第21話
「うん、たんこぶだけだ。そのうち治る」
俺たちは鍋を囲んで思い思いにくつろいでいた。
敷物の上ではドラ子さんがナンティの頭を診ているところだ。
そこに金の剣と口論していたCランクパーティが近づいてくる。
「この度はご助力感謝します。グレート団から経緯は聞きました、なんでもあなたがギルドマスターだとか。改めて俺たちCランクパーティのクローバーです」
そう言ってCランクパーティもといクローバーの三人はドラ子さんに頭を下げた。
「気にすんな、これも仕事だ。それより宝箱の中身どうだった?」
金の剣が去った後、宝箱の所有権は無事クローバーに戻った。
元はと言えばこのクローバーが見つけたし当然だろう。
あの後、彼等は無事宝箱を開けた。
「ポーションと宝石でした」
クローバーのリーダーが宝箱の中身を見せてくれた。
「やったじゃん、当たりだ」
ドラ子さんも笑顔で答える。
「はい、あなたたちのおかげです、ありがとうございました」
そう言って再びクローバーのリーダーはお礼を言った。
次いでドラ子さんに話しかけたのは膝枕をされながら頭を診て貰っていたナンティだ。
「ねぇねぇドラ子さんて本当にドラゴンなの?」
「ああ、本当だぞ。今は人化の術を使って人の姿になってるだけだ。本当は人も食べるおっそろしいドラゴンだ」
「キャーこわーい」
ナンティは冗談だと思ってるのか軽く笑う。けどクローバーの皆さんはドラゴンの詳細を知ってるのか青い顔をしながら引いていた。
イスカは俺の料理の手伝いをしてくれている。今日の夕食はごった煮スープだ、グレート団は最初から俺に任せる気満々で食材を預けて来た。
クローバーの皆さんも俺たちが料理をするパーティだと知って同じく食材を渡してきたのだ。
それぞれ今日の分の食材として渡してきたものだから種類も分量もバラバラ、なので俺は人数も多いし全部煮てしまうことにしたのだ。
「さあ出来たぞ、三パーティごった煮のスープだ」
鍋の蓋を開けるといい匂いが辺りに充満する。俺はそれぞれ持ってる器にスープを注ぐ。
そしてスープが行き渡るとみんなで手を合わせて一斉に食事を始めた。
「うーんやっぱり料理できるメンバーがいるとダンジョン攻略の士気が上がるなぁ」
クローバーの一人がしみじみと呟く。
「ダンクの飯は久しぶりだけどやっぱうまい……」
イグレも変わらず俺の飯を美味そうに食ってくれるな。
そうしてそれぞれのパーティから感想もらって俺も満足だ。
その後、腹が膨れた一同は食後のまったりタイムを満喫していた。
すると料理の片づけをしている俺にイスカは話しかけてくる。
「ねぇねぇ、デザートにみんなであのお菓子食べようよ」
あのお菓子と言えばパーティマーケットで買ったお菓子だろう、でもあれはドロップアイテムで見た事もないレアなお菓子だったはず。
「いいのか?あれは貴重な物のはずだけど」
「うん、あれはたぶんすぐに味が落ちてくるものだと思うの、私ひとりじゃダメになるまで食べきれないと思うし、だったらここにいるみんなで分けた方がいいと思って」
イスカ、なんて良い子だ。そう言うことならあのお菓子をみんなに振る舞おう。
俺はカバンから何重にも魔法がかけられているお菓子を取り出しみんなに配った。
「これはイスカからです、デザートにみんなで食べようって」
「ほう、見た事ない食べ物だ」
珍しいお菓子にみんな興味津々で口に運ぶ。
「へぇ、上品な甘さだ」
「そっちの一口ちょうだいよ」
それぞれ配られたお菓子は形がバラバラで一口ずつ交換する人もいた。
イスカのサプライズにみんな満足しているようだ。
「イスカちゃんありがとねー」
「ド、ドウイタマシテ……」
ナンティがイスカにくっつきながらお礼を言うとイスカはたどたどしく返す。なんだかほほえましい光景だな。
デザート後、あとは寝るだけとなった時クローバーの一人が話しかけて来た。
「夜の見張りは俺たちに任せてください、金の剣から宝箱を取り戻してくれたお礼です」
その話を聞いたイグレは会話に加わった。
「俺たちも見回りに加わるよ、金の剣の時はあんまり役に立てなかったし、そればかりか目回しちゃったからかな。少しでも役に立ちたい」
「じゃあグレート団とクローバーが交代で見張りをしよう」
「おお!」
見張りの件はイグレとクローバーのリーダーが早々に決めてしまって俺たちが入る隙が無かった。まあやってくれるというのなら任せよう。
「という訳で……」
イグレはそう言ってから考えるように固まった。
「?」
「そう言えばダンクたちってパーティ名ないのか?」
「……ないねぇ、少なくとも俺は知らない。ドラ子さーん」
俺はドラ子さんに聞いてみることにした。もしかして最初にイスカとダンジョンに登った日決めていたかもしれないしな。
寝る準備をしていたドラ子さんは話を聞いて答える。
「見張りの件は分かった。パーティ名なぁ、臨時のパーティだし必要か?」
ドラ子さんの言葉にイグレは熱く語り出す。
「パーティ名は必要ですよ、まずパーティ名があるとそのチームだという自覚が出て結束力が出ます。あと何よりパーティみんなで名乗るとかっこいいですからね!」
「そ、そうか?」
「そうですよ!」
イグレの熱弁にドラ子さんは引き気味だった。
「まあこうやって複数の別パーティと交流するならあった方が便利ですよ。俺たちもパーティ名の方が呼びやすいですし」
クローバーのリーダーもイグレとは熱量は違うがドラ子さんを説得している。
「そう言うもんか。じゃあダンク命名頼む」
「俺ですか?」
「イスカは言葉分からないし俺は今日あんまり興味ないしなぁ」
なるほど、消去法で俺か。
「ただあんまりダサいと却下だからな」
俺に丸投げするのにきっちり審査はするのか、ダサくするつもりはないけど……うーん、何か参考例が欲しいな。
「クローバーさんはどうやってパーティ名決めたんです?」
「俺たちはずっと三人無事でいられるようにって願いを込めてクローバーだ」
へぇ、願いか。そう言うのもあるんだな。でも俺たちは臨時でずっと続くパーティじゃないからなぁ。
願いを込めるならイスカが無事帰れますようにってところだろうけど……あんまり冒険者っぽくはないな。
「俺たちはとにかくスケールが大きくなれるようにってグレート団だ!」
イグレは聞いてもいないのに答える。俺も名前決める時にいたから知ってるんだけどな。
でもクローバーの一人とドラ子さんは感心したように聞いていた。
「あとは……メンバーの特徴を入れるとかな。ダンクのパーティリーダーはドラ子さんだろ?ならドラ子さんを前面に押し出す名前にするとか。ドラゴンのなんちゃらとか、竜って字を使うのもやりやすいかもな」
ヒント、というかとっかかりみたいなのをイグレはくれた。
「なるほど、だったら……空竜の盾なんてのはどうだろうか」
「空竜?竜はドラ子さんのことか?盾なんて自分のこともちゃっかり入れてるな」
空は本当は空翼人のイスカのことだけどこれをイグレやクローバーに言う訳にはいかないからな。俺はちょっとこじつけてみる。
「空はイスカのことだよ、イスカの髪は綺麗な空色だろ?」
「ああ、なるほどちゃんと全員のことを入れてるんだな」
「そう、という訳で空竜の盾です。どうですかドラ子さん」
俺は焚き火のそばでくつろぐドラ子さんに聞いてみた
「ふむ、良いんじゃないか。イスカの事を入れてるのが好感度持てる」
ドラ子さんは笑顔で頷いた。ちゃんと空翼人という事を隠して空という字を入れたことを分かっているんだろう。
「じゃあ俺たちのパーティ名は今から空竜の盾だ」
「おお!」
イグレとクローバーの一人が拍手してくれる。それに気づいた周囲が何事かと寄って来た。
「なになにー?」
「ダンクのパーティ名が決まったんだよ」
「今までなかったんですか?」
「へぇなんていうんだ、教えてくれよ」
やっぱ三パーティは多いな、そしてこの大人数に発表するのか。なんかちょっと緊張する。
「えっと、空色の髪のイスカとドラゴンのドラ子さん、そして俺の装備の盾を合わせて空竜の盾という名前にしました」
「かっこいいですね」
「名前負けしないようにがんばれよ」
クローバーのメンバーやグルーがはやし立ててくる。照れくさいな。
「ということで今日は宝箱を取り戻してくれた空竜の盾を労って見張りは俺たちクローバーとグレート団が交代でやることになった。みんなよろしくな」
「了解だ」
「うーん私たち、あんまり役に立ってなかったもんねー。見張りはまかせてよ」
クローバーのメンバーやナンティは頷いた。働いたのはほぼドラ子さんだけだけどみんながそう言ってくれるならありがたく休ませてもらおう。
こうして俺たち空竜の盾はゆっくり休むことができた。
そうして翌日、俺は二つのパーティからまた食事を作ってくれと頼まれる。朝食に昨日と似たようなスープを作ったけどこれも好評だった。
そしてそれぞれ出発の準備を整える。
「では空竜の盾さん、宝箱の件と言い食事と言いありがとうございました。縁があればまたどこかで」
そう言ってクローバーの三人は先に出発する。
「お前らはどうするんだ?」
ドラ子さんはグレート団に尋ねる。
「ドラ子さんならダンクをちゃんと使いこなせるってわかりましたからね。俺たちもここで自分たちの冒険に戻りますよ。というかこれからの階からドラ子さんについて行く自信がないし……」
「それがいいだろう、こっちもこっちのペースがあるしな」
「じゃあダンク、またな」
「ああ!」
こうして協力していたグレート団とも別れて俺たちは、またレベリングをしながら先へ進む。
***
クローバーたちがダンジョンを進む中、少し離れた後ろには別のパーティの姿があった。金の剣だ。
「あいつら、昨日のパーティだ」
金の剣はクローバーを見つけるとすぐに隠れ、クローバーの様子をうかがうように観察し始める。
「またあいつら狙うのか?昨日の今日だけど……」
「いやまだあのギルドマスターが近くに居るかもしれない。それに見つかったらめんどくさそうだ、今は隠れて様子だけ見よう」
クローバーは道を進みながら雑談してる最中で、金の剣はそれを探るように後をつけていた。
つけられていることに気づかずクローバーの会話は続く。
「やっぱ料理ができるパーティの飯は美味かったな。あんな飯をダンジョンでも食えるとは羨ましい」
「それにしてもギルドマスターがまさかドラゴンだったとは、通りで強いはずだ」
「小さい子もいたし特別な依頼なのかもね。あ、あっちにモンスターの気配」
「よし迂回していこう」
そうしてクローバーは去って行った。
「おい聞いたか」
「なんか色々言ってたな、どれだ?」
金の剣の金髪の剣士は不敵に笑いながら仲間と話す。
「あのギルドマスター、ドラゴンだってよ。つまりモンスターだ」
「おい、何考えてるんだ?」
フルアーマーの戦士は金髪の剣士に聞き返す。
「お前らムカつかないのか?たかがモンスターにいい様にされて」
「そりゃムカつくけど……あんなに強かったら従うしかないわ」
女のハンターは諦めたように首を振る。しかし金髪の剣士は反論する。
「相手がドラゴンならやりようはある。ダンジョンの上層階には対ドラゴンの武器が落ちることがあるだろう?それを使えばあいつに一泡吹かせられるかもしれない」
「相手はギルドマスターだぞ?」
「だから俺たちに頭を下げさせてやるんだよ。奴らのパーティ構成、特別な依頼なんだろう。失敗させて俺の親に頼めばあいつの地位は落とせると思わないか?」
「お前の親父が貴族っていうのは知ってるけど、そこまでのことできるのか……?」
「やるんだよ、そうすれば俺たちはランクなんて関係なくギルドで一番偉くなれるぞ?」
金髪の剣士はそう言った後ダンジョンを登るため歩き出した。
金の剣の仲間たちは不安そうにお互いの顔を見合わせる。
あまり金髪の剣士の言うことに乗り気ではない様子だったが、仕方なく金髪の剣士の後についてくのであった。




