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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
92/107

92.現地調査

 オレたちは、徐々に穴に近づいて行った。オルダの共鳴はどんどん強くなる。

 周囲の地面よりも少しばかり凹んで穴となっている部分がある。先日検視官が骨の上に軽く土をかけた場所だ。

 オレはそこを指して言った。


「ここです」

「土をかけていたんですね」


 教育長の上田さんが言った。


「はい、すっかり忘れていました。検視官が最後に軽く土をかけていました。スコップやシャベルはそこに置いた状態にしています」


 オレは穴の横に揃えられたスコップとシャベルを指した。

 教育委員会の皆さんは、スコップで掘ることを想定していなかったのだろうと思う。オバサマたちは靴こそヒールの無いローファーを履いているが、ボトムスはスカートだ。


「これは、俺らがやる感じっすよね?」


 畑谷が言ってきた。

 清水さんは初オルダの共鳴でほぼ機能不全に陥っている。

 五十嵐は病み上がりな上、片目での行動にまだ慣れていない様子だ。

 教育委員会の唯一の男性・川本さんも結構な年配で、掘ったらぎっくり腰を発動しそうである。


「あ~そういうことになるな」


 オレと畑谷は諦めてスコップとシャベルを手に取った。骨を傷つけないように慎重に、オルダの鳴き声で集中力が途切れそうになるが、少しずつ掘っていく。軽く土がかかっている状態だったので、それほど苦労なく骨が見える状態にもっていけた。


「これって…」


 骨が現れた瞬間、畑谷が唖然とした顔で言った。

 オレも同時に言った。


「どういうことだ?」


 教育長の上田さんが、


「何か状態が変わったんですか?」


 と聞いてきた。

 オレは掘る手を止めて、上田さんの方を向いて言った。


「白い骨が千代の子のものと考えられるものです。この骨にオルダが住んでいて、骨に触れるとオルダが体に入り込む可能性があります」


 教育委員会の皆さんと五十嵐は穴を覗きこんだ。

 オレは話を続けた。


「で、もう一体の黒い方が千代の骨と考えられるものなのですが…前回発掘したときはこんなに黒くなくて、頭蓋骨も綺麗な状態でした」


 露出した千代と子の骨。子の骨の方はほぼ変わっていない。しかし、千代の骨の方があからさまに朽ちているのが分かった。前回綺麗な状態であった頭蓋骨は、何本もヒビが入っている。


「空気に触れて酸化しちゃったんすかね?」


 畑谷が言った。


「骨が?」


 オレが言うと、


「表面に銅とか鉄分みたいなのが付着して」

「ヒビは?」

「元々脆かったところに土をかけたから重みで割れたとか」

「なんだか、千代さんに申し訳ないことをした気分だ」


 教育委員会の人たちは持参したメジャーで寸法を測り、カメラで撮影し、書類に書き込みを開始した。

 オレと畑谷と清水さんはオルダの鳴き声がきつくなったため、少し離れた場所に移動して、教育委員会の人たちの行動を遠くから見ている。

 五十嵐は、教育委員会の人たちの邪魔をしないよう、でも、じっくりと骨を観察している。

 そこにガサガサという足音が近づいてきた。


「ああ、いらっしゃいました」


 振り返ると、香川さんと松井さん、そして大きな荷物を持った検視官の方々がこちらに向かっていた。三田さんはいないようだ。


「いや~、オルダの共鳴すごいですね。耳栓をしていますが、それでもかなりきついです。これ聞きながら、お二人はあの長時間穴掘りされてたんですね」


 香川さんが耳珠をポンポンと押しながら言った。


「どうされたんですか?


 オレが訊くと、


「鬼虎の骨に異常がありまして、診療所にご連絡したら、朝からこちらにいらっしゃっていると伺いまして」

「鬼虎の骨に異常?」

「黒く変色し、少し触るだけで崩れる状態といいますか」


 それはまるで千代の骨と同じだった。


「千代の骨もその状態です」


 オレが言うと、香川さんは「やはり」と言った。


「それを確かめたくて、急いでやってきました。鬼虎の骨も完全に崩れてしまう前に、元の場所に埋葬しようかと」

「検査とかはされないんですか?」

「サンプルとして一部を残しています」


 検視官が持っていた大きな荷物は鬼虎の骨だった。

 松井さんと検視官たちは教育委員会の人たちがいる穴の方へと向かっていき、千代と子の骨に合掌し、その後隣に空いている穴に鬼虎の骨を入れて、合掌した。

 教育委員会の人たちは、その穴についても大きさを測り、カメラで撮影し、書類に書き込んでいる。

 オレと畑谷と清水さんと香川さんは、それを遠くから見ている。

 そこへ五十嵐が戻ってきた。


「骨じっくり見た?」


 五十嵐がオレに訊いてきた。


「いや、ほとんど見てない」

「オルダ、一匹二匹じゃない」

「まじ?」

「黒いのとか、白っぽいのとか、違う色のオルダが何体かいて、骨の中で交尾でもしてるのかな? 繁殖してるような感じ」

「そうなんだ」

「だから、一匹くらい人の体にうつっても、骨の中にはまだいるから、また繁殖するみたいな感じなのかも」


 教育委員会の調査が完了し、骨は土で覆い、完全に埋葬された。

 オレと畑谷は持参した花を千代と子の埋葬された場所に活け、合掌し、成仏を祈った。

 こうして、根音村でのオレたちの最後の仕事は終わった。

 

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