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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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77.助手

「佐々木医師は、本人たちの同意を得てオルダと契約を結んでもらったと言っていましたが、その記憶はないんですか?」


 一通り話し終えた後、香川さんはオレに言った。


「そこの記憶は全くないです。でも、自分のオルダは、誰かから貰った記憶があるんです。その時オレはオルダを探していたような気がするんですが、契約を結ぶ前にオルダ探しなんてするかとも思いますし…。もしかしたら、こうやってオルダを探すんだと教えられて、その後納得して契約をしたのかもしれないです」

「なるほど。では、意思能力はあった可能性はあるんですな」

「まあ、記憶は定かではないですが、今となってはこの仕事で稼げているので、良かったと言えば良かったです。怖いのは契約解除ですね」


 香川さんは深く頷いて言った。


「それは私も同じです」


 その時、オレの携帯が鳴った。オーナーから返事が来た。思っていたより早かった。彼の中での朝食でも食べながら確認したんだろうか。

 オレはメールを開いた。


『おつ。オルダの巣は見つかったのか? 五十嵐に教えたのは岡田教授の秘書だ。佐伯という男性で、岡田教授が稲塾大学にいた頃のゼミの生徒だった。根音村の出身という話を聞いたと伝えた。岡田教授は彼からオルダの存在を知らされ、研究を始めたらしい』


 オレはオーナーに取り急ぎお礼メールを返した。ついでに、オルダの巣は見つかったが、量産できるようなものではなく、二度と近づきたくないものだと伝えた。


「香川さん、うちのオーナーから返事が来まして、佐伯という男性だったようです。教授のアシスタント」

「佐伯? 今までその名字は聞いてないな」

「オレもです」


 診療所の扉が開いた。


「すみません、遅くなりました」


 入ってきたのは清水さんだった。

 香川さんは驚いて、清水さんを見た。


「あれ? どうされました?」


 清水さんは不服と言った顔した。


「五十嵐さんにオルダの代金を支払わなければならなくて、『我々がいるときにお支払いください』と言ったのは刑事さんじゃないですか」


 香川さんは思い出したように言った。


「ああ、そうでした。そうでした。失礼しました」

「そうだ、清水さん」


 次にオレが清水さんに話しかけた。


「この村に佐伯さんという家は、何軒ありますか?」

「佐伯さんですか。結構多いですよ。何故ですか?」

「ちょっとお伺いしたくて」

「オルダ関連ですか?」

「まあ、そんなところですね。お寺の近くの佐伯さんはどれくらいいますか?」

「どの寺です?」

「それが分からないんです。笹嶺神社からは離れた場所の寺だとは思います」

「万福寺や永福寺は外れるということですね…となると、うーん、寺に隣接している佐伯さんということですよね…伝さん家かなあ」

「伝さん?」

「大谷寺というお寺があるですけど、そこの斜め前あたりにある家が佐伯伝兵衛さんの家です」


 オレは、ポケットに入れていた地図を取り出して広げた。

 大谷寺は村の入り口あたりにあり、笹嶺神社からは最も離れた場所にある寺だ。


「その家には、東京の大学に通われた男性がいますか?」

「東京の大学? いや、いないですよ。高卒で家継いでブドウ作ってます」


 それを聞いて、香川さんが言った。


「では違いそうですね。佐伯姓で東京の大学に進学した男性はいますか?」

「それなら、一平さんじゃないかな」

「一平さん?」

「佐伯一平さん、結構有名な大学に行ったんですよ。大学名はパッと出てこないですけど」

「その佐伯一平さんの家はどこですか?」

「えっと、この辺りです。寺からはちょっと離れてますけど」


 清水さんは地図を指した。

 そこは、龍王子と万福寺のちょうど間のあたり。寺が近くにあるという場所ではない。


「でも、一平さんは今いないですよ」


 清水さんは言った。


「たまに家の空気の入れ換えに帰ってくることもありますけど、拠点は名古屋です。ここの佐伯さんの家は基本空き家です」

「他に大学に行った佐伯さんは?」

「他にいたかな…。狭い村だから、誰かが東京の大学に行くと耳にはするんで。でも佐伯さんで他に東京の大学に行った人浮かばないですね」


 香川さんは口の下に人差し指をあてた。


「佐伯姓ではなく、稲塾大学に進学した人はいますか?」


 それを聞いて、清水さんは「あっ」と思い出すように言った。


「います、佐伯さん」

「え?」

「稲塾大学に行った佐伯さん。普段佐伯さんと呼ばないから忘れてました」

「普段佐伯さんと呼ばない?」

「普段は心松寺さんと呼んでいて。心松寺の住職さんが佐伯さんで、稲塾大学に行っていたという話を聞いたことがあります。大学で研究してたようですが、寺を継ぐということで戻ってきたんですよね」


 オレと香川さんは再び顔を見合わせた。

 心松寺ならばオルダの存在を知っていても不思議はない。そう思った。言われてみれば、オレたちが訪れた際に怪訝そうな顔をしていた。

 しかし、それならば寺の近くではなく、寺そのものじゃないかと思った。


「心松寺、オレ行きましたが、オルダはいないっす。共鳴しなかったんで。五十嵐もオルダの共鳴に触れていないので、それは間違いないと思います」

「あとで行きますか」


 香川さんが言った。

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