第25話
俺とドラ子さんは部屋の真ん中で解毒の薬草と魔法草を摘む。
「まさか装備ってお花の輪っかだとは……」
ダクさんの話ではボスのとの戦闘中いちいち解毒薬を飲むのは隙も生まれるし、何よりそんなことをしている暇はないとのこと。
ならば最初から状態異常を受けないようにすればいいとダクさんは結論付けた。
「解毒の薬草と魔法草の花を一緒に編むとあら不思議、状態異常攻撃を打ち消してくれる花の輪っかが完成だ。それとイスカちゃんには状態異常を治し耐性をつける魔法、レジストを教えてあげよう」
そうダクさんは自慢げに言っていた。
なので俺たちはお花の輪っかを作る俺とドラ子さん、ダクさんから魔法を教わるイスカと二手に分かれていた。
60階のボス相手に、誰も毒に侵されず無事勝てるかはこの装備とイスカの魔法に委ねられた。
「俺こういうの苦手なんだよなぁ」
お花の輪っかを作るドラ子さんは不満そうにつぶやく。
いい年した俺とギルドマスターのドラ子さんが座りながらお花の輪っかを作る光景はとてもシュールだった。
「ドラ子さんは毒なんて何ともないかもしれませんが、俺とイスカが食らったらヤバいんですからね」
「はいはい、わかってるよ。でも、この……ここがっ……ぐぬぬ!」
ドラ子さんの作るお花の輪っかは力を入れ過ぎたせいで全体が歪んでいた。
「お前は図体デカいくせに器用にできてるな」
俺の作るお花の輪っかは綺麗に整っている。
子供の頃、近所の女の子たちと一緒に作ったことあるからその経験が生きたんだろう。
「大人になっても意外と作り方覚えてるもんですね」
俺のは自分で言うのもなんだが綺麗にできてると思う、これはイスカにあげよう。
「ところでさっき紹介された時、ダクさんを変態って言ってましたけどそんな変な人には見えないんですが……今でもちゃんとイスカに魔法を教えてるし」
「あいつは極度のナルシストなんだよ。自分大好き過ぎてついには魔法の教本に自分を召喚させる方法まで載せてしまった」
ドラ子さんは輪っかに苦戦しつつ教えてくれる。
「それはまた……でも強いなら戦力として頼りにされるんじゃないですか?」
「ああ、だから最初は流行ったよ?困難な時にAランク魔法使いが来てくれるんだからな」
「それなら大助かりじゃ……」
「だが、あいつは召喚先で好き勝手やった。自分を召喚した冒険者が敵と技量的に互角なら勝手に帰ったり。逆に自分のかっこいい所を数個挙げないと帰らないなんてこともあったな」
「えぇ……」
「実力はあるから年に何回かは本当のピンチで呼ばれることはあるみたいだが、その性格が知れ渡った今ではあまり使われることのない魔法の一つになった」
「へぇ」
俺は机でイスカに魔法を教えているダクさんを見る、その姿は良いお兄さんって感じでそんな厄介な人には見えなかった。
「よしできた!」
完成したドラ子さんの輪っかはやっぱり曲がっていた。
そうして俺たちは作ったお花の輪っかをイスカたちの元へ持っていく。
「出来たよ、これがイスカの分だ」
「わぁ綺麗!でも一つ数が足りないよ?」
そう、完成したお花の輪っかは俺とドラ子さんが作ったので二つしかなかった。
「俺のはいらない、毒なんてそうそう食らわないしな、だからこれはダンクとイスカの分だ。イスカは出来のいいダンクが作ったやつを使うといい」
そんなドラ子さんの言葉にイスカは珍しく不満を露わにした。
「えーせっかくだからみんなお揃いで行こうよ。そうだ、じゃあドラ子さんの分はわたしが作るね!」
イスカはそう言って椅子から駆け出し解毒の薬草を探しに行った。
「あっこら!魔法はどうするんだよ」
「先生、彼女はもうレジストを習得した」
「ん?そうなのか」
「言葉は分からなくても俺は天才だからな!魔法の教えはばっちりだ」
「お前がそういうなら大丈夫か」
「所で先生は何でもありだからいいとして、どうして君があの言語を理解できて普通に会話しているんだ?あんな言語は聞いたことないが」
ダクさんはスッと俺の真横に並び尋ねて来た。
そう言えば忘れてたけど普通の人はイスカの言葉が分からないんだった。
イスカのことが機密ならこのまま俺が人前でイスカと会話しててもいいのだろうか?
俺はドラ子さんをちらっと見るけど特に止める素振りは見せない、相手はAランク冒険者だしある程度のことは知ってるのかな。
「えと、この耳飾りのおかげですよ、ダンジョンでドロップしたんですけど……」
「ほう……」
俺の耳をジッと観察しながらダクさんは何かぶつぶつ言い始めた、なんか近いし怖いな。
「翻訳……いやこれは意思の疎通の魔法具か?それにしては術式が……」
「あ、あの……」
「ああ、すまんな魔法具を見るとつい、よければその魔道具を少し見せてくれないか」
「ダメだ!」
俺が答えるよりドラ子さんが先に止める。
「これが機密の依頼である以上、今はお前に何か見せることはできない」
「ちぇ先生は相変わらずだな」
「ダンクはイスカを見に行ってやってくれ」
「は、はい」
なんだかドラ子さんに引き離された感じがしたけどまあ先生と生徒久しぶりに会ったんだ、積もる話もあるんだろう。俺は素直に従ってイスカの元に駆け寄った。
「イスカどうだ?」
「ダンク、ちょっと問題が発生したかもしれない」
え、なんだろう。
「薬草も魔法草も花の色は紫とピンクでしょ?色が被っちゃう!もっといろんな色のお花も混ぜなきゃ」
外見かぁ、それは想像してなかった。確かにこの二つの植物の花弁は暖色系で色合いは似てるけども……。
「でもイスカこれは一応状態異常の対策だから……」
「だからって見た目をこだわっちゃいけない理由がないよ、せっかくお花の装備なんだから可愛くしてもいいでしょ?」
まあ毒の効かないらしいドラ子さんの分だしいいか。
「じゃあうんと可愛くしようか、イスカはこれとどんな色混ぜるといいと思う?」
「白や黄色なんか入れたらもっと賑やかになると思う!」
俺は周りを見渡す、当然白や黄色以外にも様々な色の花が生えていてこれなら色には困らないだろう。
「いっぱいあるな、二人で摘もうか」
「うん!」
俺たちは二人で様々な色の花を摘んで輪っかを作る。
けど入れたいはなの数が多くて輪っかは予想より大きくなってしまった。
「頭より大きくなっちゃったな」
「だったら首にかけてもらおうよ!」
装飾品だしそれでもありだな。イスカも作った物だしドラ子さんも無下にはしないだろう。
「そうだなじゃあ見せるために戻るか」
「ドラ子さん喜んでくれるかな」
「どうだろうなぁ」
そこは本当に分からん、どんな反応するのか俺も楽しみだ。
「ドラ子さーん!」
イスカはダクさんと話すドラ子さんの元へ花の輪っかを見せるように駆けて行った。
「いやーこれは……ちょっとどうだろうな、イスカ?」
「かわいいでしょ?ちょっと大きくなっちゃったから首飾りにしたの、これでみんな揃い!」
「うーん……」
ドラ子さんは困ったように眉を寄せて悩み続けていた。
「俺にはちょっと可愛い過ぎると思うんだよ、それに俺はこの装備必要ないからこれはイスカが……」
「えードラ子さんのために作ったのにー」
イスカは再び不満そうな声を漏らす。
「ダンクはどう思う?」
「毒が効かないドラ子さんだから他の花の種類も増やせました。力作です」
「くっそお前もそっち側か……分かったこれは俺が装備しよう」
「やったー」
俺とイスカはハイタッチする。ドラ子さんはイスカのお願いは断れないんだなぁ。
「ただし、装備するのはボスの直前だぞ。これは対ボス用の装備だからな、せっかく作ったのに道中で使い切ったら元も子もない。ダンク、コンプスを頼む」
「はい」
俺は机の上に置いていたお花の輪っかを全て魔法で小さくして鞄に入れる。
そんな俺の魔法にダクさんが食いついた。
「ほう、珍しい魔法を覚えてるんだな」
「俺は荷物持ちも兼ねてますからね」
「だったら解毒薬も持っていくといい、コンプスが使えるなら荷物にならないだろ?」
「ありがとうございます」
懐から取り出された三本の瓶に再びコンプスをかけ鞄にしまったところでダクさんは俺に尋ねて来た。
「ところで君はどういう経緯で先生とパーティを組んでるんだ?」
「?」
質問の意図がよく分からず俺は思わず首をひねってしまう。
怪しまれたと思ったのかダクさんは慌てて訂正する。
「ああ、依頼に関わるとのなら話さなくていいが先生が部外者をパーティに入れているのが珍しくてね。君、依頼に直接関係ない冒険者だろ」
「えっ、なんでわかったんです?」
「勘だよ勘」
ダクさんの質問をドラ子さんは止めない。俺のことなら少しは話していいってことだな。
「成行きですよ。料理できる冒険者が必要って言われて俺が選ばれただけです」
「ふーんそうなのか、てっきり俺の後輩かと思ったんだが……でもその様子だと先生にきっちり絞られてるんだろう?」
そう言ってダクさんは肩を組んでくる。色々教えて貰ってる同士何か近いものを感じたんだろう。
「こいつがか?無いな。俺の教え子はガキで十分だ」
きっぱり否定するドラ子さん。まあ教え子って年でもないしなぁ。俺はドラ子さんが前に話してた教え子とは違うだろう。
「なんだ、だが俺の後輩になるのはいつでもウエルカムだぞ」
現Aランクの後輩っていう肩書は凄そうだけど、それにはまずドラ子さんに認めてもらわなければいけない。どの道俺にはどうしようもないことだ。
「よし、準備もできたしもう行くわ。お前もダンジョンに引きこもってないでそろそろギルドに成果出しとけよ?」
「ふっ、俺の成果は再び魔法の常識を一変させてしまう。慎重にならざるを得ないんだ」
「はいはい、んじゃ邪魔したな」
「色々ありがとうございました」
「サラバ!」
こうして俺たちは、60階のボスへ向けた準備を整えた。




