66.実験その1
星影神社に出向き、神主の目を覚ます方法を試したい、そのために石の一部を分けていただきたいということを伝えると、神主の妻は了承した。
その後、星影神社さんも合わせた一行で診療所に向かった。
「おかえりなさい」
と裏口ドアを開けてくれた医者は、オレの背後にいるご一行に目を丸くして驚いた。そう言えば、一報を一度も入れていなかったと反省した。
「表のドアを開けますので、表にお回りください」
医者は診療所の表のドアを開けて、一同を中に入れた。
「みなさんでお越しになった理由は?」
医者は玄関でスリッパに履き替えているオレたちに純粋な疑問を投げかけた。
「神主さんを起こす実験をしようと思いまして」
香川さんが答えると、医者は目を輝かせた。
「方法が見つかったんですか?」
「現段階では最も可能性が高そうな方法という状況ですね。とにかくやってみなければ分かりません」
「では、2階へ」
医者が一同を二階へと案内しようとしたので、オレは一旦止めるように言った。
「あの、指先から血を出す良いアイテムがあれば、それをご用意いただきたく」
医者は一旦考える仕草をして、
「では、ランセットを使いましょう」
「ランセット?」
「指先にチクッと指す針のようなものです」
「では、それをお願いします」
医者は問診室に入りランセットと消毒シートを持ってきて、
「では、2階へ」
と一同を案内した。
2階の神主の部屋に到着すると、香川さんが一歩前に出た。
「神主さんの石はそれですね」
棚の上に置かれたオルダがいる加工石を指した。
「はい」
医者が答えると、香川さんは次にオレを見て言った。
「血を石に吸わせればいいんですね」
「ええ。できれば、オルダに直接」
医者は状況を察して、消毒シートの封を開けて、
「血を出してよい指を出してください。おそらく左手の薬指が一番困らないです」
「お願いします」
と言って、香川さんが医者に左手を、手のひらを上にして出した。
医者は香川さんの指を取り、消毒をし、「いきますよ」とランセットを押し当てた。
オレは慌てて石を取りに行き、こすってオルダを浮かび上がらせ、香川さんに渡した。
香川さんは血の出た左薬指をオルダに当てた。
「これで終わりですか? 特にないも起こりませんが…」
香川さんはオレに聞いてきた。
「ええ、上手くいっていれば。あいにく、現状ここには挨拶済みのオルダしかいないので、共鳴の確認ができませんが…」
すると、背後から女性の声がした。
「先生!」
神主の妻が前に出てきて、神主を指した。
それに釣られてオレたちは神主を見た。
そこにはうっすらと目を開けた神主がいた。
「目を覚ましました!良かった…」
神主の妻はホッとしたようにその場に腰を落とし、鳴き始めた。
「あれ…おれ…、どうしてここに?」
神主は少し衰弱気味の声で聴いてきた。
医者は神主の心臓音を確認し、脈拍を確認し、
「異常はなさそうですね。笹嶺神社で倒れられて、2日ほど眠っておられました」
と神主に伝えた。
神主の妻は腰を落とした状態のまま香川さんの方を見て、ほぼ土下座のような状態で頭を下げた。
「刑事さん、ありがとうございます。本当にありがとうございます」
「いえ、目が覚めてよかったです」
これで仮説は立証された。
そう思ったのはオレだけではなかったようで、畑谷、香川さん、松井さん、医者の5人は互いに目で確認を取った。
「元気になりましたら、笹嶺神社に行かれた際のお話を聞かせてください」
香川さんは、ベッドに横たわる神主に言った。




