94.帰路
「オルダ、全然共鳴しないっすね~」
車の運転をしながら畑谷が言った。
「そんなに簡単に出会わないよ。だからこそオルダという付加価値がついて、ただのヒスイでも数十万、数百万という値段で取引されることがあるんだ」
「根音村では半径2km以内に何体もいたから感覚バグってました」
後部座席から五十嵐が、
「そんなにいたの?」
と聞いてきた。
「お前も行った黙光寺と庚申塔だろ。あと、星影神社と、笹嶺神社、その先の延命寺に2体」
「あ~。でも、何一つ持って帰れなかったんだろ?」
「お前が持ってたオルダはどこで見つけたんだ?」
五十嵐は自分のカバンをポンポンと叩いて「これ?」言った。
「これは、浜松の川で見つけた」
「浜松?」
「ヒスイが見つかってるって話聞いて、ついでだから村に行く前に寄ってみたらあった」
「畑谷行く?」
「行ってもいいっす。東名の入口ありましたよね、浜松」
「残念ながらオルダはこれだけ。他にもあったら、俺が採ってる」
「つまんないっすね~」
結局、高速道路までの一般道でオルダの共鳴は聞けなかった。
畑谷は料金所のETCを抜けながら、
「俺、ノーギャラってことっすか?」
と不服そうに言った。
畑谷の後ろに座っている五十嵐は、畑谷を覗き込むようにして訊いた。
「え、今回のギャラはオルダだったの?」
「そういう契約しちゃったんすよね。調査中に見つかったオルダは全部もらえる」
「で、見つからなかったのか」
「そういうことっす。一個はあるんすけど、戸塚さん曰く価値は低そうらしくて」
そこでオレは答えた。
「東京まではまだまだある。オルダは意外なところで見つかるもんだ」
オレの答えに、五十嵐がのっけた。
「ビックリする場所にあったりするよ」
「そうなんすか?」
「リサイクルショップとか」
五十嵐の回答に畑谷が不満そうに言った。
「それは戸塚さんから最初に言われました」
「手っ取り早いのはそこだもんなあ」
「俺、リサイクルショップ経営してるんす。で、うちにオルダがあるのは確定してるんす」
「まーじー? じゃあ、店にあるオルダをオークションかければ?」
「それは戸塚さんと約束済みっす」
「そうなんだ。あれ? オークション今日じゃね?」
五十嵐に言われて気が付いた。
「ああ、今日は10日か。畑谷君は今日のオークションに参加したい?」
「え、今日っすか?」
「今日。次は来月の10日」
「まーじっすか。じゃあ、今日参加するっす」
「OK、オーナーに連絡する」
オレはオーナーに電話を入れた。まだオーナーの仕事前だから出ないかなとも思ったが、出た。
『はいはい』
「あ、オーナー?」
『どうした?』
「今日、出品したいんだが」
『根音村で見つかったのか?』
「根音村では見つかってない」
『何体?』
「何体になるかは不明だが、とりあえず枠よろしく」
そこで五十嵐が、
「スピーカーにして」
と声をかけてきた。
オレは携帯をスピーカーにした。
「オーナー?」
五十嵐が話しかけると、オーナーは驚いた声で言った。
『イガちゃんも一緒なのか?』
「オレの分も1枠取っといて」
『了解』
「あと、今回の調査で経費100万近くかかったんだ。後で請求するよ」
『は?』
「3か月入院する羽目になったんだよ。それくらい負担しても罰は当たらないと思うぜ。あと、オーナーのとこで俺雇って」
『は?』
オーナーから二度目の「は?」が出た。
たしかに電話だけならそういう反応になるだろう。
「俺、片目失って、もうオルダハンターできねえの」
『…あとで話をしよう』
「頼むよ」
『何時に来る?』
五十嵐は「何時かな?」とオレに話しかけた。
「分からん」
オレの答えが聞こえたようで、オーナーは言ってきた。
『18時半までには来い』
「分かった」
オレは答え、電話を切った。
「じゃあ、行先俺の店にするっすよ」
「それでお願い」
オレが頼むと、五十嵐が口を挟んだ。
「ごめん、まずは俺の家行ってもらっていい? 鍵を確かめたい」
「家どこっすか?」
「川崎」
オレたちは海老名SAで昼食を取り、カーナビを五十嵐の家にセットし、再出発した。
まもなく五十嵐の家に到着し、鍵が変えられていないことは確認できたが、ポストの中に内容証明が押し込まれていたらしく、慌てて不動産屋の口座に振り込んでいた。
その後、オレたちは畑谷の店に向かった。
「まもなくウチの店っす」
1~2分でオルダの共鳴が始まった。
「オルダ鳴きはじめたっすね」
「キタな」
「これがウチの店っす」
畑谷は目の前に現れた『リサイクルショップくれよん』の前に車を停めた。




