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迷子の塔  作者: banbe
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第39話

 今日の晩御飯は鶏のコンフィ。密閉された瓶の中に火を通した鶏肉を油ごと入れてある保存食だ。

 これを瓶から取り出し再び焼き直す。

 残った油でパンを食べやすいサイズに切って炒めて、今日の晩飯は完成だ。


「改めて焼くだけでこんなに美味くなるとはなぁ」

「ウマー」


 多分ドラ子さんが美味いと感じてるのは俺の腕というより、ドラゴン族の鍋のおかげだろう。

 そうして俺たちは晩飯を満喫する。


「あっそろそろリジェネが切れる時間だ。治ってるかな」


 食べ終わるとイスカはハンカチの上で寝ていたモンスターを膝の上にのせて診る。


「ダンク、どう思う?」


 イスカに尋ねられてモンスターを診てみるがまだ包帯に血が滲んでいた。完治にはまだ時間がかかりそうだ。


「まだ包帯が必要そうだ、交換しなきゃだな」

「じゃあそれもわたしがやる、教えてー」

「おーけー」


 イスカはモンスターにリジェネレートをかける、それから俺は包帯の変え方をイスカに教えた。


「んと、これをこうして?」

「あとはここを止めるんだ」

「出来た!」


 まあちょっといびつだけど機能的には問題ないだろう、イスカによる包帯の巻き直しは完了した。

 その時モンスターが目を覚ます。


「起きた!ど、どうすればいいかな!?」


 イスカはモンスターが突然目覚めて慌てる。

 そんなイスカに反してモンスターは怪我しているせいか、暴れる様子は無く周囲を観察してるみたいだった。

 

「あ、暴れない……とりあえず飯やってみようか」


 俺は炒めたパンを食べやすいように細かくちぎってモンスターの前に置く。

 すると目の前に置かれたパンを見たモンスター、は恐る恐るつつくように食べ始めた。


「食べた、可愛いー」

「よかった、ご飯だと分かったみたいだな」


 与えたパンを全て平らげたモンスターは状況を把握したのかそのまま再び眠りにつく。


「なんかずいぶんおとなしいというか、人に慣れてるモンスターだな。もしかして助けてもらったことを理解してるのかな?」

「よーしそろそろ休むぞー今日の見張りは俺が先に休ませてもらうからな」


 俺が頭をひねってるとドラ子さんは手を叩きながら言う。


「いつもより早い気がしますが……」

「あのなぁ今日は色々あったし明日からも落とし穴を探る作業するんだぞ?」

「そうだった……わかりました、じゃあ俺は先に見張りをしておきますね」

「頼んだ」


 そう言うとドラ子さんは早々に仕度をして寝てしまった。

 一方イスカはというと――。


「♪~」


 まぶたが落ちるまでをずっとモンスターを眺めていた。



 翌日、ドラ子さんの声で俺たちは起こされる。


「おら―お前ら朝だぞー今日も張り切って行こう」

「もう朝か」

「ふぁー」


 イスカも大きな欠伸をする。

 壁の窓を見ると外からは青空が見えた。


「ダンジョン内でも空を見られるって新鮮ですね」 

「だな。さて、今日も頑張って落とし穴に落ちますか」


 ドラ子さんの言葉に苦笑いしながらもイスカの方を見る。イスカは寝ぼけ眼で立ち上がる。

 ここは落とし穴ギミックの真ん中、なんだか危なっかしいイスカの目を覚まさせようと立ち上がると、ふとハンカチの上のモンスターが目に入る。

 こいつもドラ子さんの声で起きたのか短いあくびをした。

 けど問題はそんなことじゃない。


「……なんかこいつでかくなってないか?」

「え?」


 イスカも俺の声に釣られてモンスターを見る。

 昨日は確かにもっと小さかった。それが今や、小型犬ほどのサイズ感になっている。

 移動中イスカがずっと持っていたから間違いない。少なくとも昨日はイスカの両手に収まるような大きさだった。


「ほんとだ、成長したのかな」


 それなら育ち過ぎだろう……今じゃもうハンカチの上には収まりきらない大きさになっている。

 俺がじっとモンスターを見ているとモンスターも俺をじっと見返してきた。


「なんかもうダンクとこの子、仲良しって感じだね」

「えっこれはそういうことなのか!?」


 俺はイスカに突っ込む、けれどそれでもモンスターは俺をじっと見て目を離さなかった。敵意は無いし睨んでる訳でもない。何なんだろう。


「ダンク、遊んでないで飯を頼むぞ」

「あっはーい!」


 朝飯はコンフィ残りを細かくカットして干し米を油で炒めた飯だ。


「うみゃー」

「ダンジョン内でもこのクオリティを維持してるのは正直凄いな」


 二人からはお褒めの言葉を貰う。

 モンスターにも俺たちと同じ炒め飯を出したが食べてくれた。でも俺たちと同じ食べ物与えて良いんだろうか?

 そな疑問を持ちながら食後、他を片付けて敷物だけ残す。

 イスカは昨日と同じくお留守番、俺とドラ子さんは互いにロープを結び先へ進む道を探す作業に出る。


「昨日も言った通り多分ここはS字になってるだろうからそのつもりで動く、いいか?」

「はい」

「じゃ、イスカ大人しく待ってろよー」

「ヴィ!」


 道順ははドラ子さんの予想通りだった。

 この階の通路はS字になってるようで俺たちは道幅の確認のため数回落とし穴に嵌るだけで階段へ到着した。

 時間にして三十分くらいだろうか、通路が分かったことで俺たちはイスカの所へ戻る。


「早かったねー」 

「予想通りだったからね。そうだ、行く前にこいつの包帯代えてやろう」


 俺はイスカが膝にのせているモンスターを指す。するとイスカはドヤ顔で含み笑いしながら俺に言って来た。


「ふふふ、この子の名前が決まりました」

「へぇ、なんていうんだ?」


 いつまでもモンスターやこの子っていうのは不便だしな。今まで名付けなかったのが不思議なくらいだ。


「くーちゃん」

「いい名前だなくーちゃん、早く良くなれよー」


 俺は大人だから別に細かく由来とかは気にしない、くーってどこからとった要素だろうと野暮な突込みもしない。

 そうして俺はくーちゃんの包帯を外す。

 元々ひどい怪我だったけどイスカのリジェネレートのおかげで、翼は元の形に戻りつつあった。


「イスカのおかげで順調に回復していってるようだな」

「包帯わたしが巻くよ、ダンク見ててね」

「ああ」


 イスカは拙い手でくーちゃんに包帯を巻く、昨日教えただけなのに手順はしっかり覚えているようだ。


「ここで止めてっと、どう?ちゃんとできてる?」

「ああ、ばっちりだ」

「えへへー二人が行ってる間ちょっと練習してたんだー」

「へぇいつの間に」

「それからリジェネレートっと」


 くーちゃんの包帯交換が完了し魔法もかけなおしたところでドラ子さんは出発の号令を出す。


「よし、じゃあ行くぞー」


 その声で俺たちは出発する。昨日とは違いもう既にイスカの手の平に収まらないくーちゃんは、おとなしくイスカの肩に乗っている。


「しかしいきなりでかくなったなぁ、どうなってるんだろう?」

「不思議だよねー、そう言う種族なのかな?もしかして丁度成長期なのかも」


 いや、にしたっていきなりでかくなり過ぎだ。

 くーちゃんもイスカに助けられたのが分かっているのか、逃げる様子も暴れる様子もなかった。

 この階の進捗は既に半分以上を過ぎている。

 調べた道順を辿り次の階へ上るのは簡単だった。

 早速階段を上った先の光景を確かめる、すると周りは変わらず原っぱだった。

 しかし下の階よりも草の丈は高く、イスカもドラ子さんも身長の半分が草に埋まっている。そして何より一番の違いは……。


「モンスターがいるな」

「ですね……」


 ドラ子さんはつぶやく。俺もすぐに分かった。

 なぜなら――この階のモンスターは凄くデカいからだ。


「わぁ!おっきい羊だぁ」


 遠くからでもわかる程大きいモンスターに、イスカは驚きの声を上げる

 ここにいるのは普通の羊よりも十倍はデカい、まるで一軒家ほどのもある羊。

 この階は何もかもデカくて自分が小人になった錯覚を起こしそうだ。

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