第51話
分かれ道まで戻ってきた俺たちは、まず行くべき道を決めようとしていた。
道は三つ、右と左、真ん中に分かれている。真ん中は俺たちが来た道だから行くなら右か左だ。
「俺は階段以外の勘はさっぱりだ、二人で決めてくれ」
唐突にドラ子さんにぶん投げられる。決めてくれって言われてもなぁ。
イスカも道を見ながら考えているようだ。
「イスカはどっちがいいとかあるか?」
「うーん分かんない」
当然俺にもさっぱりだ。でもここで悩み続けても仕方ない気がする。
「よし、じゃあこうしよう。俺とイスカでじゃんけんだ、俺が勝ったら右へ、イスカが勝ったら左へ進むんだ」
「おもしろそう!じゃあ、じゃんけん――」
結果は俺の勝ち、進路は右となった。
選んだ道をしばらく道なりに進むけどモンスターの気配は一切なし、けどいきなり開けた場所に出た。
「これは……モンスタートラップだ!戦闘準備!」
ドラ子さんが叫ぶと同時に俺たちが通って来た道が封鎖される、そして次々とモンスターが周りに現れた。
その中にはイスカがダンジョンから落ちて来た時に一緒に落ちて来た、クリスタルゴーレムの姿もあった。
「クリスタルゴーレムって、こんな高階層のモンスターだったんだ……」
「ダンク、イスカを守れ!」
俺はイスカの前に立ち鍋を構えて、ドラ子さんはモンスターに殴りかかった。
「さすがにこの階層のモンスターは硬いな……竜気!うらぁ!」
拳に竜気を纏ったドラ子さんは次々とモンスターを倒していく。
しかしそれでも数が多い、ドラ子さんが打ち漏らしたモンスターがこちらまでやって来る。だけどそのための俺だ。
やって来たのは所々鋼に覆われた一メートルはある大蟻、シルバーアント。後ろ脚だけで立ち前足と中足の四本で襲い掛かってくる。
「アタックガード!」
シルバーアントの突進を受け流し、そのままドラ子さんの方へ吹っ飛ばす。
するとシルバーアントはドラ子さんの激しい戦闘に巻き込まれ倒されていった。
その後も何体かのモンスターの攻撃を凌ぎ、やがて戦闘は終わった。
「ふう、さすがに手ごたえがあるな……さて宝箱っと」
ドラ子さんは出現した宝箱を漁る、もしかしてこの宝箱にパスワードが入ってるのかな?
「うーん、ハイポーション以外は入ってないな」
「これだけ?ってことはハズレってことですか?」
「みたいだな……」
同じように思っていたのかドラ子さんも残念そうに肩を落としていた。
見た限りこの道はここで行き止まり、たぶんパスワードは別の所なんだろうな。
「仕方ない、じゃあ戻ってさっきの道を左に行くか」
俺たちは再び通路を戻って分かれ道へと戻る。それから分かれている道を経由して最後の道へ向かった。
この道もモンスターは出現せず順調に進むことができた。
そして道の最奥、無造作に置かれた宝箱が一つポツンと置いてある部屋に出る。
「なんだか見るからに怪しいな……ミミックか?」
ドラ子さんは宝箱を軽く叩くが特に反応はない。
「問題ないようだな、じゃあ開けるぞ」
安全を確認したドラ子さんは宝箱を開ける、中に入っていたのは一枚の手の平サイズの紙。
紙を手に取ったドラ子さんは表裏を確認する。
「4915って書かれてるな、パスワードか。それ以外は何もなし」
俺も手に取って見てみるが本当にそれだけしか書いていない。
「あっさり手に入りましたねー」
「何もなさ過ぎて拍子抜けだな、とりあえず戻ってパスワードを入力しにいくか」
再び来た道を戻り今度は鉄の扉へ向かう、結局戻る道も順調ですぐに鉄の扉へ到達した。
そしてドラ子さんは早速端にあるボタンにパスワードを入力する。
すると大きく重そうな音を立てながら鉄の扉が開く。
「開いた!」
「この階層は一回寄り道しなきゃいけないってことか」
「そんなに大変じゃないし良いじゃないですか、俺はダンジョン攻略してるって感じがして好きですよ」
「まったく、俺たちはダンジョン攻略じゃなくてイスカを届けてる途中だぞ」
「分かってますって」
ドラ子さんは呆れながら言う、けど俺は正当にダンジョンを攻略している感じがして少し楽しさを覚えていた。
扉を潜りしばらく歩く、そして再び分かれ道に当たった。
今度も来た道を除けば進む道は三方向。
「またか、ここの正解ルートは……右だな」
「じゃあまず真ん中か左に行かなきゃですね」
さて、どっちが正解だろうか。
俺とドラ子さんが悩んでいると袖をイスカに引っ張られる。
「ダンク、じゃんけんしよ!」
イスカはさっきの道の決め方が気に入ったのか、楽しそうにじゃんけんをせがむ。
「お、やるかー。じゃあ勝った方の行く道を決めないとな」
「わたしが勝ったら左ね!」
「いいぞ、じゃんけん!」
「ぽん!」
俺の出した手はパー、イスカがチョキ。行く方向は左だ。
「やったー!勝った!」
イスカははしゃぐ、別に負けた所でどうってことないんだが……さてはイスカはさっきのじゃんけんで負けたのを悔しかったんだな?
それから俺たちは決めた通り左の道を行く、しばらく道なりに進むと少し開けた部屋に出て最奥には宝箱が見えた。
「お、これは当たりか?」
ドラ子さんは宝箱を開けて手の平サイズの紙を取り出して数字を読み上げる。
「2835、これで次の鉄の扉は開くだろうな」
間違いなくパスワードだ、二つ目の扉は順調に開きそうだな。
俺たちは来た道を戻り、最初にドラ子さんが正解と言った右の道に向かう。
そのまま道なりに進むと再び鉄の扉が現れた。
ドラ子さんはさっそくボタンがある扉の端に行く。
「パスワードを入力してください」
またもどこからか聞こえて来た声にドラ子さんは答える。
「今回は最初からパスワード持ってるぜ、2835っと」
言葉通りにボタンを押すと重そうな扉は音をたてながら開いた。
「文字通り第二関門突破ってところか」
「ギミックが分かれば結構早く攻略できそうですね」
「運も絡むけどな。さあこの調子でさっさと行くぞー」
それから俺たちは同じような鉄の扉を三つくぐる。
一度、モンスタートラップに入ってしまったけれど、二回はまっすぐパスワードが入った宝箱にたどり着いて歩みは順調と言って差し支えないだろう。
ちなみにじゃんけんも続いていて、現在三勝二敗で俺が負けている。まあ負けてるからってどうってことないけどな!
そして階段を上って92階、俺たちはまたもや分かれ道に直面していた。
「道の数が増えている……」
そう、分かれ道は進む方向が四本に増えていた。
「正解の道は左から二つ目だけど……」
「ドラ子さん!じゃんけん!」
イスカはウキウキでドラ子さんをじゃんけんに誘った。
「俺もかー、まあ行き先が三つだし仕方ないな。俺が勝ったら一番左だ」
「私が勝ったら右ね」
「じゃあ俺が勝ったら右から二つ目だな、じゃんけん――!」
勝ったのはドラ子さん、俺たちはその足で一番左の通路に向かう。
そして最奥の広間には宝箱が置いてあった。
「早速宝箱があったな、幸先が良い」
宝箱を開けたドラ子さんは紙を取り出し、紙を確認した。
「8934、パスワードだ」
それからドラ子さんの言う正解ルートをたどって鉄の扉を開ける。
この階も道自体は増えたがパスワードの仕掛けは変わらず、二回モンスタートラップを引いてしまったけど俺たちは無事階段を上がることが出来た。
93階、再び分かれ道。道は三本に戻っていた。
「今度は三方向か、左が正解だぞ」
ドラ子さんはそれだけ言う、後は俺とイスカに任せるってことだろう。
「じゃあ私が真ん中、今度は勝つよ!」
「いいぞ、じゃんけんぽん!」
俺は勝った!行き先は右に決定する。
「ぐぬぬ……」
イスカはやっぱり悔しそうな顔をする、正確に数えてる訳じゃないけど明らかにイスカの方が勝ち越してるんだから気にする必要ないと思うんだけどなぁ。
そして俺たちはドラ子さんを先頭に右の道に進む。
道なりに進むと少し開けた場所に出る。
だがそこには宝箱ではなくガーゴイルやスフィンクスなどのモンスターがいた。
「お、人間だ。ここにきて初めて会うな」
モンスターの第一声を聞き俺は驚く。
「モンスターが喋った!?」
ここにいるモンスターたちは思い思いの姿勢でくつろいでいて、とてもリラックスした様子だった。
そして一体のガーゴイルが俺たちの前に立ちふさがる。
「そりゃ俺たちだって喋る種くらいいるさ、あんたらは冒険者か?」
「そうだが?」
ドラ子さんは前に出て答える。
どうやら俺の耳飾りの影響とかではなく本当に喋っているようだ。
喋れる相手なら、少なくとも話し合いくらいはできるだろう。戦闘は回避できないかな?
「よし、じゃあ戦おうぜ!」
そんなこと思ってたけど俺が甘かった。
言葉は分かっても結局戦闘するのか……ずいぶん好戦的だな。
「お前らと戦う理由がない。俺らは引き返すから好きにやってくれ」
モンスターの言葉にドラ子さんは冷静に返す。
よかった、ドラ子さんもむやみやたらに戦闘するつもりはないみたいだ。
「さあ二人とも、もどろうぜ」
ドラ子さんは来た道を戻ろうと振り返るがガーゴイルはそれを止めた。
「待てよ、理由ならある、ここが当たりの部屋だ。パスワード知りたいだろ……?」




