第37話
「よし、じゃないですよ!なんで俺を巻き込んで魔法撃つんですか!」
魔法に巻き込まれた俺はドラ子さんに抗議する
「いやぁ悪かったって、一応俺だって気を付けてたから最初はああいう戦い方してたんだぞ?」
ドラ子さんはイスカを下ろしながら俺に謝る。
「でもさすがにあの範囲魔法はお前でも防げないだろ?だったら一発防げる俺の範囲魔法を食らわせた方が安全だ」
「じゃあ最初からあの方法でボスは倒せたんですね……これじゃ俺足手まといみたいじゃないですかぁ」
「みたいじゃなくてだな……」
「それ以上言わなくていいですよ!」
俺の冒険者としてのプライドが粉々に打ち砕かれた気分だ。イスカは同情してるのか四つん這いになった俺の頭をなでてくれた。
「まあそんなにへこむな、そもそもこの階はお前たちの適正レベルの遥か上だ。こうなることは予想されてた」
「え、じゃあまさか俺のスキルでブレイブガード欲しいって言った理由は……」
「俺の攻撃に耐えられるように、ってのも含まれてるな」
「最初から俺ごと攻撃する気満々だったってことじゃないですかぁ」
「そんな情けない声出すなよ……それに自分でも最初から戦力として入れてなかっただろ?」
それはそうなんだけど、いざ人から言われるとなかなか納得できないのがプライドっていうものだ。
「大丈夫、わたしも戦力に入ってない」
イスカからは慰めなのかよくわからないフォローを入れられて肩を叩かれる。
「さて、ボスも倒したし宝箱だ」
話題に飽きたのかドラ子さんは出現してた宝箱に向かっていった。さっそく宝箱を開けてアイテムを物色する。
「これは……ローブだな。魔法攻撃を軽減できる」
早速鑑定したのかドラ子さんは俺たちにローブを見せる。
「それは、サイズ的に俺には入りませんね」
「俺はこんな動きづらいの着たくないし……よしこれはイスカの物だな」
「けどサイズ大きくないですか?」
ドラ子さんはイスカにローブを羽織らせる。
けどこのローブはイスカには袖も裾もブカブカだった。
「余ってる裾は切ってやろう、袖は折り返してっと」
そう言うとドラ子さんは指を見えない速さで動かす、すると裾は切断された。切断された裾は少しほつれてなんかワイルドな感じがする。
「これで裾は踏むことないな、他はちょっと大きいがそれもおしゃれだ」
「かわいい?」
イスカは俺に聞いてくる。絶賛落ち込み中の俺だがこれに返せない程ダメージは深いわけじゃない。さっさと気持ちを切り替えよう。
「うん可愛いよ、似合ってる」
「やったー」
満面の笑みを浮かべる。こうしてイスカは新たな装備を手に入れた。
「よーし、じゃあ次の階行くぞー」
「おー」
二人は次の階への階段を上り俺もそれに続いた。
階段を上り切り目の前には草原のような光景が広がる。
「わぁー凄い広い!」
一面緑の光景にイスカのテンションが上がってるのが分かる。
「……けどこれはダンジョン?しかも後ろにあるのは窓?」
ダンジョンらしい石の壁も無いし、なんならかなり遠いけど次の階の階段も見える。俺たちが上って来た階段のすぐ後ろは壁でその壁には窓が付いていた。
「なんかダンジョンと言うより原っぱだな、地面も石造りじゃなくて土だし」
「明かりは……なんか天井が光ってる。なんかのどかな場所ですね」
俺は後ろの壁に向かい窓を覗く、するとこの地が一望出来た。
「おお凄い。あんな遠くの山脈まで見える」
「どれ、ふむ。結構高いな」
ドラ子さんはジャンプして窓のふちに足をかけて窓の外を見る。
窓の位置は高く、割とタッパがある俺が背伸びしなきゃ覗けないほどだった。
「わたしも見たいー」
当然イスカは届かずその場でぴょんぴょんと飛び跳ねていた。そんなイスカを俺は抱き上げる。
「わー高いねー、あっ鳥!」
「ありゃ鳥じゃなくてモンスターだな」
イスカは窓の下の方を指差す、そこには群れで巨大な飛ぶ鳥型のモンスターが見えた。
「もう既にモンスターが飛ぶ高度より高いのか……」
俺はつい飛ぶモンスターをじっと眺めてしまう。すると抱えていたイスカが声を上げた。
「あれ?」
「どうした?」
「ダンク、もうちょっと左。隣の窓行って」
イスカに隣の窓に行くようお願いされる。
「何か見つけたのか?」
「うん……」
そうして隣の窓に移動すると外側の窓のふちに傷を負った小鳥が倒れていた。生きているようで少し動いている
「これは……」
「どうにかしてあげられないかな」
見た所この窓は開閉するような機構はない、だから俺たちが窓の外にいるあの鳥に手を差し伸べることは難しいだろう。
「どうにかか……うーん」
俺たちが悩んでいるとドラ子さんはこっちの窓に上って来た。
「なんだ、このモンスターがどうにかしたのか?」
「この小鳥もモンスターなんだ。えと、イスカが助けたいって言うんですが……モンスターを助けて良いんですかね」
「こいつを?ふむ……」
ドラ子さんはモンスターをじっと見る。
「まあダンジョンモンスターじゃないし、助けられたと分かれば多分襲ってはこないだろう」
「でも窓が……」
「それは大丈夫」
ドラ子さんはそう言うと窓に爪を立てる、そしてキキィーと嫌な音を立てた。俺とイスカは思わず耳を塞いでしまう。
「いきなり何するんですか!」
「ほら開いたぞ」
そう言うドラ子さんの手には丸き切った窓の破片が乗っていた。
ドラ子さんは爪で窓に穴を開けたのだ。
「高度あるから風が強い、早く取ってやれ」
穴が空いた窓から強い風が入ってくる。ちょうどモンスターの正面に開けられた窓の穴から手を出し俺は傷ついたモンスターを保護する。翼が千切れかかり、体にもいくつかの傷がある。思った以上に重体だ。
その後ドラ子さんは窓に破片を戻す、すると穴が開いた跡は消えて行った。
「空いた穴が塞がっていく?」
「これがダンジョンの修復能力だ。で、モンスターはどうするんだ?最初に言っておくが俺はこの手の対処は出来ないぞ」
そうだ、イスカが助けたいって言ったからつい助けちゃったけど俺も別に治し方を知ってる訳じゃない。ここからどうすればいいんだろう……。
「わたしがやってみる。リジェネレート」
イスカはモンスターにリジェネをかける。するとモンスターの傷は治っていく。
けれどリジェネレートは即効性は無く徐々に傷を治していく魔法、傷が塞がる速度は遅くなんだか歯がゆかった。
「うーん確かに回復はしてるけど……」
「わたしにはこれが限界……」
イスカも同じ気持ちなのかしょんぼりしている。
「そうだ……」
俺はリュックを下ろし中を探る。今までドラ子さんの強さのおかげでイスカのリジェネでもすぐに塞がるような怪我しかしてなかったから忘れてた。
「一応応急キットは持ってたんだ、これなら治療できる」
俺はモンスターに治療を始めた。グレート団でもこういう事は俺の役目だったから手順は分かる。
けどモンスターの治療はさすがに初めてだな。
「まずは消毒。変なふうに塞がらないよう包帯で固定して……これで大丈夫だろう、あとはリジェネが治してくれるはずだ」
「治るかな?」
イスカは心配そうに俺に聞いてくる。
「治るさ、イスカのリジェネの力は俺が一番わかってるんだ」
「まあそれだけやってやれば十分だろ、そろそろ先へ進むぞー」
「もぉドラ子さん冷たいー」
珍しくイスカがぷりぷりと怒る。これに関しては同意見だ、いつもは積極的にイスカのお願いを聞くドラ子さんだけど、今はなんだかあのモンスターとあんまり関わりたくないみたいだ。
「イスカ、俺にもできることとできないことがある。治療とかそういうのが出来ないことだ、だからあんまり関わりたくないんだよ。期待されても困るしな。だから、俺はそのモンスターには関与しません!」
ドラ子さんはきっぱり言い切った。つまりこれは、ペットを飼うなら自分たちで責任を持ちなさいと言う親心的なアレだ。
「治療は終わったんだ、あとは回復を待つだけだろ?だったら先に進もう」
「うん……」
イスカもドラ子さんの言いたいことが分かったのか素直にうなずいた。




