第60話
なんでも魔王四天王の一人が近くに姿を現したらしい、ギルドに着くまでの道中不安の声をいくつも聞いた。
「なんだか慌ただしいですね」
「物語が先に進んでるってことなんだろう」
そのまま街のギルドに入り受けたクエストの品とゴブリンの情報を納品する。
「はい、確認しました。ありがとうございます。こちらは報酬です」
クエストを三ついっぺんに受けたおかげで報酬はまとまった額になった。これでみんなの装備をランクアップできそうだ。
なんたって俺とラキさんの剣以外は、まだ全部初期装備だからな。
俺たちは次のクエストを見るためにクエストボードに向かった。すると受付の方から大きな声で招集がかかる。
「緊急クエストです!森に魔王の四天王の一人である獣王ライオネルが出現しました!全冒険者はこれに参加してください!」
内容を聞いた冒険者たちに動揺が広がる。だけど中には緊急クエストを喜ぶ冒険者もいた。
俺たちも攻略にかかわる事だろうから参加はしたいけど……内容が分からないのが不安だ。
「これ俺たちでも参加できるんだろうか」
「さっき冒険者になったばかりで参加は早くないです?」
そんなことを話していると、今まで見ていたクエストボードにライオネル討伐の内容が書かれた大きい紙が他のクエストを隠すように上から張られる、まるでこれ以外は現在受け付けていないと言わんばかりだ。
俺たちは内容を見る。
そこに書かれていた内容はまず全冒険者が参加可能とのこと。街には近づけないことが主目的で可能であればライオネルを討伐して欲しいと書かれていた。
冒険者の役割はランクによって分かれていてA~Bランクはライオネルと直接戦闘する班。C~Dランクは遠距離からの援護、最後にEランクは荷物運びなどの支援と書かれていた。
「っていうか森ってさっきまでいたのにいつの間に……」
「どっかでフラグが立ったんだね」
「じゃあ参加しますか、資格もありますし」
「だな、俺たちはみんなDランクだから援護か」
俺たちは受付で緊急クエストを受注した。
そして再び森へ移動する、するとそこには既に数多くの冒険者が集まっていた。
「森への道中は誰も居なかったのにもうこんなに集まってる……仕様とは言えなんか怖いな」
「NPCのワープはあるあるだよね」
だよねって言われても俺にはイスカの専門用語は一切理解できないよ……。
そんな話をしているとギルドの職員から号令がかかる。
「C、Dランクの人は遠距離からの援護をお願いします、遠距離攻撃の手段がない方にはギルドから弩を多数準備していますので使ってください」
そう言ってギルドは俺たち冒険者の前に荷車から箱に入れられた弩を下ろす。
俺とラキさんは弩を手に取る。
「あれ、イスカはいらないの?」
「私は魔法があるからね」
答えたイスカの顔はどこか得意げだ。
俺たちは弩を持って陣形を整える。情報では四天王ライオネルは森の奥から来るらしい。
ここに集まった冒険者は五十人にも満たない。見た限りでは俺たちC~Dの冒険者が一番多い。
作戦は、まずライオネルの姿が見えた所で俺たちが弩を一斉発射、その後13人いるA~Bの冒険者がライオネルと直接戦うという作戦だ。
ライオネルが森を抜けるまでに倒すか撤退させられれば俺たちの勝ちだ。
「四天王か、いったいどんな奴なんでしょうね」
「このくらいの人数でどうにかなるなら大したことはなさそうだけどな」
「動ける冒険者を総動員してこの人数って話でしたよ。だったら全然足りない可能性もあります」
「そうなのか?まあ直接見てやろうじゃないか俺たちの倒すべき相手を」
陣形について数分後、森の奥から多数の獣型モンスターを従えた三メートルはある巨大な二足歩行のライオン型モンスターが現れる。
「あれがライオネル……」
「CDランク撃てー!」
ギルドから発射指示が出る、冒険者たちはモンスター目掛けて弩の引き金を引いた。
「勇者の雷!」
弩の矢や魔法が一斉に発射される。
周囲のモンスターは矢の雨と魔法に次々と倒されていく。
だけど肝心のライオネルには全然通用していないように見える。
やがて弩を打ち尽くしあとはABランクの冒険者の出番だ。
「うおおおお!」
ABランクの冒険者たちは一斉にライオネルに武器を向ける。
「CDランクの冒険者は撃ち漏らした周囲のモンスターの相手をお願いします!」
ギルドから指示が出る。それにラキさんは喜んだ。
「俺たちも前に出られるのか、ライオネルの力を近くで見させてもらおう」
俺とラキさんは鉄の剣を手にして獣型のモンスターに斬りかかる。そうして横目でライオネルの戦いを観察した。
ライオネルの進撃は止まることなく一直線に何かを目指す。
「結構強いな」
「けどあれは……こっちに向かってきている!?」
そう、ライオネルはABランクの冒険者を相手にせず、一直線に俺たちの後衛を目指していた。
「この先にいるのはCDランクの魔法使いと……イスカ!?」
「なんだ?狙いはイスカちゃんか?ともかく止めなきゃな!」
俺たちはライオネルに立ち塞がるように前に出る。
「勇者の仲間か……その力見せてみろ!」
「勇者を認識している!?」
ラキさんは殴り飛ばされ俺の剣は爪で折られてしまう、俺たちにはその歩みを止める事は出来なかった。
「ぐあっ!」
「武器が!」
「大したことないな!次は勇者お前だ!」
俺たちの横を簡単に通り過ぎてライオネルはまっすぐイスカの元へ向かう。
「イスカ!逃げっ……」
言いかけて、止まる。
イスカは迫りくるライオネルに向かって剣を構えていた。
俺はハッと思い直す、このゲームでのイスカはただの子供じゃない。勇者だ。
だったらここは逃げるんじゃなくて、イスカと共にあのライオネルを倒さなくちゃいけないんだ!
周囲を見渡すと近くにさっきライオネルにやられたAかBランクの戦士が倒れていた。
「この盾と剣、借ります!」
俺は戦士の物であろう盾と剣を拾いイスカの元へ向かった。
「ずいぶん幼いな、勇者!ならばここで倒す!」
ライオネルは爪を立ててイスカに襲い掛かった。けどイスカは応戦する。
「やぁ!」
周囲に鋭い金属音が響いた。イスカの周りのCDランクの魔法使いたちは間近のライオネルを前に逃げ出す。
「ほう、やるじゃねえか勇者!」
「四天王は……倒す!」
「イスカ!俺もやるぞ!ホーリースラッシュ!」
俺はライオネルの後ろから斬りかかる、しかし振り向きざまその爪で止められてしまう。けど簡単に弾かれない。そればかりかこのまま押し込そうな気がする、これなら対抗できる!
「ちっ挟み撃ちか」
俺とイスカ、二人でライオネルの前後を取る。
「いけるか!イスカ!」
「ヴィ、そして多分これはシナリオ通り」
シナリオ通りってことは今の俺たちでもこいつを倒せるってことだ。こりゃ気合入れないとな。
俺たちは交互にライオネルに剣を振るう。だがライオネルはその爪で二人の剣を受け止め、その度に辺りに金属音が響いた。
「うざったいコンビネーションだな!」
「押せてる!これなら……イスカ同時に!」
「させるか!獣王咆哮!グオォォォォ!」
ライオネルの巨大な咆哮が周囲に響き衝撃を与える。
俺はとっさに盾を構えるけど音までは防御できない、咆哮を聞いた俺とイスカは一瞬ふらついてしまう。
「勇者!隙あり!」
「しまった!イスカ!」
「イスカちゃん!危ない!」
ラキさんは突如横から飛んできてライオネルに剣を突き立てる、しかし攻撃が浅いためか簡単に返り討ちに遭う。
「邪魔な!」
「ぐあっ、だが挑発は成功だ……俺が欲しかったのはこの一瞬!今だ二人とも!」
ラキさんの作ってくれた隙を逃す訳にはいかない!
「今度こそ!イスカ!」
「ヴィ!」
二人で息を合わせた瞬間、目の前に表示が現れた。
合体攻撃可能と書かれた表示に俺たちは迷いなく技を放つ。
「「光の両断剣!」」
ぴったり息の合った掛け声の後、ライオネルの体には横二本の線が入った。
「ぐあぁぁ!ゆ、勇者め……これ以上ダンジョンの先へは行かせない……」
ライオネルはそう言い残して滅び去った。ライオネルのいた後には大きな魔石だけが残されていた。
「はぁはぁ……ダンジョン?」
こうして突如発生した緊急クエストを俺たちはなんとかクリアすることができた。
「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下にある★★★★★から作品を応援していただけるとうれしいです。
面白かったら星5、ちょっと合わなかったら星1など、感じたままで大丈夫です
ブックマークもいただけると、とても励みになります。




