第57話
「さて、この馬鹿は帰ったらシメるとして……オーちゃんとやら、俺たちは具体的に何すりゃいいんだ?」
ドラ子さんはオートマタであるオーちゃんに改めて尋ねる。
「はい、ではまず一人ずつベッドについて下さい。それからこれ、バーチャルゴーグルを目に着けてもらいます」
オーちゃんが俺たちに渡したのは、ラキさんもさっきつけていたアイマスクみたいなもの。これを目に着ければいいのか。
ベッドはふかふかで長時間寝た体勢でも大丈夫なようになっていた。
俺はラキさんがやっていたようにベッドに寝転んでバーチャルゴーグルをつける。
すると目の前に光が現れる。
「眩しい!」
光に慣れると目の前に勇者物語と書かれた文字が浮かんでいた。
このベッドの機能だろうか、音楽も鳴っている。
「今回皆さんに挑戦してもらうゲームは勇者物語というゲームです。目標はさっき言った通りこのゲームのエンディングを見るのがクリア条件。リアルですがゲームなので実際に怪我したり命に関わることはありません」
どこからかオーちゃんの声が聞こえてくる。
「これやったことあるけどあんまり面白くなかったんだよねぇ……他のゲームやろうよー」
イスカが隣で愚痴を言っていた、経験者がいるのはありがたい。けどどうやらイスカはこのゲームあまり好きではないようだ。
「ダメです、イスカ様も今は冒険者。先へ行くならこのゲームをクリアして下さい」
「ちぇー」
イスカの提案はオーちゃんにきっぱりと拒否された。
そう言えばオーちゃんはイスカをここから先へ通さないんだな。自分の家なのに……。
「では皆さん準備が出来たのでゲームに同期します」
「同期?」
「ここからが空翼人の技術の核心です、いきますよ」
再び目の前が眩しく光る。
「うおぉぉぉ」
俺はつい声を上げてしまった。
光が収まり急に風を感じた、恐る恐る目を開ける。するとそこには草原が広がっていた。
ついさっきまでダンジョンのボス部屋でベッドの上で寝かせられていたはずだけど……。
それに服装まで変わってる、いつ着替えたんだ?
「ここは?はっ!みんなは……!?」
焦り始めると急に何もない空間からラキさんを含めた三人が現れた。
「あ、みんな!よかったぁ」
みんなと合流できて俺はホッとする。でもこの状況は一体……服装もさっきと違うし。
俺が不安に思っているとラキさんが説明してくれた。
「これが没入型映像体験ゲーム、勇者物語さ。俺たちの本当の身体は今もあのダンジョンのベッドに寝ている」
「映像!?ちゃんと体もありますよ!?」
「凄いよなぁ、俺も最初驚いた」
俺とラキさんが話していると、どこからともなくオーちゃんの声が聞こえてきた。
『皆さま聞こえますか?オートマタです。これから操作の説明をします。まずはステータスオープンと唱えれば各自ステータスが表示されます』
「ステータスオープン!」
俺たちはオーちゃんの言う通りに行動し各自ステータスを表示させた。
『この勇者物語の世界では現実世界のステータスが強く影響します。強い者は弱く、弱い者は強くという形で自動設定されます』
「そう、このせいで俺はこの階でずっと詰まってるんだ」
そう説明するラキさんのステータスを見てみると確かにあまり高くない。
[ネーム]ラキ
[レベル]31
[職業]遊び人
[スキル]挑発、自爆
むしろ低いと言っていいだろう。
「これでも頑張ってレベルを上げたんだ、けどロクなスキルがなくて正直これ以上進めなくて困ってたんだ」
「スキルが酷いですね……」
「そうなんだよ!だから君たちのスキルも見せてくれ」
ラキさんは次に俺のスキルを覗く。
[ネーム]ダンク
[レベル]28
[職業]パラディン
[スキル]ホーリーガード、ホーリースラッシュ
「つっよ……ダンク君って言ったか、俺このレベルまで結構時間かかったんだけどこれはせこくないか?」
「そんなこと言われても……」
「じゃあ次はお嬢ちゃん……イスカちゃんだな!」
次に俺たちはイスカのステータスを見る。
[ネーム]イスカ
[レベル]35
[職業]勇者
[スキル]勇者の魂、鼓舞、勇者の雷、聖光斬り、フェロフ・グレース
「いやもう勇者じゃん。このゲームイスカちゃんのためにあるようなものじゃん……」
そうか、現実だと俺はイスカのレベル追い越したままだったんだ。
「イスカちゃんとダンク君がいれば余裕でこのゲームクリアできそうだね……さて、次は俺よりもはるかに強い先生のステータスだ!いったいどんなスタートになるんだ?」
ウキウキの顔でラキさんはドラ子さんの方を見る。そういえばドラ子さんはずっと静かだったな
「はぁはぁ……みんなすまん、なんだか俺体調が悪いんだ」
そう言ってドラ子さんは倒れそうになるが何とか俺が支えた。
「だ、大丈夫ですか!?」
ドラ子さんの声が明らかにおかしい、額に汗がにじんでるし……。
俺はふと開きっぱなしだったドラ子さんのステータスを見る。
[ネーム]ドラ子
[レベル]1
[職業]病弱の少女
[スキル]病弱の呪い
いやこれ職業なのか?スキルもどう見てもマイナススキルだし。現実で強すぎるとこういうことになるのか……。
「ドラ子さん、体調が悪いのはゲームのスキルのせいです」
「そ、そうなのか……でもこんなんじゃ攻略もままならないな。だが現実の身体が大丈夫なら……」
体調不良がゲームの影響と分かったドラ子さんは気丈に立ち上がる。
「うーむ俺より強い先生はゲームだとマイナスステータスになるのか……てっきり俺と同じくらいと思っていたけど、こりゃ大変だぞ」
ラキさんはドラ子さんの惨状を見て呟いた。
『皆さんそれぞれステータスは確認しましたね、ではまずこの始まりの丘から道なりに進んでショシン村に進んでください。そこからいろいろな人から話を聞けばゲームを進めることができるはずです。私のチュートリアルはここで終了します、ご武運を』
それからオーちゃんの声は聞こえなくなった。
「じゃあまず言われた通りショシン村に向かおう。まずはそこで色んな準備だ行くぞ!」
現在このゲームを攻略中のラキさんは俺たちを導いてくれる。言われるまま俺たちはショシン村に向かおうとした。
最初の一歩を踏み出した俺たちだったが体調のせいかドラ子さんの足元がおぼつかない。
「大丈夫ですか」
「な、なんとか……あっ!」
その言葉とは裏腹にドラ子さんは足をもつれさせて転んでしまった。
ドラ子さんの身体と地面が当たった瞬間HPバーが現れて数値が0になる。そしてドラ子さんの身体は一変、棺桶に代わる。
「えっ!?ドラ子さん!?」
「あ、死んだ」
「メンバーが死んだらこうなるのか」
イスカとラキさんの経験者組は冷静だった。
「今転んだだけですよ!?」
「くっ、こりゃどうなってるんだ。体調悪いのは無くなったが、真っ暗だし身動きも取れない……」
棺桶の中からドラ子さんの声が聞こえる。そりゃ棺桶の中にいるならそうだろうな……。
というか普通にしゃべってるし。
「こ、これ、どうにかする方法あるんですか?」
俺はラキさんに尋ねる。
「たぶん村の教会へ行けば生き返らせられると聞いたことがある」
「じゃあすぐ行きましょう!」
俺は棺桶を持ち上げようとするが触れられず透き通ってしまう。
「これどうしましょう!」
「このままわたし達が進めば勝手についてくるよ」
「えぇ……そんなのでいいんだ」
経験者であるイスカもゲームの仕様を教えてくれる。ここはまず二人の指示を聞いた方がよさそうだな。
「じゃあ改めてショシン村とやらに行きますか」
「俺このまんまかよー」
ドラ子さんは棺桶の中で叫ぶが、今はどうにもできないみたいだし異様な光景だけどこのまま村へ行くしかなかった。
「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、下にある★★★★★から作品を応援していただけるとうれしいです。
面白かったら星5、ちょっと合わなかったら星1など、感じたままで大丈夫です
ブックマークもいただけると、とても励みになります。




