第18話
翌日、ドラ子さんに見張りを変わってもらってからの夢見は何とも言えないものだった。
イスカの話の内容が出て来たのか、聞いたことのない道具や謎の技術が次々と出てきて、やけにカオスな夢だった。
「ダンク、大丈夫?なんだか眠そう」
そう言うイスカも見張りのせいか少し眠そうで目をしょぼしょぼさせていた。
「イスカだって眠そうだぞ」
「むぅ、お話の途中で寝ちゃったのくやしいー」
「こればっかりは慣れだな、俺も久しぶりだったから早く慣れないと」
「お二人さん、調子出ないところ悪いがダンジョン攻略はいつも通り行くぞー、冒険者ってのはそういうものだからな」
「おー」
ドラ子さんに注意されながらも俺とイスカは力なく反応するのだった。
この日の朝食は買ったものを中心に昨日の焼き飯に具材を多くした一品。野菜は足が早いからさっさと使わないとな。
「ウマー」
イスカは言葉が分かってもこの反応なのか、まあ可愛いからいいけど。
その後、本日も順調にダンジョンを登り続けレベリングも進む。
俺たちはついに30階のボスをも倒し現在31階。俺たちはギルドカードを確認していた。
「やった!レベル25だ!もう少しでイスカに追いつきそうだぞ」
「やっぱボスを倒すとレベル上がるのが早いな。けどこの階層だとまだちょっとレベル不足かもしれないな」
「これでですか!?」
順調かと思ってたらまさかの足りない発言、これは心に来る。
「イスカはどれくらいレベル上がった?」
「うーんとね、はい」
ドラ子さんの質問にイスカはまぶしい笑顔で俺たちにギルドカードを見せる。
カードのレベルの欄には32という輝かしい文字が書かれていた。
ほぼ全ての階で俺は出会ったモンスターのトドメを刺している、本来は俺の方が経験値が多いはずなのになんで追いつけないんだ。
「最初にも言ったが才能だなぁ。これを続けていればいつかはイスカを追い越せるだろうけど……それにしたってただ戦闘に参加しているだけのイスカになかなか追いつけないとは……」
「お、俺は大器晩成ですから……そう思うことにします」
ドラ子さんは本当に不憫に思ったのか、それ以上は何も言わなかった。
それから再びレベリングに戻る。
「おっと」
すると前からダンジョンを帰還中と思われる冒険者たちが向かってくるのが見えてきてドラ子さんは戦っていたモンスターたちを瞬時に全滅させる。
こういうことは今までも何度かあり、ドラ子さんは他の冒険者の姿が見えると戦闘を瞬時に終わらせていた。
「おお、ダンジョン攻略中のパーティか戦闘中邪魔しちゃって悪いな」
「いや、気にすんな。気をつけて戻れよ」
ドラ子さんがふと掛けた優しい言葉に帰還中の冒険者たちはかなり驚いていた。
「?なんだそんなに驚いて」
「い、いや少し前この先で宝箱を横取りする狡い冒険者に会ってな。ちょっと疑心暗鬼になってた所だったんだ。そうだよな、あんなのはあいつらだけだよな」
「それで労いの言葉で驚いたのか」
「ああ、あんたたちも気を付けろよ」
そうして前から来た冒険者たちは、俺たちの来た道を戻って行った。
「狡い冒険者ねぇ……」
「そう言えば俺たちもイスカが落ちてくる前に会いましたよ」
「なんだって、冒険者の質が下がってるのか?」
「俺が会ったのは一組のパーティだけだったから冒険者全体の質は分かりませんが……」
「ふーん……ちょっと詳しく教えろ」
ドラ子さんが俺の話に興味を持つなんて珍しいな。
「ダンジョン探索中に宝箱を見つけたけど目の前にモンスターがいて……俺たちが戦ってる間にそいつらが横から入って来たと思ったら、宝箱の所まで直行して宝箱を取られたんです」
「そりゃ確かに狡いな、ちょっと仕置きが必要なパーティかもしれない」
ドラ子さんは腕を組みながら考えるように言った。
やっぱりギルドマスターとしては冒険者が問題を起こすのは許せないのかな。
「さっきのパーティが言ってた奴らと同じかは分かりませんよ?それにこの広いダンジョンでまた会えるかも謎ですし」
「だがこの先には確実に一組はいる。んー、お前のレベル上げついでに探索範囲を広げながら行くか」
「ま、まさか……」
「おっし、モンスタートラップ探すぞ!」
「やっぱり!」
こうして再び地獄レベリングが始まった。
32階、なるべく寄り道をしながら階層を回る。そう言えばドラ子さんって道に迷ったりしないよな。
「ドラ子さんって来た道戻ったりしないですよね、どうなってるんですか?」
「経験と勘だ、それに人間よりも目も耳も良いしな」
「はぇー」
実はこのダンジョン、原理は不明だけどいつの間にか道が変わってたりする。
だからマッピングする冒険者はあまりいないし道を覚えることは不可能に近い。
まあドラ子さんのことだし経験と勘っていうのは本当なんだろうな。
俺たちが進んでいるとドラ子さんはまたも前方に冒険者のパーティを発見する。
そのパーティはモンスターとの戦闘中だった。
「また冒険者だ、しかも戦ってる」
「他に道は無いしあのパーティの戦闘が終わるまで待つか」
俺たちは前にいるパーティの負担にならないように距離を開けながら遠巻きに戦闘を見守る。
戦っているパーティの人数は三人、よく見ればその三人はなんだか見覚えのある動きをしていた。
「ん?あれは……」
俺は少し近づいて戦っているパーティを観察した。
「イグレ!?」
俺の声に気を取られたイグレたちはモンスターとの戦闘中にもかかわらずこっちを振り返ってしまう。
「は?ダンク?」
「おいバカ!モンスターの目の前だぞ!」
隙だらけのイグレにモンスターの攻撃が迫る。しかしドラ子さんが攻撃が届くより先にモンスターの前に出て攻撃する。
そしてイグレたちが戦っていたモンスターは倒された。
「うわっ、あ、ありがとう。君強いんだな」
「ああ、それよりダンク今のはちょっと無いぞ」
「そうだ、俺イグレたちの足引っ張っちゃったな……ごめん」
ドラ子さんが入ってくれたから助かったけどあれは本当にダメな行動だったな。戦闘中のパーティに声をかけるなんて……。
「俺たちも普段なら呼ばれたくらいじゃ気にしないんだけど……なんせダンクの声だったからなぁ、つい振り向いてしまった。君もピンチを救ってくれてありがとうな!」
イグレは素直にドラ子さんに頭を下げる。
「んで、なんだお前ら知り合いか?」
ドラ子さんは俺たちの顔を見比べながら尋ねる。
「こいつらが俺のパーティの仲間、グレート団です」
「グレート団のリーダー、イグレだ!」
「ナンティだよー」
「ふっグルーだ」
グレート団の面々は元気よく挨拶する。
「それよりダンク、なんでお前があの日帰ったはずのイスカとダンジョンにいるんだ?それにこのやたら強いお子さんは……」
「そ、それは……」
どう説明したものかとドラ子さんを見る。しかしドラ子さんは秘密は喋るなと言わんばかりの目で見てくるだけだった。
「えーとイスカの家が意外と近いらしいんだ。一度帰った後ダンジョンを登りたいって強い人を連れて戻ってきて……それがこの、ドラ子さんだ」
「ふーん?」
ちょっと苦しかったかな?俺は仲間のはずのパーティメンバーから疑心の目を向けられる。
「まあ訳ありって事か?」
よかった、イグレは何かあると理解したのかあまり深堀りしないでくれた。
「でも酷いぜダンク俺たちのパーティを抜けたと思ったらすぐに別のパーティに浮気するなんて。まあ可愛い子ばっかりだから気持ちは分かるが……」
「そうだー浮気だー」
「ハーレムパーティとは良いご身分だな」
イグレに続いてナンティやグルーからも非難が飛んでくる。
「そんなこと言われても……それに俺このパーティにいるのは料理人としての側面が強いんだ。強い冒険者ならドラ子さんだけで十分だしな」
「ドラ子さんね、確かにかなり強かった。じゃあ今のお前のパーティリーダーはそのドラ子さんか……よし、じゃあ勝負だドラ子さん!」
「へ?」
イグレはいきなりドラ子さんに言い放った。
「イグレ!?いきなり何言ってるんだ!」
「ダンクの良い所は料理だけじゃない、そんなダンクを仲間として十分な役割を与えられるか最初の仲間である俺たちが見てやる!」
「へぇ……いいぜ、おもしろい。何ならお前たち全員を相手にしてやるよ」
「えっドラ子さん!?」
完全なる売り言葉に買い言葉、でもドラ子さんがこんな提案に乗るなんて思ってなかったぞ。
「強いからってそんなこと言っていいのか、今の俺たちはフォーメーション組めばCランクに届きうる強さだぜ」
「どのランクだろうが問題はない」
「凄い自信だなぁ!決まりだ!」
ドラ子さんとイグレたちはその場で広がり構える。
俺はもう諦め荷を下ろしイスカと観戦することにした。どうしてこうなったのか。
カバンから昨日買ったペロキャンを取り出しイスカに渡すとペロキャンを舐めながらイスカは言った。
「ダンクモテモテだね」
「モテるとは違うと思うんだけどなぁ」
そうこうしてる内に早速イグレたちが仕掛ける。
「行くぞ!まずフォーメーションAだ!」
イグレの指示でまずグルーが先行する。
「スキル、影止め!」
グルーの影止めは、相手の足を止めるスキルだ。これでドラ子さんは移動が出来なくなる。
「うおおぉシャイニング・セイバー!」
次にイグレが剣士のスキルを使い動けないドラ子さんに斬り込んだ。
けどドラ子さんは紙一重でイグレの攻撃を体を反らして避ける、そのまま近づいて来たイグレの身体を掴んだ。
「イグレ!」
「構わない!俺は耐えれる、撃て!」
「わかった!フレイム!」
ナンティはイグレにかまわずドラ子さんに炎の魔法を放つ。けど掴まれたイグレはそのままグルー目掛けて投げ飛ばされた。
「ぐえ!」
グルーにイグレが直撃、そのまま二人はダウンする。
炎の魔法もドラ子さんのパンチの風圧でそのままナンティの方に反射する。
「嘘!きゃあ!」
魔法が返され直撃したナンティもダウン。戦いは一瞬で終わった。
「うーんこれでCランクはちょっと盛りすぎだな」
腕を組んだドラ子さんは三人にそう評した。
「痛てて……参った、降参だ。ドラ子さんって本当に強いんだな」
イグレは起き上がり両手を上げて負けを認める。
「こんなに強いのにドラ子なんて名前聞いたことがない、一体何者なんだ?」
グルーも立ち上がりナンティの無事を確認した後俺に尋ねてきた。
「えーと……」
俺はどこまで言っていいかわからず困り、ドラ子さんを見る。
「なんだ俺のことは隠すことは無い。俺はこの国のギルドを管理しているギルドマスターだ」
「えぇー!」
三人は驚いて飛び上がった。うーん、いいリアクションだ。




