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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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47.実験

 夕食のあと、みんなに実験の手伝いをしてもらうことになった。

 挨拶をしていないはずの五十嵐のオルダと星影神社のオルダで挨拶をした場合、二人のオルダを診療所の外に持ち出した場合、五十嵐と神主さんに何かしらの反応があるか。それを確認したいということで、まずは二人のオルダを挨拶させることにした。

 五十嵐の様子を診るのは看護師とオレ、神主の様子を診るのは医者と三田さん、挨拶させる役が畑谷である。

 医者の機転で、神主にベッドサイドモニタを装着することにした。一台しかないので、今日眠ったばかりの三田さんにとなった。


「いいっすか、いきます~」


 畑谷の声を合図に、オレたちは二人に注目した。


「一つ目挨拶終わりました~。二つ目行きまっす!」


 オレはジーっと五十嵐を見た。しかし、何の反応もなかった。


「反応ありませんでしたね」


 看護師の言葉に、オレは黙って頷いた。


「あっちはどうでしょう?」


 オレたちは神主の部屋に移動した。


「どうでした?」


 オレが声をかけると、医者はそれに気づいてこちらを見て、首を横に振った。


「何も変化はありませんでした。心電図も安定してます」

「そうですか。では、次はオルダを外に持って出ます」


 オレは五十嵐の部屋に戻りがてら廊下にいる畑谷に、


「では、実験2に移る」

「らじゃっす!」


 畑谷は石を持って1階に降りて行った。

 オレと看護師は五十嵐の部屋に戻り、五十嵐に注目した。

 窓の外から「離れまーす」という畑谷の声が聞こえた。

 今まさに離れていっている最中なのだろうが、五十嵐の表情に変化はない。手も動かない。


「動かない」


 オレは思わず呟いた。


「そのようですね」


 看護師は残念そうに言った。

 オレと看護師は再び神主の部屋に移動した。


「どうでした?」

「いや、反応はなかったですね」

「やはりノンレム睡眠状態なのでしょうか」

「考えられるのはそれしか…」


 しばらくして畑谷が戻ってきた。


「どうだったっすか?」

「何の反応もなかった」


 どこまで離れていたのか謎だが、戻ってくるのにそこそこ時間を要したことから、かなり離れた場所まで行ったのだろうと思った。


「え~、オレ、村役場の方まで行ったんすよ。結構離れてみたのに、反応なかったんですね」


 村役場まで行っていたのか。それだけ離れても反応ないのか。そんなことを思っていると、畑谷が不服そうに言った。


「本当に契約してるんすかね?」

「え?」


 その発想はなかった。神主が契約しているというのは、オレが神主の指に血の跡を見てから推察しただけだ。確かに契約をしていない可能性はある。しかし…


「五十嵐はオルダハンターだ。100%契約をしている。そうでないと仕事が成り立たない。だからこそ、五十嵐は自前のオルダを持っている」

「耳の中でギーーーーーーーーーーーーーっていう目覚ましが鳴り続けてる状態っすよ。俺だったら耐えられなくて絶対起きる。それなのに起きないなら、もう契約切れてるとしか思えないっす」

「うーん…」


 そこで口を開いたのが三田さんだった。


「笹嶺神社で僕オルダを引っ張られるような感覚があったって言ったじゃないですか」


 オレは三田さんの方を見て「ええ」と答えた。


「あれ、本当に引っ張られて奪われたらどうだったんでしょう? オレもこのお二人のように目玉がなくなって、眠り続けることになった可能性ありますか? 急に怖くなっちゃいました」

「いや、どうだろう。二人とも、オルダは失っていない。現状石の中に住んでいる。だから奪われているわけではない」


 次に口を開いたのは医者だった。


「引っ張られるとはどんな感覚でした?」

「皮膚をガッとつままれて引っ張られたようなというか、同時に耳も痛くなりました」

「外から引っ張られた感覚ですか? それとも内側から外に出ていかれるような感覚ですか?」

「うーん、突然すぎてちゃんとは覚えてないんですけど、とにかく急激に肌が突っ張るような感覚でした」

「目に見えない何かが肌をつまんで引っ張るというのは、自然界においてなかなか考えにくいと思うんです」


 そう言って医者はオレを見た。


「私は都市伝説好きですが、さすがにそれはないと思います。あるとしたら、オルダが自分から外に出たがる現象が起きたという可能性の方がはるかに高いように思います」


 オレは医者の言葉に対して、浮かんだことを返した。


「三田さんは自分の肌の中にオルダがいたから、痛みが出て、気づいて、すぐにその場から離れることができた?」

「そうです。一方、五十嵐さんと神主さんはオルダが離れようとしたことに気づけなかった。なぜならばオルダが住んでいるのが持っている石だったから」

「でも、オルダはそれぞれの石に残っていますよ? 離れていないです」


 医者は腕を組んだ。


「そこなんですよねえ」

「オルダが離れるときに目を奪われる可能性とかないっすか?」


 畑谷がオレに言ってきた。


「オルダが離れるとき?」

「例えば、その引っ張られるというか抜ける感覚? それって実はオルダとの契約が切れるときで、オルダと契約切るためには目玉が取られるとか?」

「え?」

「オルダは住んでいるところから抜け出して、違うところに移ろうとして、それに失敗したら元の場所に戻るとか? だから、今も二人の石にはオルダが残っていただけで。だって、俺のオルダはこのノートっすよ」


 そう言って、畑谷は和綴じのノートを出して見せた。


「オルダが飛び出したときにたまたまそこにあったのがこのノートだったとか。そんな可能性ないっすか? 岡田教授の部屋、石だらけだったんですよ。その中にはオルダの抜け殻の石もあったかもしれないっす」

「オルダが飛び出して、同時に教授の目玉が奪われて、教授は亡くなったと?」

「亡くなった原因は分からないっすけど…」


 ならば、オレと畑谷はなぜ笹嶺神社で何も起こらなかったんだ。それもまた謎である。


「明日、黙光寺にもう一回行きません?」


 畑谷が言ってきた。


「なんで?」

「元々人体にあったオルダがヒスイに移ったんすよね。その時、その人目を奪われてないんすかね? そう思ったっす。目を奪われたとか、目が見えなくなったとか、そんな話が伝わっていないっすかね?」

「確かに、それは聞いてみたいかもしれない」

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