第43話
しかしすぐにその歩みは止まることになる。
「ここもか……この階、反重力トラップだらけじゃないか……」
そう、どこを進んでもトラップで浮いてしまって先へ進めない状態だ。
階段や建物は奥に見えているのに、足止めをされている感じがして非常にもどかしい。
しかも今回は下の階と違いモンスターにもトラップが発動してるみたいでグロースフーンも浮いていた。
「俺一人ならどうにかなりそうなんだけどなぁ」
「例えばどうするんです?」
「浮いた後思い切りパンチを放つ、そしたらたぶん反動で反対方向に力が加わるだろうそれで向こうへ行けそうだな」
「だいぶ力技ですね……」
ドラ子さんのやり方じゃ俺たちは行けないだろうなぁ。
「まあ本当に俺一人だけの方法だな、もしイスカを背負いながらやったら、反動でダメージが行きそうだし」
「うーんどうしましょうか」
俺たちはトラップが起動して羽ばたきながら落ちるグロースフーンを眺めながら考える。
ん?待てよなんでグロースフーンはトラップから脱出できているんだ?
「ドラ子さん、グロースフーンがトラップに嵌っても脱出できてますよね?何でですか?」
「……そうか、反発してるのは重力だけで揚力はあるんだ。ダンク、羽ばたく翼があれば反重力トラップは進めるぞ!」
ドラ子さんの言ってる事はあんまり分からなかったけど、俺たちに翼がないことは知っている。
「俺たちに翼は生えてないですよ」
「……俺にはあるぞ、ドラゴンの姿に戻ればデカい翼がある。まあこんな狭いダンジョンの中で戻ったらダンジョンをぶっ壊してしまうからやらんが」
「じゃあダメじゃないですか」
「翼が生えてる奴はそこらへんにいるだろ?ダンク、ロープ貸せ」
「?」
ロープを持ったドラ子さんはちょっかいを出してこようとしている一羽のグロースフーンに目を付ける。
「あいつでいいか」
攻撃してきたグロースフーンの首にロープを投げて強引に引き寄せた。
「よし、捕まえた!」
「まさか……」
「こいつらの背中に乗って進むんだ!」
「やっぱり!またですか」
けどグロースフーンはおとなしく捕まってるはずはなく凄まじく暴れている。ドラ子さんはそれを無理やり威圧とロープで抑えつけた。
「こら暴れるな!」
威圧されながら首を引っ張られたグロースフーンは急に固まって大人しくなる。
「今だ!乗り込め!」
俺とイスカはドラ子さんの手を借りながらグロースフーンの背中に乗り込む。
「この鶏もふかふかだぁ」
ふかふかで、まるで天然の羽毛布団みたいだ。イスカはグロースフーンの上に寝転んだ。
「よし、みんな乗ったな。じゃあ進め!グロースフーン!」
ドラ子さんはロープを引っ張りまたがりながらグロースフーンを蹴る。
けどそんな行動で俺たちの乗るグロースフーンは動かない。
むしろドラ子さんが威圧したせいですっかり固まってしまってるみたいだ。
「あれ?これで行けると思ったのになぁ」
「馬じゃないんですから……怖がってますしまず威圧を止めてみたらどうです?」
「む?そうか……?」
ドラ子さんは威圧を抑える、するとグロースフーンはその場から逃げ出すように走り出した。
「コケェー!」
「うわっ!」
「ひゃぁ!」
「イスカ!」
いきなり走り出したグロースフーンから振り落とされないようにイスカを抱え込む。
そのままグロースフーンは反重力トラップの方へ向かってしまう。
「やばい、全員こいつに掴まれ!」
ドラ子さんが叫んだ瞬間、グロースフーンごと俺たちは宙に浮かんだ。
「くっ!」
「わぁ!」
グロースフーンは羽ばたき前へ進む、それに落とされないように俺は必死でイスカとしがみついた。
すると浮遊感は無くなり反重力のトラップを抜けたことが分かる。
けどグロースフーンはそのまま落下することはなく、その翼をはためかせた。
「飛んでる?いやこれは滑空か」
「わーすごーい!」
イスカは歓声をあげ、イスカの肩に乗るくーちゃんも飛んでる気分なのか翼を広げた。
「よし狙い通り!このまま階段まで飛んでいけ!」
ドラ子さんはロープを握りながらグロースフーンに命令する。しかし当のグロースフーンはそんな命令聞くわけもなくダンジョンの中間辺りに着地した。
「おい!行くのはあっちだって!」
それでもドラ子さんはロープを引っ張りながら何とか誘導しようとする。
「あの、グロースシャーフの時みたいに誘導の仕方とか知らないんですか?」
俺はたまらずドラ子さんに尋ねる。
「まあ、しいて言えば待つことだが……」
「待つ?」
「ああ、鶏は日が落ちる前に鶏小屋に戻る、恐らくあのデカい建物がそうだろうな」
ここから見える上がる階段の横には小さい建物と複数の大きな建物があった。
「じゃあそれまでこいつの背中で待つしかないと?」
「あの数の反重力トラップだ、多分それが一番早いんじゃないか?」
「えぇ!それって危なくないですか?」
どこにトラップがあるか分からない中、こいつの上で待つのはちょっと不安だ。
「こいつらは多分どこにトラップがあるか分かってると思うぞ」
ドラ子さんはそう言うと俺たちの乗るグロースフーンはある地点から助走をつけ走り始める。
「そら、次のトラップがくるぞ!掴まれ!」
その声と同時に俺とイスカはグロースフーンの羽毛に掴まった。
ドラ子さんの言う通り俺たちは宙に浮く、そして再びグロースフーンは羽ばたいて滑空した。
「なるほど、助走をつけ始めるとトラップが近くにあるって合図なんですね」
「多分な、それに他のグロースフーンはそわそわしている。そう時間を置かずに鶏小屋へ帰るさ」
そうして数十分後、数回のグロースフーンの滑空を経て鶏小屋に到着する。
グロースフーンから降りた俺は溜息をついた。
「はぁ……やっと着いた……」
「楽しかったねーくーちゃん」
俺とイスカの反応は真逆だった。
俺はぐったりしたけど、どうやらイスカにはあれが楽しかったらしい。タフだなぁ。
「全くあれくらいでへばるとは情けない、やっぱりイスカの方が冒険者は向いてるのかもな」
「俺もそう思います……」
俺たちは、ドラ子さんが周りのグロースフーンを威嚇してる間に鶏小屋を出た。
鶏小屋の敷地から上る階段と謎の建物には道がある。
下の階と同じ作りならあの建物まではトラップは無いはずだ。
「じゃあまずはあの謎の建物に入りましょう」
「謎って……もう大体何があるか予想出来てるだろ」
珍しく俺が先頭を歩く、そうして木造平屋の建物のドアを開けた。
そこにはグロースフーンの羽毛を使った商品の見本と――。
「卵だ!」
俺は大きく叫んだ。
ケースに入れられ並んでいたのはグロースフーンの鶏卵。グロースフーンがかなり大きいためその卵も抱える程でかかった。
さすがに大きすぎて卵は大きく鉄の箱に入らなかったのか、鉄の箱には卵が入ったケースを開ける鍵が売られていた。
「ドラ子さんドラ子さん!」
「……別に食料はまだあるんだろ?」
「ですがここで買えば食料を温存できますし、何より新鮮な食事はイスカが喜びます」
「しゃあねえな……ま、俺もその鍋で作る料理は好きだしな。いいぞ買ってやるよ、卵だけで良いのか?」
鶏肉の見本も置いてある。グロースシャーフの時も思ったけど、これは誰が用意しているんだろう。
疑問に思いながらもある物は使わせてもらう。
俺はドラ子さんに鶏肉と卵の購入をお願いした。




