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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
95/107

95.リサイクル商品

「結構骨董寄りだな。もっと洗濯機とか冷蔵庫とか古着とかそういう生活用品の類が多いのかと思ってた」


 五十嵐は店内を見渡しながら言った。

 しかし、オレと畑谷はそれどころではない。数多くの商品の中からオルダを見つけなけなければならない。しかも、どうやら…


「オルダ、一匹ではないな」


 オレが言うと、畑谷が反応した。


「耳鳴りに悩んでる時には分かってなかったっすけど、今なら分かるっす。一匹じゃないこと」


 オレたちの話を聞いていた五十嵐は言った。


「まじかよ。俺は聞こえないから、目視しかできねえよ。この中から目視か…とりあえず石の類からチェックするわ」


 オレたちはバラバラに商品の中からオルダ探しを始めた。

 五十嵐ではないが、もっと中古の生活用品がメインかと思っていた。確かに中古の生活用品も多くあるが、それ以上に陶磁器や茶道具、鉄瓶のほか彫刻、武具など古美術品が多い。オルダの鳴き声が強い方へ行きたいが、右からも左からも聞こえる。さらに狭い中にモノが多すぎて、どれかに絞ることが難しい。ヒスイ彫刻も多い。中国彫刻でよく見る白菜や龍、象、亀、観音などの立体的なものや、板型で片面だけに彫られたもの、そのほかバングルや指輪のようなリング型のものも複数存在している。

 片手にペンダントヘッドを持ち、五十嵐ではないが石の類から優先的に確認していく。挨拶させては無反応、次の一つも無反応、そしてまた無反応。そうやって繰り返していくと、あからさまに明るい緑色のヒスイ彫刻が見えた。ガネーシャ像が彫られたペンダントトップだ。これだと思った。オレは挨拶をさせた。共鳴が少しだけ小さくなった。確認のために背面の真っ平らな部分をこすると、オルダが現れた。


「畑谷君、これにオルダがいる」


 オレが畑谷に話しかけると、畑谷も、


「俺も見つけました、これ」


 と言った。それは完全に原石だった。白色をして縦横30センチくらいありそうである。

 オレはペンダントトップを畑谷に渡し、代わりに原石を受け取ったが軽く20キロ以上ありそうなほど重い。一度床に置いて、自分のオルダと挨拶をさせた。共鳴は少し収まったが、まだいる。

 五十嵐はオレたちからオルダを回収し、「共通点はねえなあ」と言いながらレジ台に置いた。


「まだいんの?」


 五十嵐は聞いてきた。


「まだまだいる」


 オレが答えると、「豊作じゃん」と五十嵐が驚いて言った。

 五十嵐が驚くのも無理はない。リサイクルショップ1店にオルダは1つあればいい方である。それが既に3体以上いることが確定している。

 ただ、この店はヒスイ彫刻が多すぎて、生気のあるオルダの区別がつきにくい。どの商品にも光が当たって見える部分と影になっている部分があり、少し明るめのオルダを選んでも、手に取るとそれほど明るく見えなかったりする。

 目視で探していた五十嵐が言った。


「いたぞ」


 五十嵐が持っているものは、8センチくらいの鏡面緑のヒスイ原石だった。

 オレと畑谷はその原石に挨拶させた。鳴き声は少し和らいだが、まだいる。


「あと三匹はいるな」

「分かるんすか?」

「今一つ消えたことで、鳴き声が分かりやすくなった」


 オレは鳴き声の方向を定めて動いた。あった。緑色と黄色っぽいマーブル柄のループタイである。表には鳳凰の彫刻が彫られている。挨拶をさせたら、オルダの共鳴が一つ消えた。あと二つだ。


「畑谷君、これ」


 オレは畑谷にループタイを渡し、次のオルダの鳴き声を聴く。

 畑谷は挨拶を終えた後、もう一体のオルダの鳴き声を聴いているようだ。そして、レジの方へと向かって行った。

 そして、見つけた。ヨモギ緑の丸っこい手のひらサイズのヒスイ原石だ。こするとオルダが現れた。オレはオルダを挨拶させ、残るオルダの共鳴は一つとなった。その方向は、まさに畑谷がいる場所から聞こえる。


「あった、あったっす。やっぱりだ」


 畑谷が手に取ったのは赤茶っぽい塊だった。


「なんだ、それ?」

「硯っす」

「硯?」


 オレと畑谷が互いの石を交換して、オルダを挨拶させた。オルダの共鳴は完全に止んだ。

 その硯は四角いが角が丸く加工され、頭の部分に山に雲がかかったような彫刻が彫られている。表面をこすってみると、赤茶の石の中に見にくいが黒っぽい影が現れた。


「硯にオルダ?」

「硯は輝緑凝灰岩、粘板岩、頁岩が主に材料になるんすけど、それ、輝緑凝灰岩でできてるんす」

「凝灰岩? 長命寺と同じってこと?」

「そうじゃないかと思って確認したらビンゴっした」


 すべてのオルダを並べた。

 全て加工の具合は異なっており、共通点が分からない。

 畑谷が全て指さしながら言っていた。


「ガネーシャのペンダントトップ、インドっぽいじゃないっすか。これ、糸魚川のお土産です。で、このデッカイのも鳥取の若桜産のヒスイ原石す。鏡面緑のヒスイ原石は糸魚川産、ループタイは分からないっすけど、この硯は山口の宇部っす。つまり、共通点は日本産」


 ループタイの産地が分からないというのが若干引っかかるが、概ね日本産のものにしかないのは間違いないようである。


「他のヒスイは日本産でないのも多いの?」

「細かい彫刻があるのは中国で作成されたものだったりするんすけど、ジェイド…ヒスイ自体の原産地はミャンマーのものが多いっす。でも、オルダいなかったっすもんね。加工の途中で消えちゃうんすかね?」

「可能性の一つとしては考えられるな」

「このオルダいくらになりそうっすか?」


 畑谷はオレと五十嵐を交互に見た。

 五十嵐は最初に硯をはじいた。


「これは無理だな」

「価値的には3000円くらいするっすよ」

「オークションはヒスイが前提だから」


 そして、オレが続いて答える。


「このガネーシャもあまり値段付かないと思う。頑張って2万くらい。このでっかい原石は最低でも30万くらいは狙えるかもしれん。鏡面緑も最低20万くらいかかな」

「おお!」


 五十嵐は丸っこいヨモギ緑のヒスイを手に取って言った。


「これあ、オレの予想では18万」

「最低15万くらいだな」

「だいたいそんなもんだよな」


 畑谷はざっと計算して、


「つまり、70万くらい狙えるってことっすか?」

「うまくいけばな」


 そしてオレたちは、このオルダを持って秋葉原に向かった。


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