付近のモンスターを全て倒す。
その後俺たちは小休憩を入れた後、魔王城を探索することにした。
当然至る所にモンスターがいてイスカが言った通りかなりのレベル上げになった。
でもそこは四天王を倒してきた俺たち、モンスターを倒し切るのに時間はかかったけど苦戦することはなかった。
そして大広間入口――。
「自分の城がこんなに侵攻されてるのに何で魔王は出て来ないんだろう……」
「ダンク、ゲームにあんまりリアリティを求めちゃいけない」
「……なんか納得いかないなぁ」
俺はゲームというものを未だ掴めずに首を傾げた。
そしていよいよイスカは大広間の扉を開ける。
すると広い部屋の一番奥にはマントを羽織った大きな角のある魔王が一人椅子に座っていた。
いかにも魔王って感じの魔王だ。
「勇者よ、よくぞここまで来た……そして俺はこの時を待っていた!お前たちプレイヤーを倒し俺は現実世界に復活する!」
魔王は立ち上がり何もない空間から剣を出す、そしてそれ以上特に喋ることはなく構えた。敵意をビンビンに感じる、既に魔王は戦う気満々のようだ。
俺たちもすぐに武器を構える、まず先手を打って斬りかかったのはイスカ。
手始めにイスカはお互いの力量を図るために勇者の剣を振った。
「やあ!」
「ふん!」
剣と剣がぶつかり合い火花が飛び散る。
「やはり勇者は強いな!」
「このまま押し切れそう……二人ともいくよ、鼓舞!」
イスカは戦いながらバフをかけてくれた。
俺たちもすぐに戦いに参加する、俺はイスカに並び魔王の剣を防ぎつつラキさんが後方から隙をついてナイフを投げた。
バフとこれまで培ったコンビネーションのおかげか徐々に魔王を押していく。
「はぁはぁ、これなら行ける!イスカ!」
手に汗握る攻防の末、俺は叫んだ。そして魔王はついに隙を見せる。
「隙あり!」
イスカが叫んだ瞬間、魔王はにやりと笑みを浮かべた。
「隙は、無い――魔王波動!」
「!」
一瞬周囲の空間が歪み何かに心を覗かれるような感覚に陥る。
「こ、これは?」
「魔王固有のスキルさ、この場にいる最強の存在、つまり勇者と同じ強さになる!」
イスカと同じ強さになるって事は……このまま押し切れなくなる!
「邪魔だ!雑魚ども!」
「うわっ!」
俺はガードの上から魔王の剣圧で簡単に吹っ飛ばされた。
「さあ!これで互角だ勇者!」
魔王とイスカ、二人の剣戟は時間が経つほど速度を増す。
「くっ……」
力が互角になると言っていたけど、突然の魔王パワーアップに怯んでイスカは押され始める。
「イスカ!」
「なら俺のナイフで!」
ラキさんは注意を引こうとナイフを構える。
「邪魔だ!魔王一閃!」
「危ない!」
ラキさんの前に立ち俺は魔王の攻撃を防ぐ。
一瞬こっちに気を取られたにも拘らず魔王は何もなかったかのように再びイスカと切り結ぶ。
「クソ、注意を引くことすらできないのか……」
ラキさんは自身の力のなさを嘆いた。
けどあのレベルなら俺も同じようなものだろう、でもイスカが徐々に押されてる、そうも言ってられない。
「うおぉぉぉ!」
俺は盾を構えてイスカと魔王の間に割り込んだ。
魔王の剣の威力は凄まじく、盾越しでも衝撃が全身に響く。
「ダンク!」
「防御は、任せろ……!」
さらに俺たちの後方からラキさんはナイフを投げた。これならだいぶ魔王に隙を作ることができるはずだ。
「無駄だ!魔王獄炎!」
俺たちは魔王の範囲攻撃で後ろに吹っ飛ばされる。
「ぐあっ」
「きゃ!」
「イスカ!」
何とかイスカを抱えて受け身を取るが、その圧倒的な力に俺はすぐに再び向かっていくことができなくなっていた。
「つ、強い……やっぱりまだ魔王と戦うのは無理だったんじゃ……」
俺のつぶやきをラキさんは否定する。
「いや、あの魔王波動のスキルがある限り、俺たちなら必ずイスカのレベルと戦うことになる」
「くっ……」
「とにかくここは、イスカちゃんを徹底的に援護するようにして――」
ラキさんが作戦を決めようとするとイスカは一言呟く。
「……勇者の魂を使おう」
勇者の魂、たしかイスカのステータスに載っていたスキルだ。
でも俺は詳しいことは分からない。だから俺はイスカを守るように盾を構えて魔王を警戒しながら尋ねた。
「一体どういうスキルなんだ?」
「ステータスとスキルが現実のものと同じになるスキルだよ……相手がレベルを変動させるならこっちも同じことをしようよ」
その説明を聞いて俺はラキさんと同時に頷いて瞬時に動く。
ラキさんがまず飛びだし俺はイスカの前に立った。
そしてイスカはスキルを発動させる。
「勇者の魂!」
スキルを発動させた瞬間ラキさんは魔王に斬り込んだ。
「ライトニングエッジ!」
「ぐぁ!」
魔王の胸に切り傷が刻まれる、だが――。
「ちっ!ナイフだから浅いか!」
「よくもこの俺に傷を!魔王獄炎!」
魔王はすぐに体勢を立て直して周囲に炎のスキルを放つ。ラキさんは瞬時に避け俺はイスカの前で盾を構えた。
「ブレイブガード!」
イスカに炎が当たらないよう現実のスキルでガードする。
その間にイスカは俺たちにバフをかけた。おかげでラキさんは魔王との戦いを優位に進める、けど武器がナイフなせいで決定打を与えられずにいた。
「ゲーム中のイスカちゃんは俺と同じくらい強いのかよ……この武器じゃ決定打が与えられない……!」
「お前はあの勇者よりほんの少し強いみたいだな。その力貰うぞ!」
だけどイスカは勇者の魂を解除して自ら魔王に突っ込んだ。
「なに!」
「これならどっちが強い状態か分からないでしょ!」
それからイスカは勇者の魂を発動、解除しながらラキさんと共に魔王を追い込んでいく。
「ぐおおおお!」
二人の攻撃を防ぎながら魔王は後退していく。
「いいぞ!これなら!」
「だ、だが片方は弱くなるのだろう!魔王獄炎!」
イスカが斬り込んだ瞬間、魔王の炎が辺りを包んだ。
その炎は魔王に斬りかかっていたイスカとラキさんを巻き込む。イスカは何とか防いだがレベルが下がっていたラキさんはモロに食らってしまう。
「うわぁ!」
「ラキさん!」
俺はポーションを持ってラキさんに駆け寄った。
何とか一撃死は免れたけど表示されているHPは19と表示されていて瀕死状態だった。
「まだ息があるか、魔王一閃!」
「させない!聖光斬り!」
「ちっ!」
魔王はよほどラキさんを危険と判断したのかイスカを無視して、攻撃を放つ。
だがイスカは攻撃で防いだ。
そんな中、俺はラキさんにポーションを飲ませる。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ……」
ラキさんへの追撃が失敗した瞬間魔王はイスカに向き合って再び剣戟を始めた。
見た限りでは戦況はイスカの方が優勢だ。
何とか動けるようになったラキさんは自分のポーションも幾つか消費するけど完全回復するには至らなかった。
「はぁはぁ、これで動けるようになった……あの勇者の魂を使えば押し切れるかもしれない」
「ダメですよ!完全回復していない今もう一度あれを食らったらラキさん死んじゃいます!プレイヤーが魔王に倒されるとあいつ現実に出現するんですよ!それに徐々にですがイスカが押してます、勝てますよ!」
「いや、あの魔王はまだ何か隠してる……あと一手必要だ」
「あと一手……?」
「だから俺が――」
俺はラキさんが口に出した作戦に息を飲んだ。
「それは……」
「ダンク君はイスカちゃんを支えてあげるんだ。頼んだぞ」
そう言ってラキさんは魔王に向かっていった。
そのまま魔王の背後を取る。
「挟み撃ちにしたつもりか……今のお前は弱いだろう!」
魔王はラキさんに斬りかかる。
「ラキさん!」
「イスカ!使うな!」
勇者の魂を使おうとしたイスカを制止して、ラキさんは二本のナイフで魔王の剣を止めた。
「お前は既に俺の挑発のスキルにかかっている!」
「なんだと!」
「だからここで俺を無視できないだろう」
「だが最初から狙いはお前だ!死ね!」
魔王は剣を押し付ける。
「イスカちゃん!隙を作るぞ!」
「ラキさん!?」
「俺の最大のスキルをくらえ――自爆!」
ラキさんの自爆により至近距離にいた魔王はダメージを食らう。
「くそっ……な、なんだと!」
「やぁぁ!」
イスカはラキさんの行動に驚いたが、その一瞬をつき魔王に斬り込んだ。
魔王は自爆でかなりのダメージを負った、これならあと少しで倒せるはずだ。
俺が勝ちを確信したその時、魔王はイスカの一刀を剣で止める。
「ふふふ、よく俺をここまで追い込んだ……だがいい事を教えてやろう」
魔王はイスカと鍔迫り合いながら不敵な笑みを浮かべ話す。
「勇者よ、俺とお前のスキル構成は同じ、故に俺にもバフはあるんだよ!スキル・孤絶!」
スキルを発動した魔王の身体は全身の筋肉が膨れ上がりどんどんイスカの剣を押し返していく。
「ははは!切り札は最後まで取っておくものだ!これで終わりだ!」
ラキさんの予想が当たってしまった。だから俺も剣を構え前に出る。
押し返されていくイスカの剣を支えるように、俺はイスカの剣に自分の剣を重ね合わせた。
「イスカもうちょっとだ!魔王はあれが切り札と言った、だったらこれをしのげば勝てるぞ!」
剣を合わせた瞬間、魔王の力強い圧が俺の全身を襲う、しかしここで負けるわけにはいかない。
「ダンク……うん、分かってる!いくよ!」
「うおぉぉぉぉ!」
俺とイスカ、二人の剣が交差して十字を作る。
「一人でダメなら……」
「二人で!」
その時、俺たちの目の前に合体攻撃可能の表示が現れた!
「イスカ!」
「うん!」
「「――光の十字斬りぃ!」」
合わさった剣が魔王の剣を押し返す。
「な、なにぃぃ!馬鹿なぁぁぁぁ!」
十字の光が魔王を貫いた。そして魔王の身体は足元から光に飲まれ消滅していった。
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面白かったら星5、ちょっと合わなかったら星1など、感じたままで大丈夫です
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