第58話
道中、本当にドラ子さんの棺桶が俺たちの後ろをついてきた。なんか棺桶がついてくるって怖いな。
そして到着したショシン村。
まず俺たちはラキさんの案内で教会へ向かった。そこでドラ子さんを生き返らせてもらう。
「はぁ……あー生き返ったら生き返ったで体がだるいな……」
ドラ子さんは生き返ったけど終始体の調子が悪そうだ。
「先生も生き返った事だしここからはまず三人は冒険者登録だな、早速ギルドに向かおう」
俺たちはギルドに行くため出口へ向かおうとする。途中ドラ子さんはゲームの住人に肩がぶつかった。そして再び――。
「ドラ子さぁぁん!」
生き返らせてもらった教会の中でドラ子さんは死んでしまった。
そして二度目の蘇生。
「すまん、こんな立て続けに死ぬとは……」
「教会がお金を取る施設じゃなくてよかったですね」
「そんなことしたら詰んじゃう人が出ちゃうからね」
そういうことか、イスカはゲームに詳しいんだな。
それから俺たちはこれまでにないくらい慎重に冒険者ギルドに向かい冒険者登録をする。
幸い現実のギルドシステムより簡略化されていて難なく手続きは終わった。
俺たちは今ギルド内の休憩スペースで作戦会議を行っていた。
「さて、俺が案内できるのはここまで。後は実践あるのみ」
「実践?」
「ズバリモンスターとの戦闘だな!まあもう既にダンク君は俺に近いレベルだしイスカちゃんに至っては俺より強い。俺は二人について行けばこのゲームをクリアできそうだ」
ここまで案内されといてなんだけどラキさん別パーティなのにいいのかなぁ。なんか自然と一緒に行動してるけど。
そんなことを思いながら、俺たちはさっそく戦闘をするためにギルドから依頼を受ける。
まずは初心者用のクエスト、スライム退治を受けた。
「スライムって不定形で結構厄介なモンスターなのに初心者向けなんですね」
「なんでなんだろうなぁ」
ゲームに疑問を浮かべつつ俺たちはクエストの地に向かった。
モンスターが出る所は大地のフィールドという名前らしい。見た限りでは奥に森が見える普通の草原だ。
俺が持ってる武器は初期装備の木の剣。
モンスターを倒したら出てくる魔石をギルドで換金すれば金が手に入るらしい。当面の目標はその金で装備を買うこととなった。
だけどイスカは勇者という事で最初から非常に強力な固有の武器、勇者の剣を持っていた。なんかうらやましいな。
ラキさんが持っているのは鉄の剣、俺たちは各々の武器でそれぞれスライムを退治していく。
「どりゃ!」
「やぁ!」
「ふん!」
俺たち三人は順調にスライムを倒して戦闘のコツを掴んでいく。
「け、剣が重い……」
けどドラ子さんは剣すらまともに持ち上げられず全身プルプルさせていた。
「やっぱりドラ子さんには無理なんじゃ……」
「はぁはぁ……こんなので心配されるなんて……屈辱……おわっ!」
「危ない!」
無理して剣を持ち上げようと力を込めたドラ子さんは、剣の重さに耐えられず後ろに倒れそうになる。
俺は何とか支えようと駆け寄るが……間に合わずまたドラ子さんは死んでしまった。
「ドラ子さーん!」
「くっそぉぉ!やってられっかぁこんなゲーム!」
ドラ子さんの棺桶から凄い圧が感じられた。
周りの風景に一瞬ノイズが入って甲高い機械音が鳴って思わず耳を塞ぐ。
「うわっ!」
そうしてドラ子さんの棺桶が跡形もなく消えてしまった。
「な、なんだ」
「やっぱりこうなると思った。何せ俺がやったんだからな」
ラキさんは冷静につぶやいた。俺がやったってまさか――。
『緊急事態が発生しました。一時ゲームを中断します』
どこからかオーちゃんの声が聞こえてきて目の前が真っ暗になる。気が付くと俺はベッドに横になっていた。
すぐさま俺はバーチャルゴーグルを外す。
隣では無残に破壊されたベッドと壊れて煙を上げているバーチャルゴーグルを外したドラ子さんが肘をつきながらイラついたように座っていた。
ベッドの下の床にはひびが入っており今にも底が抜けそうだ。
「ラキさん、ちょうどこの時イスカに会ったんですね」
「そうだよ」
肯定するラキさんはなぜか嬉しそうに答えた。
ドラ子さんが自分と同じ行動をとったのがうれしかったのだろうか。
「ああ、こんな短期間にベッドとバーチャルゴーグルが二つも壊れてしまった……全く困りますよ!」
オーちゃんは困ったように壊れた機材を片付け始める。
「悪い、我慢できなかった……俺にはこのゲーム向いてないようだ。オーちゃん、本当にすまん」
ドラ子さんは頭を掻きながら部屋の端にある椅子に向かいどさっと腰を掛ける。
手早くベッドを撤去し床を直したオーちゃんはドラ子さんに向き合う。
「ペナルティとして丸一日ゲームにアクセスを禁じます、頭を冷やしてください」
「……いや、俺はもういい。このゲームを降りるよ」
ドラ子さんのリタイヤ宣言にその場にいる誰もが驚愕する。
「ではあなたはこのゲームを脱落という事でよろしいですか?データは削除され再挑戦するにはもう一度ダンジョンを一から攻略してもらう必要がありますが」
「いいぞ、イスカとダンクがクリアできれば俺も上へ上れるんだろ?」
「はい、同じパーティなので」
「じゃあ問題ない」
なんてことだ。今まで一番頼りになったドラ子さんが一番最初に脱落してしまった。
その上ゲーム攻略も任されてしまったとなると俺たちの責任は重大だ。
「お待たせしました、では床が直ったのでゲームを再開します」
「ド、ドラ子さん……」
俺は椅子に座るドラ子さんを見る。
「正直あんなステータスじゃ俺は足手まといになる、二人ともあとは任せた」
「……」
ドラ子さんは口元こそ笑っていたがその表情は俺には悲しんでいるように見えた。
ゲーム攻略を任された俺たちは再びゲームに入る。
「……先生には悪いけど確かにあれじゃ足手まといになる」
後ろを向いて言うラキさんの表情は分からなかった。
「足手まといだから自分から抜けるなんて……仲間は見捨てないってドラ子さん言ってたのに……」
まるでこのパーティに入る前の俺を見ているようでもやもやする、これじゃ結局仲間を置いて行くのと同じじゃないか。
「そ、それはそうなんだが……」
ラキさんは自分から話を始めた手前否定できず困っているようだ。けどイスカは俺のつぶやきに反論する。
「違うよダンク、ドラ子さんは任せるって言ったんだよ!ドラ子さんを見捨てた訳じゃない、今も近くで私達を待ってるもん」
「そ、そうだな。先生は適材適所として君たちに後を任せたんだ」
ラキさんもイスカの言うことに慌ててフォローを入れる。
「だからゲームをクリアしてドラ子さんの期待に応えようよ」
どうやら俺は自分の境遇と重ねてナーバスになってたみたいだ。
ドラ子さんはダンジョン攻略をリタイアした訳じゃない、このギミックを俺たちに任せただけなんだ、現に今もそこで待ってくれている。
「そうだよな、置いて行くのと任せられるのは違う。今までドラ子さんにおんぶに抱っこだったんだ、せめてここは俺たちがクリアしよう」
「ヴィ!」
「うん、いいパーティだ」
それから俺たちはスライム退治の続きを再開する。
「そう言えばラキさんイスカの言葉分かるんですね」
俺はラキさんがイスカをフォローしていることに驚いていた。
「ゲームの中だからかな、ありがたい機能だよ」
このゲームの中に入れば言葉が自動的に通訳されるのは便利だな。
それからまとまった数のスライムを退治する。もうかなりこのゲームの戦闘は理解できた。
「だいぶ戦闘に慣れたな。後はスライムがドロップした魔石を回収してこれをギルドに渡せばクエストは完了だ」
「ゲームとはいえ体を動かす感覚は変わらないですね、職業の効果か現実より動きがいいかも」
俺は魔石を回収しながら腕を回す。
「君はそうなのか、俺は逆に思うように動けない。やっぱり現実の強さが枷になってるようだ。よし戦闘に慣れたならギルドに戻ろう、俺はまず冒険者ランクを上げるのがエンディングを見るのに必要なことだと思う」
なるほど、一理ある。イスカはこのゲームやったことがあるって言ってたし何か知らないだろうか?
「イスカはどう思う?」
「うーんこのゲームやったのは結構昔だからなぁ、そんなに難しくなかった気がするけど……ごめんね、あんまり覚えてないの」
「そっか」
ならラキさんの言う通りに動いてみるか。
俺たちはクエストを完了するためにギルドに戻った。
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