第10話
「このダンジョンはざっと見て100階くらい。さすがに今のダンクのレベルで頂上を目指すのは自殺行為過ぎる。せめて自分の身は自分で守れるくらいにはなってもらうぞ」
「わ、分かりました」
俺はダンジョンを進みながらドラ子さんの話を聞いていた。
進んでる間、ドラ子さんはイスカをおぶりながら片手間にモンスターを瀕死にていく。その後、俺がスキルアタックガードでとどめをさしていく形でレベリングが進められていった。
ちなみにイスカのスキル、アタックブーストで少しだけ俺の攻撃力はアップしている。
おかげで力が湧いてくるようだ。
「タンクならせめてスキルのブレイブガードを覚えて欲しいな」
「ブ、ブレイブガード……?」
「そう、中級のスキルだ。俺はどうしてもイスカを優先で守る。だからお前は自分で確実に身を守るんだ」
「それが……俺に必要なスキルですか」
「ああ、その名の通り勇気をもってどんな攻撃も一撃だけ耐えるスキル。それにないとは思うが、万が一俺の手が離せなくてイスカを守らなければいけない時にも役に立つ」
大丈夫かな、こういうのって言葉に出したらその通りになっちゃう気がする。
「じゃあさっそくレベリングを始めるか」
「えっ今やってるこれがレベリングじゃないんですか?」
「んなわけないだろ、こんなのは場所探しのついでだよ」
「場所探し?」
「ここだな」
俺たちは少し広い空間に出て止まる。
「さっきみたいに瀕死にしたモンスターを送る、イスカは俺にしっかりと捕まっとけよ」
「ヴィ!」
ドラ子さんはイスカを背中に負ぶって先に駆け出した。すると、今まで来た道に戻れなくなり広い空間からどんどんモンスターが湧きだしてきた。
「こ、これってモンスタートラップ!?」
「そうだ、レベリングと言えばモンスタートラップだろ?さあ行くぞ!たー」
力を抜くためなのか、気の抜けた掛け声を発する。
ドラ子さんは拳の圧だけでモンスターを瀕死にしてしまい器用に俺の方まで飛ばしてくる。
「ア、アタックガード!」
俺は必死にスキルを使い飛ばされてきたモンスターを倒していく。
アタックガードのスキルは受けた攻撃の三分の一のダメージを相手に返すガードだ。戦闘で使うには与えるダメージが小さすぎて削りにもトドメにも使えなかったけど、今はどんどんモンスターを倒していっている。
それだけドラ子さんの力加減が絶妙って事だろうけど、何せ数が多い。俺は呼吸を整える時間もない。
「うおおおおアタックガード、アタックガード、アタックガードぉぉぉ!」
飛んでくるモンスターはどんどん俺のスキルで倒れていく。見た事ない光景だ。
「ほら、まだまだ行くぞー」
「ひぃぃド、ドラ子さん!も……もう腕が上がりません!限界です!」
「そんな大声出してる内は大丈夫だ。もしダメそうでも死ぬ気で腕上げろー、死んじまうぞー」
「ひえぇそんなぁ!アタックガード、アタックガード――!」
幾つものモンスターを倒してもう既に腕に力が入らない。それでもスキルを使ってひたすらモンスターを倒し続けた。
数分後、そのには全てのモンスターを倒したドラ子さんと、疲労で倒れた俺。それと心配してくれているイスカがいた。
「はぁ……はぁ……ま、まさかブレイブガード覚えるまで……これやる気ですか……」
「当然だろ、時間は限られてる。それに体力もつくだろうし一石二鳥!とりあえずしばらくモンスターのトドメは全部お前がやるんだ」
「うぅ……が、がんばります……」
俺は倒れたままヘロヘロな声でドラ子さんに答えた。レベル上がる前に疲労で倒れなきゃいいけど。
「さて、モンスタートラップを攻略したら宝箱だな。何が入っているか」
モンスターをすべて倒した報酬として宝箱が現れた。考えてみればこういう演出も空翼人がやってるのか。ドラ子さんの話を聞いてからなんかダンジョンの裏側を考えるようになってしまったな。
「中身は……なんだポーションか。まあこの階層なら仕方ないな。ほれ、これで体力回復しとけ」
宝箱の中身のポーションを投げ渡され、俺は慌てて受け取る。そのまま蓋を開けて口の中に流し込む。
「ぷっはー!生き返る」
勢いよく飲んでるとイスカの視線がポーションをじっと見ていることに気づいた。薬草を煎じた物だろうから別に美味くはないんだけどな。
「イスカ、これ飲んでみる?」
「ヴィ!」
その言葉を待ってましたととばかりに勢いよく答えたイスカは、俺が渡したポーションの残りを飲み込んだ。
そう言えばマズい物を口にしたイスカの反応はあんまり見た事ない。どんな反応するんだろう。
俺が感じたようにイスカもポーションは口に合わなかったようで、舌を出しながら顔を歪ませた。
「げぇ」
イスカは舌を出してポーションの瓶をすぐに俺に返す。
その反応に俺は吹き出してしまった。
たぶんイスカの舌は上品なんだろう。もしイスカがポーション必要な時があれば、味付けを変えてやる必要があるかもしれない。そんなことを思いながら俺は回復した体で立ち上がる。
「ほら、遊んでないで次行くぞ時間が限られてるんだからな」
「は、はい」
体力が回復した俺はイスカと共に先に歩くドラ子さんに付いて行く。
それから数時間後、地獄のレベリングが続いた。
現在七階、俺のレベルはなんと11にまで上がっていた。一気にレベルが上がったおかげで強くなった……気がする。
ドラ子さんがモンスターを弱らせ俺の方に飛ばす、そしてトドメを俺がさすという流れは続いたが、とうとう俺は根を上げた。
「も、もう駄目です……」
「根性足りないぞ!」
「それにイスカが……」
「なに!?」
暗くなってからダンジョンに入り、それから作戦会議と俺のレベリング。ダンジョンの中だと分かりにくいが既に深夜と呼ばれる時間帯になっていた。
イスカはドラ子さんの背中で舟を漕いでいた。
「おわぁ!ごめんなイスカ!こいつをしごくのが楽しくてつい――今日はもう休もうな」
ドラ子さんは即座にモンスターを全滅させて止まる。
ダンジョンを登るには何日もかかる。当然寝るのもダンジョンの中だ、だから俺がいたグレート団では見張りを交代で立てモンスターを用心していた。
けどこのパーティだとイスカに見張りをさせるわけにはいかない。俺とドラ子さんで交代でやることになるだろう。少人数パーティだとこういうデメリットもあるんだな。
イスカのために早々に寝床を準備する。するとすぐに穏やかな寝息を立てて寝てしまった。
「じゃあどっちが先の見張りをするか決めますか」
「疲れてるだろ?俺は数日間寝ずに活動できるからさっさと寝てしまえ。つーかお前疲れて見張りなんてできないだろ」
大変ありがたい言葉をいただいた。正直かなり助かる。俺の身体は全身疲れ切っていて盾を構えてた腕も上げるのが辛いくらいだ。ここはお言葉に甘えてしっかり休もう。
「ありがとうございます。お言葉に甘えてここは任せますね」
「おう、明日はもっと鍛えるからしっかり休めよ」
さらっととんでもない言葉を聞いて俺は青ざめる。こうして俺の怒涛の冒険者復帰の一日目は幕を閉じた。




