第22話
地獄のレベリングは続く。俺たちは現在なんと41階まで登っていた。
流石にこの辺のモンスターは全て見た事ないし俺は結構ビビってる。
けどドラ子さんは、そんな俺の気持ちもお構いなしに殴ったモンスターを飛ばしてくる。
「なんだ!腰引けてるぞ!しっかり鍋を構えろ!」
「は、はいぃ!」
超強そうなモンスターや、デカいモンスターがどんどん飛ばされて来る。
俺は真正面を見据えアタックガードで全部倒していった。
その勢いでモンスタートラップに突入。俺はさらに飛ばされてくるモンスターを次々と鍋で弾いた。
「ぬおおおおお!」
そうして唯一の休憩時間、ドラ子さんの宝箱タイムだ。
「はぁはぁ……」
疲れて倒れている俺の周りからテレレレレンと不思議な音が鳴った。
「ドラ子さん、なんかスキル覚えたみたいです」
「よし、じゃあさっそく確認だ」
俺はギルドカードを取り出し確認する。
[レベル]31
[スキル]プロテクト、アタックガード、ミラーガード、インターセプト
「インターセプト、どんなスキルですかね」
「割り込みガードだな。割と使えるぞ」
「普通のガードとどう違うんですか?」
「じゃあちょっと試してみるか。習うより慣れろだ」
ドラ子さんは俺とイスカを横に立たせる、そしてドラ子さん自身は少し離れて立つ。これで準備は完了らしい。
「ダンク、スキル発動だ。守る対象はもちろんイスカ」
「は、はい。スキル、インターセプト」
「じゃあ俺はイスカに向かって軽く石を投げる、鍋を構えとけ」
ドラ子さんの力は強力だ、石を軽く投げるって言ったって結構な威力になるんじゃないのか?
俺の心配をよそにドラ子さんはイスカに向かって石を投げたが……やっぱり早い。
こんなのイスカに当たったら怪我だけじゃすまないぞ。
そう思った瞬間、体が勝手に前へと踏み出し、俺はいつの間にかイスカの前に立っていた。
「えっ!?」
石は俺の構えている鍋に当たり俺の腕を痺れさせた。
「体が勝手に動いて……まるで石に当たりに行ったみたいな感じでした」
「それがインターセプトだ。近い相手の攻撃を自動で防ぎ、ある程度引き寄せる効果を持つ」
「へぇー凄い!どういう原理なんだろう」
「お前……今まで自分の他のスキルの原理なんて気にしたことないだろ、そういうもんだとでも思っておけ」
「はぁ……でも体が勝手に動くっていうのは不思議な感じですね……」
「ああ、ちゃんとしっかり守ってないと攻撃を防げないどころかお前自身が吹っ飛ばされるぞ」
インターセプトを使ったらいきなり攻撃を受ける可能性もあるのか。常に気を張ってないといけないな。
「範囲も結構狭いはずだから守る対象から離れすぎるなよ。守れるのは手の届く範囲だけってのを頭に入れとけ。あと当然守れるのは一か所だけだからなそこも注意だ」
ドラ子さんは色々教えてくれた。なんだか大変なスキルだな。
「今までと違って覚えることが多いですね」
「このレベルになるとちゃんと理解しないと恩恵を得られないスキルも増えてくる。もう初心者なんて言っていられるレベルじゃないな」
「俺でもここまでレベル上がる事が出来るんですね」
「集中的に上げれば本当はもっと早いはずなんだけどなぁ」
俺の成長にドラ子さんは納得いってないみたいだ。やっぱりレベル上がるの遅いんだろうなぁ。
「分かってますよ、どうせ俺は才能ないです……」
「それなんだが、そもそも才能ない奴はスキルを覚えないことも多い。きちんとレベル上がってスキルも覚えるお前は本当に大器晩成型かもな」
「本当ですか!?ドラ子さんにそう言われると希望が見えてきますよ!」
ドラ子さんほどの人にそう言われると自信がついてくる。
「まあそれが人の世で有効かと言われれば微妙だが……」
「上げてから落とすのやめてくださいよ……」
そうしてドラ子さんは宝箱を開けに行った。隣で一緒に休むイスカは自分のギルドカードを見ていた。
「ダンク、わたしもレベル上がってるよ34だって」
ぐぬぬ、まだちょっと離れてるな。もうちょっとでイスカに追いつきそうなんだけどな。これが普通の成長スピードなんだろうなぁ。
「イスカはすごいな、俺も頑張らないと」
「わたしはダンクが頑張ってるのを知ってるよ。だから無理しないでね」
イスカはそう言って励ましてくれる、この励ましで俺まだ頑張れる。休憩もしたしやる気が出て来たぞ。
「うおおお!」
「いきなり叫んでどうした」
宝箱を開けたドラ子さんが戻って来た。
「ドラ子さん、俺やりますよ。まだ頑張れます!」
「へぇ、そろそろ終わろうと思ってたけど、もうちょっと行ってみるか」
「はい!」
こうして俺たちは先に進む。そして43階まで進んでイスカの体力の限界が来た。
今日はこれで休憩だ。夕食を終えイスカが眠りにつき、俺も先に休むことになった。けど体力がついたのかあまり眠気が来ない。
俺は上半身を起こすとドラ子さんが心配そうに話しかけてくれた。
「どうした?」
「あんまり疲れてないんですよね」
「なんだ……それでも休める時に休め、これも立派な冒険者の技能の一つだぞ、その辺はまだまだ初心者だな」
「すいません……」
「まあ、徐々に慣れて行こうぜ」
「はい……」
そうして会話は止まった、ドラ子さんは焚き火の前で佇んでいる。
何か話そうにもどう話しかけていいか分からない。そう言えば俺、ドラ子さんのこと何も知らないな。
今までの会話と言えばイスカのこと、ダンジョンのこと。
だからかドラ子さん自身のことはあまり聞いたことない。
「……ドラ子さんってなんでギルドマスターになったんですか?」
「あぁ?」
いきなりの質問にドラ子さんは鬱陶しそうに俺の方を向いた。
「なんだ?いきなり」
「いやぁ俺ドラ子さんのこと全然知らないなーと思って聞いてみたんですが……ドラ子さんのことは機密じゃないんですよね」
「そりゃそうだが……」
「じゃあ眠くなるまで教えてくださいよ。同じパーティの仲間じゃないですか」
「うーん、まあいいか。頼まれたんだよこの国にな」
「頼まれた?」
ドラ子さんは思い出すように語り出す。
「当時この国のギルドは腐敗していたんだ。それの立て直しをしてほしいと当時の王に頼まれた」
「へぇ王に認められるなんて凄いじゃないですか」
「認められたんじゃない頭を下げられたんだ」
「へ?お、王に?」
「ああ、あいつは頭はよかったがあんまり人望が無かったからなぁ。俺に権力を与えて色々正したかったらしい」
ニヤ付きながらドラ子さんは言った。当時の王をあいつ呼ばわりとは、もしかしてドラ子さんって単なるギルドマスターじゃなくてかなり偉いのか?
「あいつはどんな組織でも人間の組織なら時間が経つと必ず腐ると言ってた、だから俺にギルドマスターを頼んだんだ。長い時間生きてる俺をな」
「……ドラ子さんいったい幾つなんですか?」
「いやん、女の子に年齢聞くなんて!」
その容姿でドラ子さんはここぞとばかりにかわいこぶる。
普段強気なのに急にそんな態度とられるとちょっとイラっとするな。
「まあでも正直自分が幾つかなんて数えてないなぁ。お前、原初の魔王が現れた時期正確にわかるか?」
「いや、神話時代の話としか……」
「俺の年齢もそれくらいだ」
「えっじゃあドラ子さんって原初の魔王の時代から生きてるんですか!?生きる伝説じゃないですか!」
「まあな」
ドラ子さんはドヤ顔でピースする。
「そりゃ数えるのをやめますよね……じゃあこの国に来るまで何を?」
「なんだまだ質問続くのか、特に何かしてたって訳じゃないけどな……食っちゃ寝してたまに人間と戦ってたりしたな」
「人間と?」
「ああ、当時俺の住んでた森の周囲には国が二つあってな。その国がまたえらく仲の悪くてずっと戦争してたんだよ。俺の住んでた森は近かったからよく巻き込まれてたんだ、火の粉を払っていたらいつの間にか二国共通の敵になってた」
「それは何というかお気の毒ですね」
「最初は勇者と呼ばれた冒険者が何人か向かって来たが、徐々に両国から兵までが出てくるようになった。いい加減目障りだったから両国とも滅ぼしたけどな」
「えぇ……」
「一国は燃やし尽くして、もう一国の人間は食った」
ドラ子さんは思い出すようにしみじみ話すが俺はドン引きする。
人間を食ったとは前に聞いていたけどまさか国単位の人間を食ってたとは。
「安心しろ俺に害が無きゃそんな真似はしないさ」
俺が引いているのに気づいたのかドラ子さんは言った。
けれどもし、この国の人間が害する行動をとればこの国も滅ぼされるって事だよなぁ。こえー。
「で、一部始終を見ていたこの国は俺に対話を求めて来たんだ。自分たちも滅ぼされたくないから最初から王も兵も頭を下げてなぁ。それから俺が話せると知った王は権力と共に俺をギルドマスターにしたって訳だ」
「そんな経緯だったのか……当時の王もさぞ怖かったでしょうね」
「そっちに感情移入するのかよ」
「俺も人間ですからね」
「チッ可愛げがない奴め。とにかく俺の経歴はこんなもんだ」
人に、じゃなくてドラゴンに歴史ありだな。
「色々教えてくれてありがとうございます」
「そうだ、俺から一つ忠告しておくことがある」
「忠告?」
ドラ子さんはイスカを見た後、話し始める。
「ああ、もしこれから何らかの事故が起きてイスカから力が欲しいかと聞かれても絶対に欲しいと答えるな」
「それはいったいどういう……」
ドラ子さんの瞳は、いつになく真剣だった。その迫力に俺は少し冷や汗をかく。
だけどあまりに限定的な話過ぎて想像できない、ドラ子さんがいてそんなピンチな事ないと思うけど。
「機密にかかわる事だ。これ以上は話せることないから早く寝ちまえ、すぐ交代の時間になるぞ」
「はーい」
ドラ子さんに言われ疑問に思いながらも俺はしぶしぶ寝転がり目を瞑る。そして次第に眠りに落ちていった。
その夜見た夢は巨大なドラゴンに襲われる夢となった。




