第15話
20階、ボス部屋の前。俺は真剣にドラ子さんから説明を聞いていた。
「ダンク、トドメは任せるぞ」
「えっ!?」
「そんな驚くことか?」
「でも俺、強い攻撃手段なんて無いし」
「今までのレベリングと一緒だよ。俺が入ってすぐボスを瀕死にするから、最後に叩けばいいだけだ」
「は、はぁ……」
これから新しいボス、しかも対策できずときた。そんなボスのトドメを任せると言われても……俺は緊張して動きが硬くなってしまう。
「まーた緊張してんのか。全階で新しい体験をすることになるんだぞ、早めに慣れてくれ」
「し、しょうがないじゃないですか」
「はいはい、とっとと行くぞー」
「ぞー」
俺はドラ子さんとイスカに両手を引かれながらボスの部屋に入って行った。
ボス部屋、中央にはローブに身を包み杖を持ち宙に浮いているモンスターが現れた。
いかにも魔法使い然とした姿だ。宙に浮き、杖を構えるその姿には威圧感がある。
ドラ子さんは早速ボスに飛び掛かり殴りつける。
「む、浅い。こいつ物理攻撃を半減させるぞ!」
「ア、アタックガード!」
最初の一撃でかなりのダメージを負ったボスが俺の元まで飛んでくる。けど瀕死とまではいかず、俺の鍋のアタックガードを受けて弾け飛ばされてもまだ十分活動出来ていた。
「仕留めきれない!」
「任せろ!」
再びドラ子さんはボスに殴りかかる、しかしボスはその場で瞬時に消えた。
「消えた!?」
「テレポートだ!周囲を警戒しろ!」
俺は周りを見渡しながらイスカの元へ駆け寄る。
「どこから来る!」
鍋を構えながらボスが現れるのを待つ。
イスカもドラ子さんもボスを探すように周囲を見渡した。
「ダンク!うしろ!」
最初にボスを見つけたのはイスカだった。
俺が振り向いた時にボスは既に杖を構えていた。
「マズい!魔法攻撃だ!ガードスキル・プロテクト!」
杖から放たれたのは氷魔法、氷柱の礫が俺たちに降り注ぐ。俺はイスカの側に立ち、降り注ぐ氷柱を鍋で何とか防いだ。
「イスカ、大丈夫か!?」
「ヴィ!」
俺はイスカの無事を確認すると鍋を構え直しボスに向き合う。
ボスは既に次の攻撃態勢に入っていて杖をこっちに向けていた。
「は、早い!」
「させねえよ!」
けどすでにボスの後ろにはドラ子さんが移動していて、攻撃をするため振り被っていた。
「今度こそ!ダンク構えろ!」
「は、はい!」
俺は一瞬緊張する。外したらまたやり直しだ。
「ちょっと強めに、おりゃ!」
ドラ子さんはボスの後頭部を殴るとそのまま俺の方まで飛ばされてくる。
「アタックガード!」
ボスが飛んできた衝撃はそのままダメージとなり、アタックガードのスキルでボス自身に返る。
ドラ子さんの攻撃で今度こそ瀕死だったボスは俺のスキルで倒れた。
「ふぅ……た、倒した」
「ああ、まさかテレポートするとは。ちょっと危なかったな」
俺が10階のボスを倒すのに何時間もかかったというのに、ドラ子さんがやったらほんの十数秒で終わってしまった。やっぱこの人強すぎる。
「それよりどうだ、20階のボスのトドメを刺したんだからかなり経験値入ったろ。ギルカ見てみろ」
確認のためギルドカードを取り出そうとした途中、俺の周りからテレレレンと謎の音が鳴った。
「なんか変な音が鳴ったんですがなんですかこれ」
「新しいスキル覚えた音じゃないか?」
「え、そんなのあるんですか?どういう仕様なんです?」
「まあギルドからの演出だ、どうなってるのかは秘密」
「は、はぁ……」
俺は改めてギルドカードを出して確認してみる。
[名前]ダンク
[レベル]21
[職業]タンク
[スキル]プロテクト、アタックガード、ミラーガード
「本当だ、レベルがイスカに追いついた!しかも新しいスキル覚えてる!このスキルの詳しい説明は……」
「ミラーガードか、魔法を完全反射するスキルだな」
俺の横で一緒にギルドカードを覗き込むドラ子さんが教えてくれる。
「く、詳しいですね」
「そりゃギルマスだからな。でもイスカも同じくらい戦闘してるんだ、お前が優先的にトドメを刺してるとはいえ、まだイスカには追いついてないだろう。イスカ、どうだ?」
ドラ子さんの言葉を聞いたイスカは自分のギルドカードを確認して俺たちに見せる。その顔はどこか得意げだった。
[名前]イスカ
[レベル]28
[職業]エンチャンター
「レ、レベルの差が開かれてる……」
「イスカは才能があるからな。まあでもスキルを覚えて防御手段増えたのはいい事だ……しかしあくまで目標はブレイブガードだぞ」
「分かってますよ、それってどれくらいで覚えるものなんですか?」
「さぁ?スキルを覚えるレベルは個人差があるからなぁ。確かなことは言えないが、お前はちょっと時間かかるかもな。できれば上層階に行く前に覚えて欲しいが……」
「先は長そうだなぁ」
単に才能がないと言われたみたいで俺は地味にショックを受ける。
「そんなことより宝箱が出てる、さっさと中身確認してみようぜ」
ドラ子さんの言う通り部屋の中央には既に宝箱が置かれていて俺たちは三人で近づく。
「お前がボスを倒したんだし、また自分が宝箱を開けたいと言い出すかと思ったぞ」
「さすがに今回は俺の力で倒したなんて言えませんよ。それにドラ子さん鑑定もできるんだから、まずドラ子さんが宝箱を開けて確認する方が早いでしょう?」
「そりゃそうだな。では――」
ドラ子さんはにんまりとしながら宝箱を開ける。この人宝箱開ける時、毎回嬉しそうだな。お宝好きなんだろうか。
そんなことを思ってるとドラ子さんはさっさと宝箱を開け中身を取り出した。
「装飾品だな」
「耳飾りかな?装備効果とかありそうな形ですね」
宝箱から出て来たのは耳全体を覆うくらいの大きさのシンプルな銀製の耳飾りだった。
「ふむ……」
耳飾りを掌に載せながらドラ子さんはじっと見る。どうやら鑑定しているようだ。
「なるほどぉ」
目を開けたドラ子さんはニンマリしながら手の平の耳飾りを俺に渡してきた。
「これは多分プレゼントだな、お前が装備するのが一番いい」
「え?え?せめてステータスくらい教えてくださいよ」
何も教えられずいきなり耳飾りを渡された俺は困惑する。
「まあまあ、装備すれば……分からんか。でもお前が付けるべきものなのは確かだ。さあ、はよはよ」
あまりにもドラ子さんが急かすので俺は慣れない耳飾りに苦戦しつつ渋々装備した。
「でも付けてもすぐ分からないんでしょう?せめてどうすれば効果を実感できるかくらい教えてくださいよ」
そんな俺の言葉も無視して、ドラ子さんはイスカに新しい装備品を装着した俺の感想を聞く。
「どうだイスカ、ダンクの新しい装備。古めの防具に鍋と真新しい耳飾りがちょっとあべこべだが……」
「なんだかヘンテコー」
イスカの口から俺の分かる言語が出て来た!?
「でもなりふり構わないでダンジョンを登ろうとしてる冒険者って感じがする」
「だとよダンク」
「はぁ!?」
俺の驚きの声にイスカも驚き、ドラ子さんは笑いを堪えていた。
「イ、イスカ?」
「ダンク?」
分かる、イスカが口にしている言葉が。俺は驚きのあまり声を出せずそのままイスカに近づいて肩をつかんだ。
「わぁ、なに?」
「急に迫るなアホ!イスカがびっくりするだろう!」
ドラ子さんに頭を殴られノックアウトさせられる。しかし伝えなくてはイスカの言葉を理解できる事実を。
「わ、分かるんだよイスカが言ってる言葉が。理解できるんだ」
「本当?」
俺の言葉を聞いたイスカはドラ子さんの方を見る。
「ああ、あのアイテムは戦闘にこそ役に立たないが、言葉とか鳴き声なんかの意味が分かるアイテムだ」
すっごい機能の耳飾りだ。さすが空翼人のお宝ってところか。たぶん大当たりのアイテムだ。
「なるほど、たしかに今の俺向きだ……」
「じゃあじゃあ、これからダンクとお話しできるってこと?」
「そうだな」
「やったぁ」
イスカは喜びのあまり飛び跳ねる。
「わたしねぇダンクと話したいこといっぱいあったの。でもまずわたしの帰りを手伝ってくれてありがとう」
イスカは満面の笑みで俺を述べる。
物凄く可愛い笑顔だ。この依頼受けてよかった。
「話すにしても次の階に進むぞ、ずっとここにいたら新たなボスが出ちまう」
「ヴィ」
「わかりました」
俺たちは各々ドラ子さんに返事を返し次の階、21階への階段を上った。




