98.オーナーとの関係
オークションが無事終わった。
五十嵐の出品オルダは30万円で落札され、畑谷の出品オルダはガネーシャのペンダントトップが8万円、ループタイが9万円、香川さんから貰った石が7万円、鏡面緑のヒスイ原石が30万円、白っぽい大きな原石が820万円で落札された。
つまり、五十嵐の手元には15万円、畑谷の手元には…
「437万円!?」
畑谷は驚いている。
「もしもうちで売ってたら…10分の1だったっす。しかも一番大きいものなんて、5年後も売れ残っていた可能性があるっす」
「これでもう今回のギャラはいいか?」
「十分っす」
五十嵐は座ったまま、両腿をパンと叩いた。
「さて、交渉だ。あんたらもフォローしろよ」
「朱里さんとは事前に打ち合わせしたのか?」
「そりゃそうだろ。一番強い味方だ」
オレたちはオーナー部屋に戻るために立ち上がった。
その時、会場に多くのオルダがオブジェ的に飾られていることを思い出した。そういえば、なんでこっちのオルダには畑谷のオルダが共鳴しなかったのだろう。岡田教授は和綴じノートを持ってここに来ていて挨拶させたのだろうか。それとも、和綴じノートのオルダはかつて岡田教授が契約していたオルダで、その時に挨拶をしていたのだろうか?
気にはなるが、五十嵐と畑谷がスタスタとオーナー部屋に向かってしまったので、オレも慌ててついて行った。
オーナー部屋に戻ると、オーナーは畑谷に「おめでとう」と声をかけた。
「ありがとうございます」
畑谷は反射的に頭を下げて答えた。
朱里さんも慌ててオーナー部屋に戻ってきた。五十嵐の助太刀のためだろう。
「さあ、オーナー。話の続きをしましょうか」
と五十嵐はオーナーの前に座った。
オーナーは深くため息をついた。
「別にここで働かなくても、他にもいくらでも就職口があるだろう」
「俺、オルダハンター以外の仕事やった記憶がないんで。ね、戸塚さん!」
五十嵐に「さん」付けで名前を呼ばれ鳥肌が立ったが、
「そうだな。オレもない。もし転職することになったら、履歴書をどう書けばいいのか分からない」
オーナーの顔が強張ったのが分かった。
「お前たち、根音村で何を知ったんだ?」
オレは五十嵐の背後に立ちながら答えた。
「まあ、五十嵐を助けるために色々調べましたよ。隣にいる畑谷君と一緒に」
「うっす!」
「その途中で気づきましたよ。あれ、オレ、オルダハンターになる前の記憶が無ぇって。な、五十嵐」
「俺もオルダハンターになる前の記憶がなかった」
朱里さんは驚いて「噓でしょ」と呟いた。
「逆に聞きたいです。オーナーと佐々木氏の関係。オレも五十嵐も脳神経外科の佐々木先生の紹介でオーナーに出会っている。その佐々木先生の父親が、ここにオルダハンターとして出入りしていた」
オーナーは頭をポリポリと掻いた。
朱里さんは状況を理解できていないようで、
「戸塚くん、佐々木さんと知り合いではなかったの? だからか。メール来た時も変だと思った」
「会った記憶が一切ない」
「五十嵐くんも?」
「俺もない。気が付いたときにはオルダハンターやってた」
朱里さんは「そうなの…」と呟いた。
「なあ、オーナー。調べていく中で、佐々木氏が根音村に通っていたことが分かったんだ。オーナーは根音村について、どれくらいの情報を持っているんだ? 岡田教授とはどんな話をしたんだ?」
オーナーはハアと大きく息をついて、椅子の背もたれに寄っかかった。
「結構調べたんだな。そこまで調べられるとは思ってもなかった」
オーナーはそう言ってから、体勢を元に戻した。
「結構調べたんだな。そこまで調べられるとは思ってもなかった」
オーナーはそう言ってから、体勢を元に戻した。
「はっきり言おう。俺は小耳に挟んだ程度しか根音村に関しては情報を持っていない。お前らも知っている通り、オルダの産地は概ねヒスイの産地だ。でも、佐々木さんからヒスイ以外でもオルダは生存するという話を聞いていた。その産地の一つとして根音村の話は聞いていた。ただ、佐々木さんからは根音村には価値のあるオルダは残っていないという話を聞いていたから、気にすることもなかったんだが、今年に入ってから岡田教授が根音村の話をしだしてね」
「岡田教授から話してきた?」
「教授の下で働いていた人だったり、うちのお客さんだったり、根音村出身者から話を聞く機会が複数あったようで、その村に伝わる話の中にオルダのことを言っているのではないかと疑われるものがあったとか」
鬼虎のことだろう。
「岡田教授は、その話が真実であれば、その村にオルダを産みだすものが存在しているはずだとか言っていて根音村に調査に向かった。しかし、その後音沙汰がなくて、俺の元に届いた連絡は警察から、岡田教授が亡くなったというものだった」




